- はじめに
- T 「プロの学級づくり」成功の奥義
- 1 子どもに残るモノは続けたことだけ
- 1.子どもに力をつける秘訣
- 2.学級づくりはパズルの組み立て
- 2 なぜ,学級づくりをするのか
- 1.目的を持つことが力を与える
- 2.「欲求階層説」から
- 3 戦略を持つ
- 4 目的と目標
- 5 現在地と方法
- 1.客観的資料の活用
- 2.主観と客観の併用
- 6 方法の選択に責任を持つ
- 7 撃ちながらねらう
- 8 機嫌のいい教師
- 9 学級づくりとアドラー心理学
- 1.自分を支える基本的な考え方
- 2.教師に力を与える発想
- 3.アドラー心理学の目指すものと学級づくり
- 4.パズルのピースを組み合わせるアドラー心理学
- 10 どこを目指すか
- U 子どもとつながる奥義
- 1 学級づくりはすべてここから始まる
- 1.子どもとのつながりは教師の力
- 2.子どもの求めているものを知る
- 3.注目の力
- 2 「見ている」ことを伝える日々の技
- 1.「好きだなあ,いいなあ」をそのままに
- 2.変化を見逃さない
- 3.努力や過程を見る
- 4.感謝する
- 5.感動する・笑顔でいる
- 6.ねぎらう
- 7.アイコンタクト
- 8.誕生日を祝う
- 9.暑中見舞い・年賀状
- 10.サプライズレター
- 3 一緒に遊んでくれる先生
- 4 叱ってくれる先生
- 1.恥をかかせない
- 2.叱る理由を伝える
- 3.短く叱る
- 4.ポイントを絞る
- 5.人格・可能性を否定しない
- 6.個に応じて
- 7.逃げ道をつくる
- 8.終わりは穏やかに
- 9.叱る対象を明らかに
- 10.フォローする・見捨てない
- 5 毅然とした指導
- V 子ども同士をつなげる奥義
- 1 学級づくりの縦糸と横糸
- 2 学級づくりの時間
- 3 ステーション授業のコンセプト
- 4 集団における力量形成
- 5 つながりタイムの構成
- 6 実際の活動
- 後出しジャンケン―ショート1
- スタンド・アップ4―ショート2
- よろチク!―ショート3
- グルーピングゲーム―ショート4
- 言葉のチカラ―ロング1
- チェーン・ワーク―ショート5
- 言ってもらいたい言葉―ロング2
- ハッピーレター―ショート6
- つながる聞き方―ロング3
- ホメホメクラブ―ショート7
- つながる話し方・責めない態度―ロング4
- カツサンドジャンケン―ショート8
- 協力の敵・協力の味方―ロング5
- テレパシー握手―ショート9
- 人間コピー―ロング6
- 電気ビビンビンゲーム―ショート10
- ペーパータワー―ロング7
- E.T.(いい友だち)―ショート11
- 勇気の出る問題解決―ロング8
- みんなで正解しよう―ショート12
- 輪になって「Happy! Thank you! Nice!」―ロング9
- 7 やりっ放しは効果なし
- W 自治をつくるクラス会議
- 1 自治をつくるなら
- 2 クラス会議をすると
- 3 クラス会議はステーション授業でありその実践の場
- 4 クラス会議を立ち上げる
- 1.最初の語り
- 2.Happy! Thank you! Nice!
- 3.議題の提案
- 4.解決策の提案と輪番発言&パスのシステム
- 5.解決策の検討でつける力
- 6.決まったことの発表
- 7.「有効期限は1週間」と「前回の解決策の振り返り」のシステム
- 8.議題箱と議題提案用紙
- 9.子どもの手による運営
- 5 学級の成長のしかけ
- X これが学級担任としての「仕事術」
- 1 忙しい日々を乗り切るたった一つの作法
- 2 1日の仕事シミュレーション
- 3 目的を持つということ
- 1.朝のぞうきんがけ
- 2.朝のおしゃべり・健康観察
- 3.給食指導・清掃指導
- 4 振り返りの時間を持つ
- 1.短期の振り返り
- 2.長期の振り返り
- 5 あたりまえの日常のなかに
- おわりに
はじめに
「学級づくりほどおもしろいものはない。」
小学校で19年間教師を務めました。今は,大学で小中学校,高等学校に籍を置きながら,もう一度学びたいと願う教師や,これから現場に立つ教師の卵のみなさんの力量向上のためのお手伝いをさせていただいています。そこから得られた経験から自信を持って言えることが冒頭の一言です。
担任をしているときはいわゆる“荒れた”学級を担任したこともありました。来る日も来る日も,事件の連続でヘトヘトになっていました。固く閉ざされた扉を,力一杯たたいても1ミリも開くことのないような時間の連続。「なんで,そんなことをやるのか」「どうせ,俺たちには無理だ」と口癖のように訴える子どもたち。そんななかで学年で合唱コンクールをやろうということになりました。朝の歌では歌う者がほとんどいないような状態でしたから,そんなイベントがあってもステージ上で気まずい思いをすることはわかっていました。
しかし,変化は予期せず訪れました。ある日,学級のリーダー格の男子が「先生,歌の練習をしたいから,時間をください」と言ってきました。私は耳を疑いました。彼は,クラスに向かって「なあ,やろうぜ」と呼びかけます。すると,頷く男子。そして,女子は「私たち声,出るもんね」とお互いに声を掛け合っていました。
音楽が流れ出すと,いままで聞いたことのないような大合唱が始まりました。勝手なことを言ったり,やろうとしなかったりしてまとまることのなかった彼らが,心を合わせるようにして大きな声を出して歌い上げていました。合唱団が出すようなきれいな歌声ではありませんでしたが,私には世界一の合唱団の歌声に聞こえました。
子どもたちの成長は,突然やってきます。それはちょうど湯船にお湯がたまるようなものです。視線を低くしていると湯船の外側からはお湯がどれくらいたまっているかはわかりません。あふれる直前まで,なかがどうなっているか全く見えません。
ところが,湯船がいっぱいになったとき,一気にお湯はあふれ出し,外側から見えるようになるのです。子どもの成長も同じです。昨日までそのそぶりすら見えなかったのに,ある日,あるとき,お湯があふれるように変化が起こるのです。
もちろん何もしなかったら変わりません。お湯を出し続けることが必要です。そう,扉をたたき続けること。なかから答えが返ってくるまで,「信じて働きかけ続けること」が大切です。
適切な考えと方法で働きかけ続けたら,かならず学級は変わります。本書は方法論だけではなく,それを支える考え方も示しました。自分もかつては,「今すぐ使えるモノ」をほしがっていました。書籍で「理屈」の部分は読み飛ばしていました。しかし,それではすぐに「ネタ切れ」になります。学んでも学んでも不安感が消えないのです。一方で,考え方を知れば応用がききます。つまり,安心して実践できるのです。学級では,学んだことだけでは対応しきれないことが山ほど起こります。しっかりとした考え方を身につければ,とっさの判断にも困らないことが多いのです。
学級づくりはドラマの連続です。心が折れそうになるようなすごくつらいことがあるでしょう。しかし,その反対に飛び上がって喜びたくなるようなことも実際に起こるのが学級です。そんな喜びを,多くのみなさんに味わっていただきたくて本書を書かせていただきました。本書が,みなさんの学級づくりに役立つことを願っています。
/赤坂 真二
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