- はじめに
- Chapter 1 ユニバーサルデザインと個に対する支援でつくる授業
- 1 ユニバーサルデザインの授業づくり
- 2 個に対する支援
- Chapter 2 まずはここから! 数学授業のユニバーサルデザインのポイント
- 1 板書のポイント
- 2 ノート指導のポイント
- 3 学習プリント作成のポイント
- 4 テスト作成のポイント
- Chapter 3 気になる生徒も巻き込む! 全員参加の授業づくりの工夫
- 1 「解ける」より「参加できる」導入
- 2 教科書を教える授業づくり
- 3 学習のスモールステップ化
- 4 「わかった」を実感できる確認
- 5 質問しやすい環境づくり
- 6 机間巡視,机間支援,机間指導
- 7 グループ学習の特長の生かし方
- 8 少人数授業の特長の生かし方
- Chapter 4 気になる生徒のために! 個への支援の工夫
- 1 言葉の処理を間違えやすい生徒への支援の工夫
- 2 多動傾向の生徒への支援の工夫
- 3 継次処理が苦手な生徒への支援の工夫
- 4 実行機能が弱い生徒への支援の工夫
- 5 見る力が弱い生徒への支援の工夫
- 6 プランニングに課題のある生徒への支援の工夫
- 7 選べない生徒への支援の工夫
- 8 計算が合わない生徒への支援の工夫
- 9 作図につまずく生徒への支援の工夫
- Chapter 5 ちょっと待った! 授業の“当たり前”に潜む落とし穴
- 1 文房具をそろえる
- 2 問題解決型の授業の組み立て
- 3 多様性への配慮
- 4 学習の転移
- 5 言語活動の充実
- Column
- 10分間で150文字
- 授業が上手な教師は生徒指導も上手
- 他教科と足並みをそろえることの意義
はじめに
昔から,授業の職人のような教師がいます。数学が得意な生徒だけでなく,苦手な生徒の関心まで引きつけてしまう魅力的な授業は,経験の浅い教師にとって大きな目標になります。
よく,この職人技のような授業技術を“盗みとれ”と言われますが,実際にはそれほど簡単なことではありません。それらは当の本人も経験と勘で行っていることが多く,なかなか理屈では説明しにくいものです。しかし,特別支援教育の視点から,生徒の発達と授業づくりについて考えてみると,それらの多くが理に適っていることに気がつきます。
もとより,「こうすれば必ずうまくいく」というような魔法の授業技術などは存在しません。だからこそ,一人ひとりの生徒をしっかりと観察し,目的をもった授業づくりをすることが大切になってきます。周囲の生徒が主体的に学べる環境が整っていなければ,支援の必要な生徒をケアする余裕はもてません。
「どの生徒にもやさしい授業」というのは,生徒一人ひとりがそれぞれに目的意識をもって学びに参加できるような環境が整っているということだと考えます。だれにでもわかる,だれにでもできる,ということの解釈を誤り,安易に授業のレベルを下げてしまっては,教科教育の責任が果たせません。質の高い授業を行うためにこそ,ユニバーサルデザインを取り入れていく必要があります。
流行にのって,形だけユニバーサルデザインを真似するのではなく,今,目の前にいる生徒たちに,数学の授業を通してどのような力をつけたいのか,どのように育ってほしいのかを考えながら本書をお読みいただきたいと思います。単に数学ができる,わかるにとどまらず,生徒の社会的スキルにつながるような授業づくりを,本書を通して支援できれば幸いです。
2015年5月 /下村 治
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- 明治図書
- 数学の先生に是非読んでもらい、できない生徒の困難さを分かってもらいたいです。小学校の担任の先生には、小学校の基礎的な考え方がいかに数学の土台を作っているかを再確認してもらいたいです。2018/7/1950代・通級指導教室担当
- 学校では学べない授業づくりのポイントがたくさん書かれており、とても参考になりました。2016/3/520代・学生
- 特別支援教育と数学教育の融合をテーマにここまで丁寧かつ実践的に述べられた書籍は類い稀であり、今般の学校教育の課題に応えるものである。2015/10/1930代・中学校教員