- まえがき
- T章 日本語の文章音読法の基本
- 1 「意味句読み」を文章音読の基本とする
- 2 読点一拍休みをやめる
- 3 文末でりきまない
- 4 「ため」を入れて言葉を発声する
- 5 「ため」を入れて一文を読む
- 6 教材に音読の記号を付けよう
- 7 音読記号を付けるという教材研究
- 8 息の吐き出しと共に「高くから」
- 9 会話の音読の仕方
- 10 説明文の音読法
- 11 自然体で語るように音読する
- 12 なめらかにすらすら音読する
- 13 読解授業の中で音読する
- 14 構文理解のための音読法
- 15 宮澤賢治作品の音読法
- 16 新美南吉の自筆版を音読する
- 17 音読力からコミュニケーション力へ
- U章 文章の音読練習法
- 1 音読力が劇的に向上する「追い読み」の方法
- (1)「追い読み」の指導法
- (2)一人一文追い読み
- (3)一人一文一列追い読み
- 2 「一斉音読」のバリエーション
- (1)一斉音読+教師範読
- (2)一斉音読+子ども範読
- (3)教室二分対抗読み
- 3 「リレー音読」のバリエーション
- (1)教師と子ども全員とのリレー音読
- (2)教師と子ども一人とのリレー音読
- (3)一人一文読み
- (4)めざせ合格読み
- (5)今日のベスト音読&前進音読
- (6)タッチリレー読み
- (7)一行交替読み
- V章 伝統的言語(文語体)詩文の音読法と厳選教材
- 1 伝統的言語文化の粋短歌の音読―名歌十選―
- 2 俳句は拍にのせて語るように―名句二十選―
- 3 漢詩で音読する声と身体をつくる―漢詩六選―
- (1)胡隠君を尋ぬ
- (2)春暁
- (3)鸛雀楼に登る
- (4)獨り敬亭山に坐す
- (5)早に白帝城を発す
- (6)春望
- 4 論語味読のおすすめ―論語七選―
- (1)君子は義に喩り
- (2)吾嘗て終日食らわず
- (3)三人行へば
- (4)学びて思わざれば
- (5)人の己を知らざるを患へず
- (6)古の学者は
- (7)厩焚けたり
- 5 文語体の歴史的価値と現代的価値―名文七選―
- (1)『竹取物語』冒頭
- (2)『方丈記』序
- (3)『枕草子』冒頭
- (4)『徒然草』「高名の木登り」
- (5)『おくの細道』序
- (6)『二宮翁夜話』
- (7)『若菜集』序
- W章 日本語力を高める現代詩歌の音読法と厳選教材
- 1 日本語の心地よいリズムと響きと映像と―金子みすゞ三選―
- (1)大漁
- (2)わらい
- (3)蜂と神さま
- 2 音読で噴き出す日本語の力―宮澤賢治六選―
- (1)風の又三郎
- (2)雪渡り
- (3)世界全体が幸福にならないうちは
- (4)何と云はれても
- (5)われらひとしく丘に立ち
- (6)永訣の朝
- 3 音読でよみがえる悲しみと安らぎと―新美南吉四選―
- (1)窓
- (2)明日
- (3)天国
- (4)夕方河原
- 4 すべてのモノの大切さを音楽性と文学性で―まどみちお四選―
- (1)はしる しるしる
- (2)がぎぐげごのうた
- (3)どうしていつも
- (4)ぼくが ここに
- あとがき
まえがき
日本語の文章と詩歌の音読法を本書で具体的に紹介する。音読は、どんな読み方でもよいという声もある。とんでもない。音読することによって、音読者自身に映像が喚起し、理解が進む文章の音読法がある。音読することによって、リズムと歌と映像がセットになって生まれるような詩歌の音読法がある。私は、このような、
「日本語の理に適った音読法」
を模索してきた。理に適っている音読は、聞き手にも心地よい。違和感がない。だから、聞き手も、その文章や詩歌の理解が深まる。
このような音読法については、意外にもあまり話題にされない。母語を日本語としている我々は、どんな日本語でも、ある程度は通じてしまう。だから、不自然で違和感のある音読でも、改善されないことが多い。そんな中、「読点で一拍、句点で二拍休み」のような、「理に適わない音読法」がいまだに現場では主軸にある。また、「〇〇読み」とか多様な音読活動のバリエーションの開発が先行したりする。優先順位が違う。まず、真っ先に手をつけなければいけないのは、日本語の文章や詩歌の音読法の基本である。
音読のない国語授業はない。国語以外の教科でも音読の場はある。もし、教師が「読点一拍休み」で読めば、子どもにはそれがモデルとならざるを得ない。私なら一分も耐えられない。癖のある教師の音読に、何と一年間もさらされることになる。子どもは何も言えない。責任重大である。このような教師の音読では、心地よさを味わえない。日本語の言葉や文の持つ力を体得することは難しい。理解する力、表現する力も身につかない。もったいない。音読によって日本語を身体化するという土台がなければ、日本語を深く学ぶことは難しい。
最近、やっと音読法の基本が分かってきた。型として技として言語化できるようになってきた。音読講座に参加してくださる先生方の音読は、ほんの一言で劇的に変わる。すでに、発声のための燃料を蓄えた先生方だから、エンジンのかけ方を示すだけで、見事に走り出すのである。音読することが心地よさそうになる。同じ方法で、子ども達の音読も、劇的に変わる。今、担当している二年生もそうだ。初めて出会う各地のさまざまな学年の子ども達の音読も同じように変わる。どうやら私の示す音読法の型と技は、かなり、理に適ったものになってきているようだ。
本書で、その「理に適った音読法」をまとめる。誌上音読講座である。ただし、音声に関わることを文で表すのは大変な困難を伴う作業となりそうである。しかし、書くという作業は、より厳密に、型や方法を形にすることにはなろう。また、書くことで、新たな気づきも生まれるという楽しみもある。新たな気づきや学びも取り入れながら、「究極の基本」を目指して、本書をまとめていく。
T章「日本語の文章音読法の基本」では、現代文の文章の音読法を示す。毎日のようにしている物語文、説明文の音読法である。本章は、本書の一つの軸である。すばらしい音読に共通しているのは、聞いていて違和感がないことである。余分なことに意識がいかない分、自然に映像が浮かび、意味も伝わってくるというわけである。そのすぐれた音読者から学び、それを学校の現場で活用したいと思うのである。
U章「文章の音読練習法」は、教室での音読練習法を紹介する。多様に実践されている「〇〇読み」の中から、音読力が身につき、読解に有効な音読練習法に絞った。四十年以上、音読をさせてきて、私の中で生き残った音読練習法である。知と快が生まれる音読練習法と言っていい。ぜひ、お試しいただきたい。
V章「伝統的言語(文語体)詩文の音読法と厳選教材」では、すぐれた伝統的言語(文語体)の詩文を紹介しながら、音読法を示す。文語体の名文は、百数十年しかたたない口語文よりも、熟成されている。ひたすら音読すれば、響きとリズムが生まれてくる。文語体の詩文の音読は、伝統的文化の学習のためというより、現代日本語を発声する身体作りになると考える。だから、低学年から音読させ、暗唱させることをおすすめする。
W章「日本語力を高める現代詩歌の音読法と厳選教材」では、口語体の詩歌の音読法を示した。これもおすすめの教材を紹介しながら、その教材に対応する音読の仕方を提案する。口語体で書かれた詩は、文語体に負けないように、「歌」にするための何らかのしかけがある。最大のしかけは、拍を伴うような言葉の配列である。歌うように読む方法を体得していただければと思う。
新学習指導要領では、音読が、基礎的な知識・技能に位置づけられた。読解の授業の中だけでなく、国語の全課程の中で、指導せよということであると解釈したい。読解の内容の中には、音読の指導は明記されていない。ところが、音読できる子と読解力の高さとは、見事に相関する。寺小屋の素読の意義が見直されている。音読のない読解の授業はあり得ない。読解の授業の中でも、音読が授業にリズムを生む。音読が全員参加を促す。「音読は究極の読解である」という前提を元にした上での、学習指導要領の改訂であるととらえたい。
教師生活四十年以上になる。やっとたどり着いた音読法は、実にシンプルなものだった。「そんな簡単なこと」と言われそうな気がする。しかし、そのシンプルさが、学校を超えて、他の多くの場で広く活用できるのではと考える。ぜひ、ご意見・ご批判をいただければ幸いである。本書の執筆で新たに学んだことも踏まえて、より「理に適った音読法」を求めていきたい。国語教育の改革は、音読法の改革から始まる。
二〇一八年 五月 /岩下 修
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- 明治図書
- 音読をがんばりたい、でも教えていただいた読点一拍等の方法にどうしても違和感があり、なかなか思うようにできない……と悩んでいたところ、岩下先生の「日本語の理に適った音読法」を知り、すとんとおちました。まだまだ実践ではうまくいきませんが、方向性がわかりとても嬉しいです。2024/1/1640代・小学校教員
- 初めて担任をもって実際指導するにあたり「読点で一拍句点で二拍」の読み方に違和感を感じたところに岩下先生の「意味句読み」を知った。教材とあわせて具体的に示されているため、挑戦しやすく感じたため、早速実践してみたい。2023/8/2740代・小学校教員
- 岩下先生の音読指導の講座の折りに購入させていただきました。講座の中で、ちょっと疑問に思ってお尋ねしたいなぁと思っても勇気がなくて聞けなかったところが全て解説されており、講座の内容がスッキリと理解でき、納得でき、明日からの指導に即生かしたいと思いました。数年前から岩下先生の書籍や講座で勉強させていただき、自分なりに音読指導してきたのですが、モヤっとしていた部分が解決しました。ありがとうございました。2018/8/2150代・小学校教員
- 見開き2ページごとに一つの項目が完結しており、分かりやすかった。2018/7/2840代・小学校管理職
- 区切りがよく読みやすい2018/6/23ふふう