- 刊行のことば
- 「話す力,書く力,つなぐ力を育てる」とは
- 第1章 「話す力,書く力,つなぐ力」を育てる活動
- 1 自ら学ぶ力を育てる「奈良の学習法」とは
- 2 朝の会で育てる「話す力」
- ・1年生の 朝の会
- ・2・3年生の 朝の会
- ・4・5年生の 朝の会
- ・6年生の 朝の会
- 3 自由研究で育てる「つなぐ力」
- ・1年生の 自由研究
- ・3年生の 自由研究
- ・4年生の 自由研究
- ・6年生の 自由研究
- 4 日記で育てる「書く力」
- ・1年生の 日記
- ・3年生の 日記
- ・5年生の 日記
- ・6年生の 日記
- 5 学習の「めあて」と「ふりかえり」
- ・しごとの学習
- ・けいこの学習
- ・なかよしの学習
- 子ども記 「生き物の飼育から学ぶ」
- 第2章 「話す力,書く力,つなぐ力」が育つ学びの展開
- 1 子どもが進める学習「独自学習」と「相互学習」
- 2 「しごと」学習で育てる「話す力,書く力,つなぐ力」
- しごと(2年) たんぼの稲を育てよう
- 〜「しごと」学習の取り組み〜
- しごと(4年) 「割り箸」の追究から育つ,書く力・つなぐ力
- 〜くらしの中の木を探ろう〜
- しごと(5・6年) くらしの中の「つくる」・「つかう」
- 〜自分と未来を「つなぐ」,「しごと」学習の取り組み〜
- しごと(6年) 観光客がCOOL JAPANおもてなしの心で迎えよう
- 〜書くことによって自分の学びや自分のあり方を見つめる〜
- 3 「けいこ」学習で育てる「話す力,書く力,つなぐ力」
- けいこ(国語) 新たな独自学習を生む相互学習
- 〜平和のとりでを築く(6年)〜
- けいこ(国語) 「つなぐ意識」が学習を深め,生きてはたらく力を育む
- 〜初雪のふる日(4年)〜
- けいこ(算数) 「算数学習」における子どもの学びと教師の出場(でば)
- 〜「話す力」「つなげる力」を育てるために〜
- けいこ(理科) 電磁石の性質と生活への応用
- 〜個の願いや問い,個の学びをつなぐ理科学習〜
- けいこ(体育) 自律的な学びを引き出す運動ランドの学習
- 〜2年生・3年生の運動ランドの実践より〜
- けいこ(音楽) けいこ音楽における話す,書く,つなぐ力
- 〜5年生の鑑賞の学習活動の実践から〜
- けいこ(造形) らいふのおと
- 〜願いが叶った瞬間に見える景色を立体で表そう(5年)〜
- けいこ(家庭) 食文化の豊かさを書く力,つなぐ力を育てる家庭科学習
- 〜みそ汁のひみつをさぐろう(5年)〜
- けいこ(食教育) 食の学習と給食時間を結び生活につなぐ
- 〜食べ物と体のつながりを考えよう(3年)〜
- 4 「なかよし」学習で育てる「話す力,書く力,つなぐ力」
- なかよし グループなかよしの話す力,書く力,つなぐ力
- なかよし ペア活動から学ぶ,話す力,書く力,つなぐ力
- 〜1年星組と6年月組の交流活動を通して〜
- なかよし 子どもが創る行事で伸びる力
- 〜子ども主体の行事運営〜
- なかよし 低学年なかよし集会
- 〜集会を創り,伝える子どもたち〜
- なかよし おいしく楽しく食べる給食を目指して
- 〜感覚を研ぎ澄まして味や食感を表現する〜
- なかよし 思いを表現できる保健室づくり
- 子ども記 「気づきから学びをつくる」
- あとがき 〜平成の「奈良の学習法」の模索〜
刊行のことば
奈良女子大学附属小学校は,奈良県北西部の奈良市にある。奈良市は大阪や京都に隣接する中核市であり,小学校最寄りの私鉄電車駅には一日5万人を超える乗降客がある。現在,国立大学法人奈良女子大学が所在する地に,明治44年に創設された私たちの小学校は,昭和40年に,この奈良市学園前へ学びの場を移した。創設から今日まで,場所を変え,そこに学ぶ人々を変えながら,綿々と受け継がれてきた学び合いの形が「奈良の学習法」である。
奈良女子大学には大学附属園校として,附属小学校の他に,附属幼稚園と附属中等教育学校があり,教育活動において積極的に連携を進めている。小学校は幼稚園と併設型幼小一貫教育校として行事やカリキュラムの整備を進めており,そこにも「奈良の学習法」の理念は活かされようとしている。
昨今,教育の場において,他者と協同しながら,自らが新しい価値を創造する「協働の学び」や「双方向の学び」が注目され始めている。本校の教育目標である「開拓,創造の精神を育てる」「真実追求の態度を強める」「友愛,協同の実践を進める」は,まさに,それに先行したものである。
また,私たちが推進する「奈良の学習法」の学習の起点に,「独自学習」があることは注視されるべきであろう。独自学習は,子どもが外の世界に目を向け,そこにわきあがる興味や関心を動機として自らの問いを作り,他者と対峙する中で,核となる考えを深めてゆく学習過程である。この自律的な学びの過程が前提にあって,他者との真の学び合いが可能になると考えているからである。
本書では,「奈良の学習法」に基づく実践の中から,特に,「話す力」「書く力」「つなぐ力」に焦点を当てて事例を紹介している。いずれも,コミュニケーションにかかわる力であるが,そこには,自分の中のコミュニケーションと,他者とのコミュニケーションの双方がある。例えば,日記を書くことは自分との対話であり,やがては内省または自問自答の力につながるであろう。
事例は,授業場面に留まらず,「朝の会」や「なかよし集会」などの活動や,給食や保健室での場面からも選んでいる。私たちは,子どもたちの生活に根づいた学習を目指している。教室での授業ではない事例からも,子どもたちが学習の基盤となる力を身につけていることを読み取っていただけるのではないだろうか。
私たちの小学校には,次のような学習歌「伸びて行く」がある。この歌は,折々の行事の際に歌い継がれてきた。
山のわらび ぐんぐんのびる 春の日をあびて ひとりで伸びる
たんぼの麦の芽 ぐんぐんのびる 雪の中をわけて ひとりで伸びる
生まれたての乳児は,やがて周囲の環境に興味を示し始め,モノをつかんだり,寝返りをしたり,はいはいをしたりして自力移動を開始する。モノや人といった外部の環境に,その都度新鮮な目を向けて,能動的にかかわってゆく姿。そこには,生きるエネルギーと,その人らしさが表れている。
学ぼうとする意欲はどのような環境から育まれるのだろうか。自律的な学びが進行し始めたとき,他者として教師はどのようにかかわり,その学びをつなげばよいのだろうか。
様々な事象が目まぐるしく移り変わる時代の中で,私たちは日々の現場で子どもたちに向き合い模索を続けているところである。本書が初等教育にかかわる方たちの実践の手がかりとして少しでもお役に立つならば幸いである。
奈良女子大学附属小学校 校長 /成瀬 九美
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- 明治図書
- 「奈良の学習法」を実践してきた奈良女、そしてそれを先取りしてきた明治図書の本を読みたいです。2023/4/21きゅうそん