- まえがき
- T いじめ問題をどう捉え考えるか
- 1 心的外傷後ストレス後遺症とは
- 2 まずは身体の変化に注目せよ
- 3 何とかしようと焦ってはいけない
- 4 時には何もしないことが助力のポイント
- 5 生徒に不平等感を植えつける「いじめ対策」
- U 教育相談に見る実態レポート
- 1 いじめ現象の背後にあるもの
- 2 いじめ報道がもたらすもの
- 3 異質なものを排除したくなる心理
- 4 やみくもな規制と管理はいじめを助長させる
- 5 怨念的感情を引きずった子に手を焼く
- 6 点数主義的な受験文化がもたらすもの
- V 学校という教育システム下のいじめ
- 1 「無視」によって拡大する不安感情
- 2 子どもの世界にも嫉妬と羨望はつきもの
- 3 いじめ現象を誘発する構造上の仕組み
- 4 テスト潰けがもたらす後遺症
- 5 見えにくい正体に注視する
- W いじめエネルギーの発散と行き場
- 1 児童の怖さを知る教師、知らない教師
- 2 いじめ四つの基本タイプ
- 3 帰国子女がぶつかる「枠」的いじめ
- 4 歪んだ攻撃欲求装置
- 5 「圧」をはねのける工夫と努力
- X いじめ心理のルーツ―お母さんに語りかける講演から―
- 1 夜のホームの過塾生≠スち
- 2 親の期待過多はいじめに通じる
- 3 アインシュタインの卵をつぶす
- 4 親の先どりが子の自主性を奪う
- 5 対人関係の「訓練」は家庭がベース
- Y いじめと家庭、そして親と子
- 1 いじめに負けない体験学習
- 2 子どものタテ関係とヨコ関係
- 3 独自の集団ができる端緒
- 4 子どもへの信頼と賭け
- Z いじめ集団と傍観者群
- 1 いじめ克服に欠かせない社会のバックアップ
- 2 仮面をつけた子どもたち
- 3 グループから抜けられない理由
- 4 行き先は少年鑑別所
- 5 傍観者群の立場と役割
- 6 いじめ集団は肥大化し加速化する
- [ いじめと青少年期の自我形成
- 1 子どもに心で接するむずかしさ
- 2 生徒に「仕掛ける」教師の存在
- 3 いじめを受ける側の共通因子
- 4 促成栽培的な自我はもろい
- 5 未熟性を助長する「骨抜き」教育
- 6 いじめ克服の要は「教育の原点」への回帰
- あとがき
まえがき
「いじめ」が見えにくいといった教師の声に較べ、児童・生徒は「ほとんどの先生」が知っている筈、と思っている。
ある私立の中学校男子生徒のいじめ観の調査にかなりの数で、いじめられる子は生きていく適性・能力をすでに欠いてる人間だ、と答えているという。
いじめ防止策として、「いじめられた」と感じた被害者の「主観」で「いじめ」の存在が認められるべきといった考えが教育界に定着しつつあるのに、それでも「いじめ」の現象はますますふえているのが現状である。
今日「いじめ」の学校内心的力学ともいうべき緊張が、子ども以上に教師の側、教育委員会で高まっているのは結構なことであるのだが、「いじめ」をめぐってのコンセンサスがいまだ判然としないでいるのも実状である。
「いじめられた」即「いじめ」といった概念だけで「いじめ」の判定がOKともいい難い。
地域差・学校差・個人差・集団差・文化差などある種の「異文化」的見地で「いじめ」を見る限り、いじめ的現象といじめそのものとの間には相当な幅があるのではないか。
このさい、教師は徹底的に「いじめ観」の吟味・分析・検証・仮説・試行等の認識作業の積み重ねを意図的に息長くしてほしいのである。
これからの「少子時代」に生きる子どもたちの「対人関係能力」の未熟化に備え本格的に取組む姿勢がいま求められているのではないだろうか。
本文はジャーナル各誌に掲載した拙文をもとに書き下した教育エッセーである。
まずはご拝読頂ければ光栄である。
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- 明治図書