- 監修のことば
- はじめに
- 序章 「教えて考えさせる授業」と中学校国語科授業づくりの趣旨
- 1 「教えて考えさせる授業」の背景
- 2 「教えて考えさせる授業」とは
- 3 学校での展開と普及
- 4 中教審の動きと新学習指導要領
- 5 中学校国語科「教えて考えさせる授業」の展開
- 6 説明的な文章と「教えて考えさせる授業」
- 7 文学的な文章と「教えて考えさせる授業」
- 8 古典と「教えて考えさせる授業」
- 9 話す・聞く活動と「教えて考えさせる授業」
- 第1章 1年生の「教えて考えさせる授業」づくり
- 1 「ダイコンは大きな根?」
- 中心文を見つけて段落の要点をまとめよう
- 2 「今に生きる言葉/故事成語『矛盾』」
- 「訓読文」から古典特有のリズムをつかもう
- 3 「さまざまな表現技法」
- 比喩を使って「くまモン日記」を書こう
- 4 「指示する語句と接続する語句」
- 前後の関係を考えて言葉を選ぼう
- 5 「漢字の組み立てと部首」
- なぜこの部首なのかを説明しよう
- 6 「読書指導」(自作教材)
- 学校図書館を探検しよう
- 7 「少年の日の思い出」
- エーミールの立場で「僕」を紹介しよう
- 8 「音読を楽しもう いろは歌」
- なぜ,千年前から今も使われているの?
- 第2章 2年生の「教えて考えさせる授業」づくり
- 1 「気持ちを込めて書こう 手紙を書く」
- 形式に沿って礼状を書こう
- 2 「字のない葉書」
- 邦子から父へ宛てた手紙を書こう
- 3 「扇の的―『平家物語』から」
- 「平家物語」を貫く無常観を古文から読み解く
- 4 「扇の的―『平家物語』から」
- 源平両軍の反応をリポートしよう
- 5 「用言の活用」
- 条件にあてはまる「動詞」を発見しよう
- 6 「付属語」
- 働きに着目してふさわしい格助詞を考えよう
- 7 「熟語の構成」
- 「二字熟語の構成」を識別し,説明しよう
- 8 「『平成26年度 全国学力・学習状況調査』の教材を用いた授業」
- 本や文章から適切な情報を得て,考えをまとめる
- 第3章 3年生の「教えて考えさせる授業」づくり
- 1 「場に応じた言葉遣い」(自作教材)
- 正しい言葉遣いで的確に話そう
- 2 「推敲して,文章を磨こう」
- 下書きを推敲してよりよい文章にしよう
- 3 「故郷」
- この人物を登場させる作者の意図は何か
- 4 「音読を楽しもう 古今和歌集 仮名序」
- 思いが伝わる「撰者の言葉」を書こう
- 5 「夏草―『おくのほそ道』から」
- 芭蕉の旅にかける思いを語ろう
- 6 「夏草―『おくのほそ道』から」
- 芭蕉の無常感を解説しよう
監修のことば
本年(2018年)は,「教えて考えさせる授業」についてのはじめての解説書『「教えて考えさせる授業」を創る』(市川伸一著,図書文化社)が出版されてからちょうど10年目の年にあたる。その年に,中学校の国語という教科での実践事例集が刀禰美智枝教諭によって刊行されたというのは,いろいろな意味で大きな意義のあることだ。
「教えて考えさせる授業」については,本書序章でその背景や趣旨について解説されるが,一言でいえば,「教師の説明」「理解確認」「理解深化」「自己評価」という4段階の授業構成によって,理解を伴った深い習得を目指すという授業設計論である。教師が教えることと,児童生徒に考えさせることとのバランスを重視し,また,「学ぶ力」としてのメタ認知,協働学習,家庭学習を促すことを視野に入れている。
この授業論が注目されてまず実践されるようになったのは,小学校の算数や理科からであった。教師はできるだけ教えずに子どもに自力発見,協働解決させるという「問題解決型授業」が,一見理想的に見えて,実は教師にも子どもにも満足いかないものになりがちであるという行き詰まり感があったことが大きいのだろう。また,習得目標が明確なので,「教えて考えさせる授業」が適用しやすく,その効果も見えやすいということがあったためと思われる。
一方,国語での展開は,何を習得目標にするのか,そのためにはどうしたらいいのか,という手立てをはっきりともった力量のある教師がまず実践してみせる必要があった。また,教科の壁が厚いと言われる中学校が校内テーマとして取り組むためには,研究主任のリーダーシップのもとに,各教科が授業づくりや事後検討会で連携することが不可欠だ。これらを成し遂げてくれたのが,刀禰教諭であり,山口県美祢市立於福中学校だった。
本書では,中学校国語のさまざまな分野にわたる授業実践が,一つ一つはコンパクトに紹介されている。ただし,それぞれの授業で生徒にとってどこが難しいかを「困難度査定」として押さえた上で,授業の各段階で指導上の工夫を入れるという「教えて考えさせる授業」の本質的な授業づくりの姿勢を見ることができる。これは,新学習指導要領が求める「主体的・対話的で深い学び」を先導的に具現化してきた授業ともいえるものだ。
本書の刊行を機に,国語での「教えて考えさせる授業」のイメージが共有され,そこからさらに,単元を越え,学校を越え,校種を越えて,新たな実践が生まれてくることを期待したい。
2018年7月 東京大学大学院教育学研究科・教授 /市川 伸一
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- 明治図書
- 実践例が豊富でとてもよい。2021/1/120代・中学校教員