- はじめに
- 1 高学年段階の基礎的な「学習習慣」とは
- /大谷 和明
- 2 「学習習慣」づくりを進める学習集団づくりのポイント
- 一 書くことを中核にした学習集団づくり /松本 明
- 二 教師のイニシアティブを発揮した学習集団づくり /増川 正志
- 3 「学習習慣」づくりの決め手
- 一 意欲・関心を育てる /廣川 徹
- 二 考える習慣を育てる /長谷川 孝
- 三 計画力・持続力を育てる /大谷 和明
- 四 記憶力・集中力を育てる /平瀬 敦夫
- 五 調べる力を育てる /田口 喜義
- 六 宿題の出し方を工夫する /伊藤 夕希子
- 七 思考力・観察力を育てる /長田 修一
- 八 「学習習慣」づくりに役立つテストの作り方・行い方 /宮永 正行
- 4 教科別「学習習慣」を身につけるヒント
- 一 国語科学習でのきっかけづくり /長内 克磨
- 二 社会科学習でのきっかけづくり /大谷 和明
- 三 算数科学習でのきっかけづくり /前田 知彦
- 四 理科学習でのきっかけづくり /三浦 哲也
- 五 芸体教科でのきっかけづくり(体育・図工) /大谷 和明
- 5 家庭における「学習習慣」づくりへのアドバイス(自学の習慣形成へのヒント)
- 一 家庭学習実行のヒント /松本 浩二
- 二 家庭学習環境はこうつくる /古関 仁久
- 三 子どもへのアドバイスの与え方 /柴田 真人
- おわりに
はじめに
「学習習慣」がどれほど定着しているかを調べる方法は、いたって簡単なことである。
担任不在の状況で教室がどうなるか?
この一項目だけで評価できる。
こんな逸話がある。
学習指導に優柔さが見られ、日頃の学習態度もざわつきの目立つ学級があった。その担任が二か月の長期出張で海外研修に出かけることになった。その二か月間は、子ども達はどのように過ごしていたか? 担任がいる時よりも静かに落ち着いて学習していたということである。「教師がいないから、自分達でしっかりしなければならないと自覚したようだ。」というのが聞いた時のオチであった。本当のことなら美談で終わるところだが、果たして現実問題としてこんなことがあり得るのは極めて難しいことだと思われる。ダメな教師ほどいない方がいいということになるだろう。
しかし、実際にはダメ教師・力量不足の教師の経営する教室では、教師の不足を補う子どもがいるどころか、教師の足もとをすくうことをねらっている子どもが虎視眈々としているものである。
美談が存在しないのが現実の教室実態であろう。
学習習慣が身についていない(学級の中にルールが確立していない)学級では、監督する者がいなければ、集団というより「群れ」にちかい状態を呈する。私語をする者、仲良し同士で遊び始める者、一人で勝手気ままなことをする者、ちょっかいを出してからかう者などが闊歩する状態になる。
逆に、学習習慣が身についている(学級内に学習のルールが確立している)学級では、リーダー(学級代表であったり、学習係であったりとその形はまちまちだが)の指示に従って、いつもどおりに落ち着いて時間を送ることができる。
今、自分の学級が自分の理想とする状態と掛け離れたところにある人にとっては、うらやましいような状況も一朝一夕に実現してきたものでは当然ないことがわかろう。そこには、仕掛け、仕組まれて育てられてきた過程が必ず存在する。
高学年になってから学習習慣の形成をしようと思っても、なかなか実現することは難しい。
本書を手にされた方の多くは、そのことが十分にわかっていることだろう。
しかし、「難しい」ことではあるが「無理」なことではないということにも希望をもっていることだろう。
いかなる課題・問題に対しても解決の方策が用意できるものなのである。
「手遅れ」とさじを投げる前に、一つひとつのストラテジーを打つと教師が決意することこそが可能性を生み出すことになるのだ。
その方策を本書では示してある。
2000年1月 北海道フリートーク代表 /大谷 和明
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- 明治図書