- はじめに
- Part1 音楽の先生に求められる「授業マネジメント」とは?
- 1 音楽の先生はマネージャー 子どもの興味を見つめること
- 1 マネージャーとしての先生の役割
- 2 身近な音楽が動機付けになる!流行歌は教材の宝庫
- 3 観察・設計・運営!授業を成立させる3大プロセス
- 2 「〇〇をつなぐ」魅力ある授業をつくる5つのポイント
- 1 「既知」と「未知」をつなぐ
- 2 なじみの歌と教科書歌唱曲をつなぐ
- 3 文字譜と鍵盤ハーモニカ・リコーダーの基礎学習をつなぐ
- 4 身近な音楽と「音楽づくり」をつなぐ
- 5 身近な音楽と「鑑賞学習」をつなぐ
- 3 身近なネタと教科書をつなぐ授業アレンジ・教材活用術
- 1 クラスの特徴を活かして授業をつくろう!
- 2 学校備品を活用して教室をつくろう!
- 3 教科書・歌集,教科書準拠CD・DVDを活用しよう!
- 4 学校行事を授業と結び付けよう!
- Part2 子どもも先生も楽しくなる!わくわく授業実践例
- 1年
- 〔歌唱〕 聴いて真似て歌唱レパートリーを増やそう
- 〔器楽〕 大好きな歌を鍵盤ハーモニカで吹いてみよう
- 〔音楽づくり〕 3文字・5文字のラップをつくろう
- 〔鑑賞〕 バイオリンの弾き真似で速さの違いを感じよう
- 2年
- 〔歌唱〕 歌集から2拍子・3拍子・4拍子の歌を探そう
- 〔器楽〕 鍵盤ハーモニカと打楽器のなかよし合奏
- 〔音楽づくり〕 リズムカードを並べて私のリズムをつくろう
- 〔鑑賞〕 指揮者になって拍子の違いを身体で感じよう
- 3年
- 〔歌唱〕 ハンドサインを見ながら輪唱しよう
- 〔器楽〕 「笛星人」全曲演奏でソプラノリコーダーの基礎固め
- 〔音楽づくり〕 リコーダーで覚えた音を五線譜で書く練習をしよう
- 〔鑑賞〕 映画音楽を聴きながら様子を想像して話し合おう
- 4年
- 〔歌唱〕 2分の1成人式に向けて 合唱で思いを伝えよう
- 〔器楽〕 2分の1成人式に向けて 器楽合奏に挑戦
- 〔音楽づくり〕 季節の様子を音楽で表そう〜「音風景」〜
- 〔鑑賞〕 伸びる音と伸びない音?楽器の音色に耳を傾けよう
- 5年
- 〔歌唱〕 憧れの洋楽ポップスに挑戦しよう
- 〔器楽〕 楽器探検!音楽室の楽器で合奏してみよう
- 〔音楽づくり〕 お囃子と打楽器でお祭りのリズムとメロディをつくろう
- 〔鑑賞〕 手拍子が打てる?打てない?民謡を分類しよう
- 6年
- 〔歌唱〕 変声に留意した「旅立ちの日に」三部合唱
- 〔器楽〕 6年生を送る会を学年合奏で締めくくろう
- 〔音楽づくり〕 音楽付き卒業アルバムをつくろう
- 〔鑑賞〕 鑑賞→歌唱→鑑賞の流れでミュージカルを味わおう
- 特別支援学級
- 〔器楽〕 トーンチャイムを使って「たなばたさま」の合奏をしよう
- 〔歌唱器楽鑑賞〕 歌唱・器楽・ダンスを常時活動にしよう
- Part3 こんなとき,どうしたらいい?音楽科授業Q&A
- Q1 「今月の歌」や「朝の会の歌」はどのように決めたらいい?
- Q2 音楽集会はどのように運営したらいい?
- Q3 卒業式や入学式の音楽の指導はどうしたらいい?
- Q4 「君が代」と「校歌」はどのように指導したらいい?
- Q5 高学年になると元気に歌わなくなってしまう。どうしたらいい?
- Q6 グループ活動を円滑に進めるにはどうしたらいい?
- Q7 リコーダーが苦手な子への指導はどうしたらいい?
- Q8 鍵盤ハーモニカはどのように継続していけばいい?
- Q9 授業態度,学習規律はどのように指導したらいい?
- Q10 教具の忘れ物をよくする子にはどのように指導したらいい?
- Columm
- 1 「ほめ上手」になる魔法の言葉
- 2 「音楽づくり」を常時活動にするための工夫
- おわりに
はじめに
本書は,子どもたちだけでなく,先生も音楽授業を楽しみ,待ち遠しく思えるような授業にしたいと思っている先生たちに向けて「授業マネジメント」の考え方と実践をご紹介します。
私は,長年中学校に勤務した後,小学校に音楽専科として実践の場を移しました。ところが,何だかやる気がなく,まともに声を出さない6年生と対面し,わさわさと落ち着きのない中学年の子どもたちに翻弄され,小学校の音楽授業をどのように展開していったらよいのかわかりませんでした。
そこで,私は,今小学生は何ができて何ができないのか,何を知っていて何を知らないのか,何ができるようになりたいのか,といった子どもたちの実態とニーズを,観察やインタビューによってリサーチしました。
私が「マネジメント」に注目したのは,こういった子どもたちの実態やニーズを前提にするというのは,運動部や芸能人の「マネージャー」と同じ仕事なのではないか,と考えたからです。
「そっ啄同時」という言葉があります。
「そつ」は,卵の中のひな鳥が殻を破って生まれ出ようとするときに卵の殻を内側からつつくことを言います。「啄」は,親鳥がひな鳥の内側からつつくのと同時に外側から殻をつつくことを言います。ひな鳥と親鳥の「つつき」が一致して殻が割れて生まれ出てくる,それが早くても遅くても駄目で,完全に一致しないといけない危険な一瞬だそうです。
禅では,機が熟して悟りを開こうとしている弟子に,師がすかさず教示を与えて悟りの境地を導くこと,という意味です。
この「啄同時」は,まさに先生と子どもたちの関係に当てはめられます。「やる気」「意欲」「主体」「能動」「自主的」…どれもが,内側から自分の力で殻をつつく行動を起こさなければ起きない,つまり,外側からこじ開けようとしても開かない「内鍵」しかないのです。その鍵を持っているのが主体である子どもです。
天照大神が天岩戸に入り込んで出て来なかったとき,岩戸の外でアマノウズメが踊り騒ぎ,その様子が気になって外の様子を覗こうとして結局,引っ張り出されたという神話も,先生と子どもの関係に当てはめるとおもしろく解釈できます。
つまり,主体である子どもは自分の力で鍵を開けなければならないのですが,開けたくなるような動機付け,開ける瞬間に引っ張り出してあげる補助,それが重要だということです。
私は,GReeeeNの「扉」の歌詞の一部をよく引用して話をします。「先生は,あなたの0を1にすることはできない,でも1ミクロンでもやる気を私に見せてくれたら,絶対に引っ張り出してあげる」と言います。
試合に勝てる,芸能人が上手く仕事ができて成果が上がる,そのような環境をつくる,お世話をするのが「マネージャー」です。授業に当てはめると,子どもたちが円滑に学習活動できるようなお世話をすることを「マネジメント」,先生を「マネージャー」ととらえたらどうだろうと私は考えました。授業のための「マネジメント」,つまり,子どもたちが学習活動を生き生きと取り組んで成果が出るようにするための先生の仕事を「授業マネジメント」と定義したのです。
「授業マネジメント」は,子どもの実態とニーズから授業を発想します。
本来楽しいはずの音楽なのに,何だか子どもたちがノッテこない,音楽は苦手,嫌い,などという声がもし聞こえてきたら,先生は「マネージャー」の視点に立って「授業マネジメント」の考え方で授業をしてみてください。
2015年4月 /中山 由美
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- 明治図書
- 久しぶりに音楽の専科をすることになったので、以前購入した本を持ち出しました。10年ぶりの5年生の音楽にアイデアをもらいました。2024/4/1060代・小学校教員
- コンパクトに内容がまとまっているので、短時間で読むことができた。2023/7/230代・小学校教員
- 授業に役立つ内容でした。2017/4/130代・小学校教員