- はじめに
- T 総合学習はコワクない
- 1 総合学習は新しい?
- 2 総合学習は直輸入品?
- 3 総合学習は学者が考え出した?
- 4 総合学習の定義
- 5 総合なら何でもいいのではない
- U 三つの総合学習
- 1 文化遺産の継承・発展
- 2 合科的指導
- 3 カレーの原理
- 4 社会現実への対応
- 5 今日的問題に答えはない
- 6 社会の変化に主体的かつ科学的に対応する
- 7 認識から見識へ
- 8 子どもの求めの実現
- 9 切実な問題の主体的解決
- 10 誰が納得するための学習か
- V 対立図式を超えて
- 1 生活現実の二側面
- 2 芽はすでに子どものうちにある
- 3 子どもも歩けば問題にあたる
- 4 子どもの活動から学習内容へ
- 5 二重化カリキュラムの危険性
- 6 継承から創造への原理転換
- W 問題は子どもたちが解決する
- 1 総合学習の実践原理
- 2 子どもの求めに応じるとは
- 3 なぜ、生活科はつまらなくなったか
- 4 教師が問題解決してはいけない
- 5 それは誰が悩むことか
- 6 なぜ死んじゃったの
- 7 よく困り、よく学べ
- 8 どうしてなかよくするのか
- 9 早く進めばいいとは限らない
- 10 基礎が先か、応用が先か
- X 教師の意図性、指導性と子どもの求め
- 1 子ども主体の学習を教師が構成する
- 2 こんなの、食べてたっけ
- 3 待ちと投げかけ
- 4 総合学習を発展させる教科学習
- 5 子どもは活動を目指し、教師は内容を目指す
- 6 語れなくても求めはある
- 7 求めは出会いの後で気づくもの
- 8 偶然の必然化
- 9 単元立ち上げの三つの方法
- Y カリキュラムは三月三一日に完成する
- 1 投げかけは拒否されうる
- 2 予定は未定
- 3 計画カリキュラムと実施カリキュラム
- 4 環境がだめなら生産があるさ
- 5 ズレの向こうに子どもが見える
- 6 カリキュラムの研磨
- 引用文献
はじめに
総合学習は、実はそれほど難しいものではありません。実践のいいイメージといくつかの勘どころさえ自分のものにしてしまえば、道は自ずから開けてきます。
総合学習とはどのようなものか。どのように単元を構成し、どのように支援していけばいいのか。教師が身につけるべき力量という観点から、これら総合学習の実践展開に関わる問題について可能な限り具体的に応え、少しでも多くの先生方に、子ども中心の立場に立つ「真正の」総合学習を実現していただこうというのが、本書のねらいであり、私の願いでもあります。
総合学習で教師に求められる力量をハウツウとしてマニュアル化することは不可能ですし、目指すべきでもありませんが、だからといってそれは「名人芸」でもありません。丹念に研鑽を積み、自らのあり方を日々新たなものにしていこうという姿勢さえあれば、誰でも獲得することができます。しかもその力量は、教科学習や特別活動、学級経営や児童指導にも自然と生かされ、あなたの教師としてのあり方を根底から支えてくれるでしょう。あるいは、それは力量と呼ぶべきではなく、むしろ教師が到達する一つの境地なのかもしれません。
本書は、山形県山形市立第四小学校、埼玉県草加市立高砂小学校、東京都台東区立大正小学校、同江戸川区立清新第三小学校、千葉市立打瀬小学校、横浜市立大岡小学校、神奈川県山北町立三保小学校、同秦野市立上小学校、静岡大学附属浜松小学校、富山県大山町立小見小学校、同福沢小学校、京都市立高倉小学校、岡山県久世町立遷喬小学校、同寄島町立寄島小学校、その他の学校と協同で展開してきた、授業とカリキュラムの継続的な開発研究から生まれました。本書に書かれたことのほとんどは、これらの学校の教室や職員室や会議室で、先生方とともに発見し、繰り返し確認し、言語化してきたものです。本書の中に実践展開に耐え得る洞察やアイデアがあるとすれば、これらの学校の果敢で粘り強い取り組みの賜物にほかなりません。
最後になりましたが、すばらしいモティーフを下さった明治図書編集部の樋口雅子編集長、校正でお世話になった鈴木嗣子さんに、心からの感謝を申し上げたいと思います。
一九九九年 三月 /奈須 正裕
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- 明治図書
- 今日の座談会でこの本のことが紹介されていました。ぜひ読んでみたいです。2017/2/18