- 推薦の言葉 「誤り分析」の意義とは
- はじめに
- 第1章 国語の誤り分析
- 1 誤り分析とは
- (1)誤り分析とは
- (2)誤り分析からどんなことがわかるか
- 2 誤り分析から子どもの読み書きを支援する
- (1)読み書きのつまずきとは
- (2)読み書きのつまずきの背景を理解する
- (3)音韻認識とは
- (4)空間認知とは
- (5)ADHDとは
- 3 音韻認識の誤り分析
- (1)音韻認識とは
- (2)音韻の誤りへの気づき
- (3)音韻の力のアセスメント
- (4)音韻の弱さからの書きまちがい
- (5)音韻の力を伸ばすことば遊び
- (6)ひらがな読み書きの基礎スキル
- 4 特殊音節の誤り分析
- (1)特殊音節とは
- (2)特殊音節の特徴
- (3)特殊音節のつまずきを調べる
- (4)特殊音節の指導
- 5 漢字の誤りパターン
- (1)かな文字と漢字の違い
- (2)漢字の難しさ
- (3)漢字の3要素
- (4)同じ音(読み)の漢字の誤り
- (5)意味の似ている漢字の誤り
- (6)形の誤り
- 6 漢字の誤り分析
- (1)漢字の誤り分析
- (2)漢字の誤り分析練習
- (3)結果からの分析
- 7 事例分析
- (1)事例1(A児:3年生・男児)
- (2)事例2(B児:3年生・男児)
- コラム
- ・音韻につまずきのある子の事例
- ・特殊音節聴写につまずきのある子の事例
- ・タイプ別漢字支援
- 第2章 算数の誤り分析
- 1 算数の誤り分析を考えるために
- (1)算数困難とは
- (2)算数にはどんな能力が必要か
- (3)誤り分析の重要性
- 2 誤り分析の実際
- (1)誤り分析の具体例
- (2)誤り分析から支援につなぐ
- (3)誤り分析から全体象を明らかにする
- 3 文章問題の誤り分析
- (1)文章問題を解くのに必要な能力
- (2)文章問題を解くプロセス
- (3)文章問題の誤り分析と支援の実際
- (4)文章問題の誤り分析のまとめ
- 4 計算問題の誤り分析
- (1)計算問題を解くのに必要な能力
- (2)計算問題の誤りの要因について
- (3)計算問題の誤り分析と支援の実際
- (4)計算問題の誤り分析のまとめ
- 5 総合的誤り分析
- (1)総合的に分析する
- (2)復習! 算数に必要な能力の再確認
- (3)[問題]テスト3枚を総合的に誤り分析をしてみよう!
- (4)[解答]テスト3枚の誤り分析例
- (5)最後に
- コラム
- ・日置荘小学校の算数教室
- ・計算問題課題の誤り分析をしてみよう!
- ・さらにもう1問! 総合的な課題の誤り分析をしてみよう!
- ・保健室に行って算数の授業を受けなくなった4年生女子
- おわりに
推薦の言葉「誤り分析」の意義とは
RECOMMENDATION
米国精神医学会の診断基準DSM-5の日本版が2014年6月に出版されました。それによると,学習障害は限局性学習症(Specific Learning Disorder,限局性学習障害でも可)にその用語が代わり,発達的な観点が入った詳細なものになっています。今まで使われていた失読症(ディスレクシア)は限局性学習症の最も一般的な徴候の1つと考えられます。
SLDの特性として,読むのに時間がかかる,努力を要する,まちがって読む,読めても意味理解が困難,綴り字の困難さ,書字表出の困難さ,数字の概念,数値,計算を習得することの困難さ,数学的な推論の困難さなどが顕著に見られ,結果的に日常の学習や学業的な技能の使用に困難をきたします。まさに,今回の「誤り分析」が必要と考える子どもたちの特性を備えています。
よく私たちが見聞きすることですが,国語・算数でつまずきが見られる子どもたちは,「集中しない,ヤル気がない,自分勝手,真剣さがたりない,わがまま」等,子ども側の勉強への態度・姿勢を問題視する傾向が保護者・教師にありました。最近の研究では,「読めない,書けない,計算できない」子どもたちの中には,環境要因だけが原因ではなく,聴覚(聞く力)・視覚(見る力)・記憶(ワーキングメモリ)等の認知機能に偏りが出やすい中枢神経系の働きの存在が指摘されるようになってきました。
今回の「誤り分析」の特徴は,一般に使われている心理検査等の結果からのみ判断するのではなく,日常的に行っている教育活動(作文・テスト結果,口頭発表等)からリアルタイムに誤りの傾向を読み取る点にあります。分析の前に必要なバックグラウンド情報としては,子どもの学校・家庭での日常の状態像の把握,特に,授業中の行動特徴,友人とのコミュニケーション,直接面接,チェックリスト等があります。
子どもの書いた作文,計算,小テスト等に,ただ,自動的に○×をつけて返却する先生が多いですが,支援のヒントが詰まった宝物を捨てているようなものです。子どもが一生懸命に書いたものから「誤りを抽出し,誤り方に傾向がないか」をじっくり調べます。「どこでつまずいているか」がわかると「どう指導するか」が生まれます。
この「誤り分析」は,子どもをよく知る担任が自ら子どもと向き合い,ひとりひとりの指導内容を授業の中で修正し,ピンポイントに問題点を指摘し,具体的にわかりやすく指導できる画期的なプログラムです。
「誤り分析」は,支援が必要な子どもたちのつまずきの背景にある認知特性(聞く力・見る力・ワーキングメモリ等)に視点を当て,場当たり的な指導ではなく,特性に対応した科学的な指導につなげるところにあります。強い特性にも視点を向け,弱い特性を強い特性でカバーしていくことが子どもの意欲につながります。
特性に配慮された支援は,やらされた感ではなく,自分の力でできたという充実感につながります。ここではじめて子どもたちが「わかった」と実感できます。苦手だったことが簡単にできる経験を続けることが,自己有能感(セルフ・エスティーム)を生み,胸を張って頑張れる子をつくります。
一般財団法人 特別支援教育士資格認定協会 理事長 /竹田 契一
本書でご紹介している「漢字の誤り分析」のための、「1・2年で習った漢字・熟語を使った30問の漢字テスト」(PDFファイル)は以下からダウンロードできます。
教材のダウンロード
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内容 | ファイル名 | サイズ | |
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1・2年で習った漢字・熟語を使った30問の漢字テスト | 164114.pdf | 178KB |
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年度初めのこの時期に、まずは誤り分析から始めていきたい、と思わされた。
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