- 『楽しい教室づくり入門』復刻版に寄せて
- まえがき
- 1章 出会いのセンスをみがく
- 1 子どもの目は鋭い
- 2 二つの出会いのしかた
- 3 出会いのセンスをどうみがくか
- 2章 楽しい教室づくりでめざすこと
- 1 ユーモアのセンスをみがく
- (1) ヨーロッパのガイドから学ぶ
- (2) 育ちにくいユーモアのセンス
- (3) 捜査願い(二年の例)
- (4) 二年生の身の回りを見る目
- (5) 三年生の身の回りを見る目
- (6) 子どもに学ぶ
- ユーモアのある学級 /村井 俊之
- 2 授業へ挑戦する子どもを育てる
- (1) 心のひびき合いを引き出す
- (2) 柔軟で明確な指導計画を
- (3) 「見る目」を育てる
- 教師を論破しようとする学級を!! /田村 勝
- 3 知的好奇心を高める
- (1) 「はてな?」みつけの楽しさを知らせる
- (2) 社会事象へ好奇心を高める
- 4 知的好奇心を高めるゆさぶり
- (1) 「わかっていない」を知らせる
- (2) 「知ることのおもしろさ」を体得させる
- 「追求の鬼」を育てる /小瀬 善浩
- 3章 一言少なく一手少ない指導を心がける
- 1 指導過剰からの脱却を
- (1) 一言足りない
- (2) 一手少ない指導
- (3) おさえるべきところ
- (4) おしゃか様の指
- 手紙 /庄司 清彦
- 2 今年もちょろちょろするぞ
- (1) 子どもからのラブレター
- (2) やる気を引き出す方法
- (3) ユーモアを引き出す
- 3 のせてその気にさせる
- (1) 「鬼」を育てる
- (2) 一人の子を育てる
- (3) 「○○魔」を育てる
- 4章 意欲とやさしさと安心感をもたせる
- 1 係活動で意欲を引き出す
- (1) 「登録制」係活動
- (2) 係活動をゆさぶる
- 2 電話で人間関係を深める
- (1) 休んだ子どもに電話をかけなさい
- (2) どうして電話をかけるのか
- (3) 相手の立場に立って考えなさい
- 3 教室はまちがうところだ
- (1) 発言力を伸ばすには
- (2) まちがえるのも指導技術
- (3) 「まちがった考え」大歓迎
- 5章 子どもも授業もよいところに目をつける
- 1 子どもは「よい子」でもあり悪い子でもある
- (1) ある母親からの手紙
- (2) 見方によって変わる
- (3) クラスの宝物
- (4) よいことが見えるめがね
- 2 見方によって授業も教室も変わる
- (1) 見方によって授業は変わる
- (2) 教師に学ぶ意欲があるか
- (3) 「見る目」があれば学べる
- 6章 子どものよいものを引き出す
- 1 「紳士録」でよい行動を引き出す
- (1) 紳士録
- (2) 子どものよさを発見する目
- (3) よいネタみつけ
- (4) 子どもの文からネタみつけ
- 2 「今月の詩」で鋭いことばを引き出す
- (1) どうして詩をとりあげたか
- (2) 今月の詩とパロディ
- 7章 「すばらしい仲間たち」と思わせる
- 1 死んでも学校へ行きたい
- (1) 「一人の侍」のプロフィール
- (2) 熱をおしての登校
- (3) ファイトの源
- (4) 道徳の授業のネタに
- 2 自分のクラスはいいクラスだ!
- (1) いいクラスだと思わせる
- (2) やさしさを育てる
- (3) 友だちのよいところをみつける
『楽しい教室づくり入門』復刻版に寄せて
有田学級は、ワンダーランドである!
兵庫県赤穂市立原小学校教頭 /古川 光弘
本書は、今から二十七年前の一九八八年四月に刊行されたものである。有田和正氏が五十三歳の時である。
私は当時、二十六歳。新進気鋭の若手であった。「法則化運動」が全国に炸裂し、若き教員を中心に、教育界が燃えに燃えていた時である。もちろん即座に本書を手に入れ、むさぼるように読み込んだ。付箋がほとんどのページに貼られている。
前書きに書かれているのであるが、本書は有田氏が学級づくりについて本格的に書いた初めての書籍らしい。
今考えてみれば、あの有田氏が学級づくりについて初めて書かれたのが五十三歳とは、驚きである。学級づくりについて自信が持てなかったからだと言う。何と今の私の年齢と同じである。何という謙虚さであろうか、そこがまた有田氏が誰からも愛されたスターである所以である。
今回、明治図書の木村悠さんからお電話をいただき、復刻版が出ることへの応援とその「復刻版に寄せて」の原稿依頼を受けた。素敵な企画だと思った。すぐさま快諾のお返事をさせていただいた。
さて、原稿を書くにあたり、もう一度、本書をじっくりと読み直してみた。
次の言葉が飛び込んでくる。
「今の子どもの一番弱いところは、『問題を発見する力』」
私は、有田氏の授業をよく参観させていただいた。ただ、有田氏ご自身のクラスと、飛び込み授業とを見比べてみると、授業のテンポに明らかな違いがある。飛び込み授業では、リズム感がないのである。
その原因は、明らかに「問題を発見する力」、つまり「ハテナ発見力」の違いなのである。同じ資料を提示しても、有田学級ではすぐさま「ハテナ」が飛び出してくるが、飛び込み授業では、有田氏が投げかけないと授業が進まない。「ハテナ」が出てこないのである。授業が、所々で滞るのである。
有田氏は、それを解決するための一つの戦略として「はてな?」帳を紹介している。
有田実践は、「はてな?」帳なくしては語れない。本書には、「はてな?」帳を通して、どのような「ハテナ発見力」を身に付けさせていくか、実に詳しく解説されている。
また有田氏は、よく「四十五分の授業の中で、一度も笑いのない授業をしたものは、ただちに逮捕する」と言われる。これはまんざら冗談ではない。
有田氏の授業は、ユーモアに満ちている。ほめたり、ゆさぶったり、からかったり……そんなユーモアのセンスも、この本からたくさん学ぶことができる。
とにかく有田学級は、ありとあらゆるところまで楽しさで一杯である。
例えば学級目標からして楽しい。「有田学級アイウエオ」というものである。つまり、「明るく」「生き生きと」「うれしそうに」「笑顔で」「おもしろい内容を」……これだけでも楽しくなってくるではないか。
係活動も楽しい! 低学年でも、「くろねこヤマト」(配達係)「ブックセンター」(本係)「フラワーショップ」(花係)「オロナミンC」(遊び係)など、楽しいネーミングの係が一杯である。こんな係があるだけで、ワクワクしてくる。
有田氏は、すべての子どもたちを何かしらのプロに育てていく。この本では、「○○魔」という表現になっているが、これは後に「○○のプロ」という表現に変わっていく。
本書では、「そうじ魔」「作文魔」「いたずら魔」「調べ魔」「ネアカ魔」「わらい魔」「おしゃべり魔」など、たくさんのプロが紹介されている。特筆すべきことは、「いたずら魔」や「おしゃべり魔」など、あまりほめられることのない子どもたちまで、プロとして認められていることである。有田学級では、すべての子どもたちが大切にされているのである。
本書の最後の方に「紳士録」というノートの紹介がある。これはいい! 友達の良い所に気づいた子どもたちが、その「紳士録」に記録していくのである。
紳士録は、子どもたちの良い事で一杯である。私の学級でも、「紳士・淑女録」と名前を変え、ずっと実践していた。子どもたちの良いことばかりが書かれた「紳士・淑女録」は、クラスの宝物として大切にされた。
私は、自分の学級経営論を「学級ワンダーランド計画」と名付け、教育新聞(教育新聞社)に連載した。私の目指す「ワンダーランド」とは、まさしく有田学級なのだと今更ながらに感じている。
ここに、有田和正先生の著作が復刻された。有田和正先生が、生まれ変わって私たちの前に姿を見せて下さっているようで、本当に嬉しい。
最後になったが、明治図書の木村悠さんの英知に心から感謝を申し上げたい。本当にありがとうございました。
平成二十七年五月二日 有田和正先生一周忌の日に
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