- まえがき
- 1章 おさえておきたい! 板書づくりの基礎理論
- 1 授業と板書の関係とは
- 1 「板書が授業の中心」という主張の善し悪し
- 2 板書はあくまで授業を補助するものである
- 2 板書をするとき,しないとき
- 1 板書をする必要のあるとき
- 2 ほとんど板書をしないとき
- 3 板書の機能とは
- 1 板書が果たす授業補助の「機能」とは
- 2 板書の機能@「大切な情報を示し,全員に共有させる」
- 3 板書の機能A「子どもの思考を助け,思考を促す」
- 4 板書の機能B「知識や技能を板書してノートに書かせることで,学習の理解を図る」
- 4 よい板書とは何なのか
- 1 板書がよかったとは何をもって判断するのか
- 2 授業の流れがわかる板書がよいというのは本当か
- 3 よい板書は授業の目的によって変わる
- 5 板書の基本方針
- 1 1つの型だけを強要するのはよいことなのか?
- 2 板書は多種多様なものである
- 3 子どもに有効なはたらきをしているかどうかが問題
- 2章 スペシャリスト直伝! 各教科の板書術・成功の極意
- 【算数科】
- 1 テンポよく知識・技能を習得させる板書法
- 〜書いては消すシンプルな板書〜
- 2 子どもに解き方を考えさせる際の板書法
- 〜解き方を子どもに発表させる〜
- 3 文章問題の解き方を教える際の板書
- 〜絵や図を描き,考え方をはっきりさせる〜
- 4 文章問題の理解をさらに深める板書
- 〜対比させて板書する〜
- 5 子どもの勘違いを減らすための板書
- 〜あえて間違いを板書する〜
- 6 黒板を思考の作戦基地にする場合の板書
- 〜黒板に貼った資料で考えさせる〜
- 【国語科】
- 1 国語における「板書の基本型」
- 2 絵で思考を助けるための板書
- 〜いろいろな立場で作文を書かせる場合〜
- 3 説明文の構造を明らかにするための板書
- 〜移動可能な資料を用意する〜
- 4 物語文の構造を明らかにするための板書(1)
- 〜まず場面ごとの要約を行い,板書する〜
- 5 物語文の構造を明らかにするための板書(2)
- 〜場面を比べてそれぞれの関係を考えさせる〜
- 6 物語の中で対比されているものを明らかにし,主題に迫る板書
- 〜上下で対比させて違いを明確にしていく〜
- 7 作文技能を鍛えるための板書
- 〜お手本を示し,作文の型を明らかにする〜
- 8 討論の授業における板書
- 〜対立する2つの意見の論点を板書する〜
- 9 言葉を分類させる際の板書
- 〜班ごとに分類させ,発表させる〜
- 【理科】
- 1 理科における「板書の基本型」
- 〜シンプルな板書〜
- 2 教科書通りの実験をする際の板書
- 〜実験ノートの型を教える〜
- 3 実験後に子どもの発見を交流させる板書
- 〜発見を子どもの言葉で板書させる〜
- 4 結果を共有させる際の板書
- 〜結果を黒板に書かせて吟味させる〜
- 5 あいまいなところを問い,わかったつもりを解消する板書
- 〜黒板を使って復習する〜
- 6 「観察の技能」を伸ばすための板書
- 〜子どもに気付いたことを書かせて,評定する〜
- 【社会科】
- 1 社会科における基本的な学習展開と板書術
- 2 見学の後に気付きを共有させる際の板書
- 〜気付きを分類させて黒板に示す〜
- 3 資料を深く読み取らせるための板書
- 〜資料を貼って書き込んでいく〜
- 4 討論を行う際の板書
- 〜黒板に意見を書かせた上で討論を行う〜
- 5 思考を促すための板書
- 〜単元の導入で思考させるために〜
- 6 調べ学習の結果を共有させ,考察させる板書
- 〜班ごとに結果を黒板に示させる〜
- 7 単元の終わりにノートまとめをさせる際の板書
- 〜お手本を示し,まとめの型を教える〜
- [外国語]外国語活動における板書法
- [図画工作]学習の見通しと技法を明らかにする板書
- [体 育]体育の板書をどうするか
- [総合・学級活動]総合や学級活動における板書
- 〜ファシリテーショングラフィックを活用する〜
- 3章 これだけは知っておきたい! 板書のコツ
- 1 これだけは知っておきたい「板書の基礎技能」
- 2 板書とノートづくりをリンクさせる
- 3 子どもに黒板を活用させる
- 4 あなたの板書は特別支援教育に対応していますか
- 5 スクリーンにコンテンツを映す
- あとがき
まえがき
初任の頃,板書の指導を受けた。
「美しい板書にしなさい。」
「構造的な板書にしなさい。」
「授業の流れがわかる板書にしなさい。」
それが大切なのだと教えられた。
それから数年。
「板書がよくなった」と同僚から評価されだした頃に,ある子が訴えた。
「先生の板書は,本当にわかりにくい。」
その子は,発達障がいをもつ子であった。
理由を尋ねると,次のように答えた。
「黒板にたくさんの字や矢印,色があると,ごちゃごちゃして混乱する。」
ショックを受けた。
このとき,私の板書に次の視点が浮かび上がった。
板書はシンプルで,わかりやすいものにする必要がある。
そうしないと,混乱してしまう子がいる事実に気付かされたのだった。
私に足りなかったのは,「シンプルな板書」という視点であったのだ。
「豪華絢爛な板書」をすると,ほめられていた時代があった。
黒板一面に埋め尽くされた教師の字,記号,矢印,写真などの資料。そして,カラフルな色づかい,短冊,模造紙……。
しかし,子どもたちは,この板書をわかりやすいと思っているのだろうか。
これは教師の自己満足に過ぎないのではないだろうか?
かつての私は,「美しい板書」,「構造的な板書」,「授業の流れがわかる板書」にこだわっていた。1時間で,とにかく黒板を全て埋めなくてはならないと考えていた。板書は自ずと豪華絢爛になった。
ところが,豪華絢爛な板書では混乱する子が少なからずいる,そのことに気付いてから,私の板書に対する考え方が変わった。
今では,次のように考えている。
板書が子どもにとって有益かどうか。それを第一に考えよう。
そして,板書の際,次のような問いを自分にするようになった。
「できない子や発達障がいをもつ子にとっても,わかる板書だろうか。」
「子どもの学力を伸ばす板書になっているだろうか。」
「子どもの思考を促す板書になっているだろうか。」
「子どものノートに生かされるような板書になっているだろうか。」
現在の私は,「豪華絢爛な板書」よりも,「子どもにとって有益な板書」を目指すようにしている。
私は,板書に「授業者の意図」が表れると考えている。
「授業者の意図」とは,「子どもにこのような力をつけたいという願い」である。
板書は,「授業者の意図」によって変わる。何らかの意図があって,結果としてこのような板書になったのである。
そして,よい板書だったかどうかは,授業者の意図が達成できたかどうかで判断できる。
すなわち,子どもを伸ばすのに有益だった板書が,よい板書である。
本書には,「教師の意図」と「板書」を,両方載せた。
各教科の板書の1つの型として参考になれば,幸甚である。
2012年3月 /大前 暁政
「板書が子どもにとって有益かどうか」という視点がわかりやすく腑に落ちました。
著者の他の本も数冊読んでいますが,どれも具体的で納得できるものが多いです。
自己満足ではなく,子どもにとってわかりやすくシンプルな板書を心がけていきたいです。