- まえがき
- 1 二十一世紀
- ――教育の扉をどう開くか
- 一 二十一世紀に向けた学校経営の課題
- 二 学校をとりまく課題
- 三 国際比較から見た日本の教育
- 四 教育の問題が直視されているか
- 五 教育課程の基準の改善の「ねらい」をどう読むか
- 六 ワン・ツー・ワン(個別対応)の教育の重視
- 七 特色ある学校づくりを目指して
- 2 総合的学習への期待と課題
- 一 総合的学習の実施
- 二 実施に向けた方策と問題点
- 三 総合的学習への期待と学校格差
- 四 総合的学習の新しさの認識
- 五 総合的学習の二つの「ねらい」
- 六 自己発現型と学習創造型
- 七 学習プロセスの構想と三つの原則
- 1 課題発見/ 2 課題追究/ 3 成果発表
- 3 総合的学習の実際
- 一 総合的学習の試行的な実践
- 二 総合的学習のタイプ
- 1 課題設定タイプ/ 2 単元構成タイプ/ 3 学校カリキュラム編成タイプ/ 4 学習時間設定タイプ
- 三 年間計画の実践例
- 1 年間計画の実践タイプ/ 2 学校のカリキュラム編成のタイプ分け
- 四 子どもの自己課題設定
- 五 課題追究活動とポートフォリオ学習
- 六 成果のまとめと発表
- 七 「認識の島づくり」が必要
- 4 ナレッジマネジメントを生かす
- 一 総合的学習の「課題」
- 二 教師が抱え込まない
- 三 ナレッジマネジメントの発想とゲストティーチャー
- 四 形式知と暗黙知
- 5 子どもの視点から見た総合的学習
- 一 総合的学習の子どもの意識調査
- 二 総合的学習って何
- 三 総合的学習の「よさ」や魅力は何か
- 四 総合的学習で何を身につけたか
- 五 総合的学習の満足群・不満足群
- 六 子どもの声から何を学んだか
- 6 「そのつど評価」で意欲促進を
- 一 評価観の転換が必要
- 二 所産的評価とプロセス評価
- 三 「そのつど評価」でホットなメッセージを
- 7 おらが学校の教育課程経営
- 一 校長のビジョン経営
- 二 教育課程経営の基盤
- 三 特色ある学校づくりと教育課程経営
- 四 変動型週時間割への移行
- 1 固定型週時間割から変動型週時間割へ/ 2 モジュールとブロックによる週時間割
- 五 経営における「協働」の意味
- 六 ナレッジマネジメントを校内に活用する
まえがき
最近、年のめぐりが早くなったのではないか、と思えるほど教育の動きは激しい。
新学習指導要領は二〇〇二年度からの実施と考えていたのが、二〇〇〇年度にかなりの前倒しで実施される。総合的学習も一部実施される。
総合的学習は、すでに試行的に実施をはじめた学校、どう対応すべきか手をこまぬいている学校など、すでに学校格差が生まれている。
当然のことだが、一般的には総合的学習は難しいと考えられている。
そこで私は、総合的学習は教師が抱えこまないことが大切だと考えている。学ぶのは子どもなのである。そこで教師は、子どもがどうすれば国際理解や情報、環境、福祉、健康あるいは地域にみられる生活課題に取り組めるか、を考える。
また、これまでの学校は子どもたちを自校の教師のみで指導してきた。これからは地域の人材などの力を借りて、子どもの学びの世界を広げることが大切だと考える。
教師の役割は何かと言えば、子ども一人ひとりがどう学べるようになるかを考え、総合的学習をマネジメントする、プロデューサーのようになることだと考える。
総合的学習は子どもの学習のイメージを変え、教師の役割もまた変わると考えている。
そこで教師の役割の基本は、学校の特色を生かしながら総合的学習を豊かにマネジメントすることなのである。
第T章は、二十一世紀に向けたわが国の教育について、どのような問題があるかを提示し、わが国が当面している厳しい教育の現実を直視する必要があることを提言した。
第U章は、総合的学習の持つ新しい意義について述べた。総合的学習はやり方によっては決して難しいことではない。実施のためのコツをつかむことが大切である。
第V章は、これまで見られた多様な実践から、総合的学習の実際について述べた。総合的学習のポイントを提示することによって、豊かな学習展開の方策を提示した。
第W章は、これからの学校が多くの「知」を集める豊かな学習の場になるようにナレッジマネジメントを提唱した。形式知と暗黙知という一見言葉は難しそうであるが、極めて大切な考えを示した。
第X章は、総合的学習を学習者である子ども自身がどう思っているか、を調査に基づいて提示した。子どもの視点から見た総合的学習のあり方に多くの示唆が得られた。
第Y章は、総合的学習の評価である。ここでも新しい評価の考え方を示した。学習プロセスに応じた教師の言葉かけを実施するだけで子どもの学習意欲は高まるのである。学習意欲を高める「そのつど評価」の考え方である。
第Z章は、これからの学校として教育課程経営をどう考え、どう推進したらよいかを述べた。学校の主体性・自律性が言われているとき、教育課程経営を中心にした学校づくりこそが基本だからである。
このように本書は、今まさに学校が取り組んでいる緊急の課題に即応したメッセージだと考えている。本書が学校や教師に役立ってくれることを願っている。
最後に本書の刊行にご尽力をいただいた明治図書の江部満氏に心からお礼を申し上げる。
2000年1月 ベネッセ教育研究所 /高階 玲治
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- 明治図書