- はじめに
- 第1章 授業づくりの基本にかかわる6のこと
- 1 算数授業をよくするための5つの学習規律
- 2 「なぜ算数を学ばないといけないの?」と問われたら
- 3 子どもは「できる」が先で「わかる」が後
- 4 低学年の授業は45分を15分×3回と考える
- 5 先生には学習指導案,子どもには学習案
- 6 算数が苦手な子どもに共通する3つのこと
- 第2章 数と計算の授業にかかわる17のこと
- 7 数と計算指導の3つの要点
- 8 数の学習は生まれたときから始まっている
- 9 10までの数の分解と合成が重要なわけ
- 10 数図ブロック操作による3種類のひき算方法
- 11 数図ブロック操作と筆算との間には大きな溝がある
- 12 九九の6,7,8の段をなるべく早く指導する
- 13 答えから九九を見直すと新たな発見がある
- 14 わり算が難しい3つの理由
- 15 3桁×2桁のかけ算には13回も計算が必要
- 16 1の位から計算しない小数の計算
- 17 小数のわり算のあまりはそう簡単に理解できない
- 18 答えの見積もりは4年生からでは遅い
- 19 答えを見積もる力は1年から系統的に育てる
- 20 分数が難しい3つの理由
- 21 分数にはたくさんの顔がある
- 22 異分母分数の計算はたし算・ひき算の方が難しい
- 23 分数のわり算は中学校数学への橋渡し
- 第3章 量と測定の授業にかかわる9のこと
- 24 量と測定指導の3つの要点
- 25 ものさしを使わない必然性を生み出す
- 26 長さ指導で本当に大切な3つのこと
- 27 目に見えない量としての重さ
- 28 時刻と時間が難しい3つの理由
- 29 角度が360°なわけ
- 30 実は重要な面積感覚
- 31 速さの学習は1年から始まっている
- 32 2つの量から新しい量をつくる
- 第4章 図形の授業にかかわる9のこと
- 33 図形指導の3つの要点
- 34 立体図形の仲間分けに込められた重要な指導事項
- 35 色板ならべに含まれる2つの重要な算数的要素
- 36 ものさしとコンパスを上手に使うコツ
- 37 2つの三角定規を使いこなすコツ
- 38 作図には予測が不可欠
- 39 図形の合同や拡大・縮小で大切にすべきこと
- 40 見取図から立体を正しくイメージするのは意外に難しい
- 41 まわりくどくてもよいので文章を書かせる
- 第5章 数量関係の授業にかかわる9のこと
- 42 数量関係指導の3つの要点
- 43 低学年で伴って変わることを指導することの意味
- 44 反比例のグラフはどうして曲線なのか
- 45 いろいろなグラフを使い分ける理由
- 46 実は大事な不等号
- 47 式にはどんな種類があるのか
- 48 文字には2つの意味と3つの役割がある
- 49 グラフの特徴を示す2種類の数字
- 50 実際にデータを分析するときのコツ
はじめに
大学教員になり,小学校現場の先生と共同研究をする機会をもつようになって19年目となった。
30代前半のころ,小学校現場に伺わせていただいた際には,教育の大先輩である校長先生,教頭先生,研究主任の先生になめられないよう,必死で自身の数学教育の理論を構築し,研究授業で取り上げられる単元の数学的背景を事前に学習したうえで,本番を迎えるようにしてきた。事後の研修での私の話はすべて録音し,帰途の電車で繰り返し聞いた。自身の言葉の稚拙さに,いつも落胆していた。
40歳を過ぎたころからは,小学校の先生が算数を指導する際,何に悩んでおられるのかに興味がわくようになってきた。自身に少し余裕が出てきたのであろう。
すると,先生方からの悲痛な声が私の耳に届くようになった。「自力解決の時間に手が動かない子どもにどう対応すればよいかわからない」「ヒントカードを渡しても効果がない」など,定番とされてきた算数の授業スタイルの中で苦悩されている先生方の声が,私のもとに数多く寄せられるようになった。
また,「数図ブロックのときにはできるのだけれど,ひっ算になるとできない」「とんでもない答えを書いていて,それを指摘しても,ピンとこない子どもがいる」など,指導方法にかかわる悩みも同時に届くようになった。
このころ,ICTが発達したことも手伝って,子どもたちの授業でのつまずきを,小型のカメラやビデオに撮って,研究授業後の研究会で大画面に映しながら先生方と一緒に討議することができるようになった。そのことは,これまでの算数指導における定石を,いったん横において,ビデオに映る子どもの事実から研究をスタートすることにつながっていった。
そして,手探りではあったが,互いに本音を出し合うことから,新しい指導のアイデアは意外と数多くわき出してくるようになってきた。
本書は,そうした小学校の先生方と一緒になって産み出してきたアイデアを,50のエッセンスにまとめたものである。したがって,万能薬とは言えないけれども,先生方が日々の算数の授業で困っておられる際には,何らかのヒントを与えることができるのではないかと期待している。
これまで,数多くの小学校の先生方といっしょに研究させていただいたが,とりわけ京都府の八幡小学校,西本梅小学校,大阪府内の山田第三小学校の先生方には,本当に多くのことを教えていただいた。
そして,このジャンルの書籍の執筆が初心者であった私に対して,明治図書の矢口郁雄氏には,根気強く,また一から十までを教えていただいた。感謝の言葉しかない。
2017年1月 /黒田 恭史
授業づくりに特化したことがもっと入っていればなあと思います。