- まえがき
- 第1章 「生きる力」を育む基本的アプローチ
- 1 はじめに
- 2 「社会自立」の概念
- 3 「社会自立」を育む指導の方向性
- 4 「社会自立」を育む指導の具現化をめざして
- 5 教育の場の「移行」への配慮
- 第2章 社会自立を促す40のアイデア
- (言語的領域)
- 1 挨拶を時と場に応じて言うことができる
- 2 簡単な日常会話をすることができる
- 3 聞かれたことについて,はっきりと話すことができる
- 4 丁寧なことばを使って話すことができる
- 5 経験したことを順序だてて話すことができる
- 6 ことばで指示されたように行動できる
- 7 自分の意志や意見を伝えることができる
- 8 学校からの伝言をお母さんに報告ができる
- 9 自分から友達に電話をかけることができる
- 10 住所,氏名,生年月日,電話番号が言える
- (数量的領域)
- 11 色や形や大きさで分類できる
- 12 長い,短いを目測で比較できる
- 13 広い,狭いを目測で比較できる
- 14 重い,軽いを目測で比較できる
- 15 具体物を使って一位数を数えることができ
- 16 具体物を使って10までの数の加減ができる
- 17 台皿秤の目盛りを読むことができる
- 18 時計を見て行動することができる
- 19 「昨日」「今日」「明日」がわかる
- 20 1週間の曜日かわかる
- 21 お金の種類がわかり,一人で買い物かできる
- 22 自動販売機が利用できる
- (くらしの領域)
- 23 身のまわりの掃除ができる
- くらしの技術
- 24 自分の持ち物の整理整頓ができる
- 25 靴下の洗濯ができる
- 26 汚れたことに気づき自分から着替えられる
- 27 バスを一人で利用し運賃の支払いができる
- 28 電車を一人で利用し運賃の支払いができる
- 29 包丁が安全に使用できる
- 30 ガスレンジが安全に使用できる
- 31 アイロンが安全に使用できる
- 32 献立に必要な材料がわかり,自分で材料をそろえて料理をする
- 33 簡単で面白く不思議な料理
- 34 趣味を持ち,余暇の利用かできる
- くらしの態度
- 35 自他の区別ができる
- 36 授業中出歩かない
- 37 自習できる
- 38 決められたことを守ることができる
- 39 時と場合に応じた言葉遣いができる
- 40 友達と仲良くすることができる
- 第3章 活用の手引き
- 社会自立に向けて
- 1 卒業後を意識して
- 2 本書の構成と考え方
- 3 言語的領域の指導
- 4 数量的領域の扱い
- 5 自立的にくらすために
まえがき
子ども中心の教育,生活中心の教育,経験主義の教育の場合は,子ども達の経験や活動を「身辺生活」「集団生活」「社会生活」「経済生活」「職業生活」等に分類して整理することがある。この場合,用具教科としての国語や算数の内容は,全ての活動の中において学習するように計画されるのが一般的である。
ここで社会自立を促すと言っているのは,子ども達が能力に応じて社会生活をするのに必要な事柄をしっかりと身に付けるための手立てのことである。
子ども達が社会生活をするためには,次の事柄を身に付けることが必要である。
@ 身辺生活の処理と確立:基本的生活習慣の確立,健康安全への関心,生活の節度,自立への意欲,根気強さ,善悪の区別,積極性,動植物への関心と愛護,聞く・話す・読む・書くの言語的能力,数量的能力,合理的処理能力,造形的能力,音楽的能力,運動能力等
A 集団生活への参加と社会生活の理解:集団への参加,きまりや規則への関心と理解,自制心,協調性,対人関係,感謝・同情,親切心,責任感,公私の区別,傷害の予防や公衆衛生への注意,社会的行事や事象への関心と理解等
B 経済生活及び職業生活への適応:公共の施設や機関の利用,仕事への意欲,計画性,金銭や物品の取り扱い,経済生活への関心と理解等
以上の内容は,実は,昭和37年度版養護学校小学部・中学部学習指導要領精神薄弱教育編の小学部・中学部における教育の具体目標の項に示してある事項を要約したものである。
以上の事項は,社会自立のために必要なことで現在も同じである。ただ,現在は,昭和37年頃と在学者の障害の程度が違っている場合もあるため,習得状況にそれぞれ違いがある。しかし,指導しなければならない事項は著しく変わっているわけではない。
社会自立と聞くと,上記A集団生活への参加と社会生活の理解を想定する場合が少なくないであろうが,本書では,社会自立を広くとらえ,その内の一部を,@言語的領域,A数量的領域,Bくらしの領域に分け,紙数の都合を考慮して40事例を取り上げた。
本書で取り上げた事例は,日常生活の指導,遊びの指導,生活単元学習,作業学習あるいは教科別の指導等のいずれの授業においても活用できるように配慮した。たとえば,「お金の種類が分かり一人で買い物ができる」ということは,日常生活の指導で買い物することもあるし,生活単元学習で買い物することもある。また,作業学習において材料購入や販売という活動があるし,教科別の指導としての算数の授業においてもお金の計算をすることもある。他の事例においても同様である。
本書は,以上のようにいろいろの機会をとらえて指導に役立てていただければと考えて作成した。
執筆者は,この面に造詣が深いばかりでなく,大変忙しい先生方であるが,快くお引き受けいただき本書を出版することができた。心からお礼を申し上げる次第である。多くの方々に活用していただけることを願っている。
最後に,本書を企画・校正し,出版できたのは,明治図書出版株式会社をはじめ長沼啓太氏と三橋由美子氏によるものである。心から感謝を申し上げる次第である。
平成9年10月 編 者
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- 明治図書