- ま え が き
- 子供たちの予期せぬ反応
- 授業づくりの手法
- 小学校算数科学習*意欲を持続して数操作を続けることの難しさへの対応
- 遊ぶ楽しさの中で,数への興味を作る
- 小学校国語科学習*ことばでのかかわりや応答が成立しにくいことへの対応
- 友とのやりとりを高め,伝え合う喜びを生み出す
- 小学校生活単元学習*活動の場から離れるなど体験の深まりが得られないことへの対応
- 体験活動への自発的,自主的なかかわりを作る
- 中学校国語科学習*読んだり書いたりすることへの意欲の持続の困難さへの対応
- 意欲の持続を図り,読むこと書くことに親しませる
- 中学校国語科学習*想いや考え,感情をからだやことばで表現する力の弱さへの対応
- 五感を働かせ,劇表現の楽しさを味わわせる
- 小学校国語科学習*興味を持って読みを楽しむ姿が少ないことへの対応
- ことばとふれあう楽しさの中で,文字との出会い豊かにす
- 小学校算数科学習*個々の数対象をとらえて意識化することの難しさへの対応
- 生活遊びの中で,数の意識を引き出す
- 小学校算数科学習*金銭への関心の深まりや数量としての見方が難しいことへの対応
- 金銭への興味・関心を高め,金銭を使う力を育てる
- 中学校数学科学習*数処理に誤りが多く,数の意味や思考が混乱していることへの対応
- 対応づけの活動を繰り返し,数処理を確かにする
- 中学校生活単元学習*社会的事象への関心を深め,自力で課題を解決していく力を育むには
- 社会生活の経験を広げ,自立的に行動できる力を育てる
- 小学校図画工作科学習*作るもののイメージがうまく描けず,活動が長続きしないことへの対応
- 作るもののイメージを明確にし,造形する喜びを味わわせ
- 小学校国語科学習*人物の心情や場面を想い描いて物語文を読むことの難しさへの対応
- 劇表現をふくらませながら,物語を読む楽しさを味わわせ
- 小学校体育科学習*運動の楽しさや課題への挑戦意欲が高まらないことへの#対応
- 遊びの中で挑戦意欲を高め,運動の楽しさを感じとらせ
- 小学校算数科学習*重さの学習における「大きさ」と「重さ」の同一視傾向への対応
- 比べ活動を発展させ,重さの基礎概念の習得を図る
- 小学校生活単元学習*身の回りの生活事象への関心や生活の知識を広げていくには
- 課題意識をつなぎ,生活事象への関心を深める
- 中学校国語科学習*意欲を持続して物語を読み通すことの困難さへの対応
- 本を読むことへの興味を持たせ,読み深めの感動を引き出
- 中学校作業学習*作業活動への注意,意欲や態度が粘り強く続かないことへの対応
- 作業活動への目標や見通しを持たせ,集中力を引き出
- 小学校生活単元学習*身近な社会とのかかわりを広げ,生活を豊かにしていくには
- 社会体験を広げながら,課題解決力を身につけさせる
- 小学校音楽科学習*イメージをふくらませながら音楽的要素をつかませ,表現を広げるには
- 楽曲のイメージをふくらませ,表現の喜びを味わわせる
- 小学校国語科学習*体験したことを思い出して,絵や文で表現させていくには
- 個に応じた書かせ方で,書くことへの意欲をつなぐ
- 小学校算数科学習*時刻・時間の学習でよく見られる子供たちの戸惑いへの対応
- 操作を繰り返し,時刻・時間への理解を伴わせる
- 中学校体育科学習*なわとび運動における個々の技能面,情意面での課題への対応
- 個に応じた手だてを講じ,なわとび運動を楽しませる
- 中学校家庭科学習*自らの力で行う調理活動の楽しさを高めるには
- 生徒の主体的な調理活動を引き出す
- 中学校美術科学習*製作への意欲を持って没頭する姿が得られないことへの対応
- 細やかな配慮により,製作の喜びを深める
- あ と が き
まえがき
“一人一人の輝きと温もりを求めて”
子供たちが生き生きと活躍する授業。教師や友達とのかかわりに温もりを感じる授業。このような授業の中で,子供一人一人のよさや可能性が伸ばされ,輝きを増していく。
障害児学級では,子供たちが自分の持つよさを発揮したり,生かしたりして活動の楽しさや喜びを感じる授業。子供たちの意思の力や表現する力,課題解決力等の「生きる力」を培う授業を目指したい。
授業づくりは,子供のよさをしっかり受け止めることに始まる。そして,子供たちの興味・関心を生かし,意欲の向き所を探り,内発的動機や追求の傾向性などを読み込んで授業を構成していく。
しかし,子供たちの予期せぬ反応に戸惑うことが多いのが,授業である。
子供たちの予期せぬ反応には,教師の受け止めとして二つの意味がある。
一つは,指導上の課題に還元される予期せぬ反応であり,授業の改善に向かうものである。意欲の高まりや集中が得られず,積極的な学習の姿が見られない。また,子供たちの想いや意思が強められることなく,表現が広がらない。学習に誤りが生じ,思考に混乱が引き起こされている。このように,授業が進まず,教師として,いきづまりや無力さを感じる時である。
もう一つは,指導の成果に帰着する予期せぬ反応であり,授業の更なる発展に向かうものである。子供たちが自分の力で能動的に課題解決にあたっている。想いをふくらませ動作や言葉で生き生きと表現している。戸惑いや停滞を乗り越え自信を深めて学習を進めている。このように,授業が進み,教師として,密かな喜びを感じ胸が躍るのを覚える時である。
子供たちの予期せぬ反応は,様々な場面で現れるが,特に,授業の改善に向かうには,具体的,実際的なレベルの授業づくりを通して,その方途を明らかにしていくことが大事となる。
障害児学級の授業では,子供たちの状態像が大きく異なり,一人一人の学習ニーズも多様である。また,授業づくりは,学習実態のとらえに始まり,授業の構想,設計,そして展開と,すべて教師の手によってなされる。
したがって,子供たちの予期せぬ反応に伴う授業づくりの課題は,複雑で多岐にわたっており,その改善の方途を明らかにすることも,困難な作業となりがちである。
しかし,子供たちの反応を,授業の過程を辿って冷静に分析し一つ一つ吟味していくと,予期せぬ反応を生み出した要因への理解が深められ,不思議と,次の授業づくりへの糸口が見いだされてくる。
そして,知恵やアイデアを組み入れ,工夫を重ねた結果,子供たちの意欲的な学習の姿を引き出し得た喜びは,何事にも替えがたいものがある。
このことから,子供たちの予期せぬ反応は,授業を深化させていく肥料と言っても過言ではないと思われる。
本書は,子供たちの予期せぬ反応をもとにした授業づくり,授業の中で起こった子供の予期せぬ反応への具体的な対応等の指導事例で構成している。
ここでの指導事例は,いずれも一日で成ったものではなく,執筆いただいた先生方が,子供たちと向かい合い授業づくりを入念に検証することを通して,試行錯誤しながら導き出されてきた労作である。
障害児学級の授業づくりは,教師が,「この子が生き生きと学習を達成していく姿を見たい」という想いから,子供へのより深い理解に導かれ,子供の反応を予測できるようになっていくプロセスである。
本書が,日々子供たちと心を通わせ,子供たちの反応を温かい眼で見守り,授業づくりに奮闘されている先生方の参考に少しでも供することができればと願うものである。
平成10年5月 編者 /堤 正則
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- 明治図書