- はじめに /横地 清 /菊池 乙夫
- T 「生きる数学」から「総合学習」へ
- 1 「総合学習」とその前身「生きる数学」の定義
- 2 「生きる数学」の時代
- 3 「生きる数学」の復及
- 4 お母さん教室の「生きる数学」
- (1) 模様描き
- (2) 人形作り
- 5 市民講座の「生きる数学」/ 「生活の中の楽しい数学」
- 6 中学2年生の「生きる数学」/ 相似模様
- U 生活単元学習への枇判と克服
- 1 生活単元学習とは何か
- 戦前の概況/ 戦後の混乱/ 生活単元学習の実態
- 2 生活単元学習はどう批判されたか
- 推進派・肯定派/ 現場からの告発/ 数学の体系からの批判/ 米国の歴史的・社会的背景からの批判
- 3 生活単元学習はどう克服されたか
- 体系化を求めて/ 「系統学習」への道
- V 総合学習への足取り
- 1 算数の学習における子ども達の実践活動
- 子どもの認識解明へ/ 子どもの認識主体の教材構成/ 1年;数の分解・合成/ 2年;かけ算九九/ 2年;重さ/ 4年;面積/ 5年;速さ/ 6年;比と割合/ 子ども達の数学的実践
- 2 算数の実践活動から総合学習へ
- 総合学習への第一歩/ 総合学習の実践/ 1年;長さしんぶん/ 2年;ヒマワリを測る/ 3年;壁掛け模様作り/ 4年;ゴミの量はどれだけ?/ 5年;ミニ運動場作り/ 6年;手すき海苔作り/ 総合学習の構成と展開
- W 総合学習に向けて
- 1 総合学習の時代
- 2 生き甲斐としての「総合学習」
- 3 2年生の総合学習「たちあおいで飾ろう/ 長さを生かそう」
- 4 先生の学習会/ 子どもの可能性
- (1) 先生の日時計作り
- (2) 「作る数学」の日時計作り
- (3) 先生の摸様作り,滑り台作り,自動車作り
- (4) 「作る数学」の自動車作り,登山電車作り
- X 総合学習の展望
- 1 情報化時代の総合学習/ 遠隔学習「置物を造ろう」を事例に
- (1) 開かれたクラス間の遠隔学習
- (2) 遠隔学習の機器
- (3) 教育内容に曲面を選んだわけ
- (4) 協同学習「置物を造ろう」の準備の資料
- (5) 協同学習「置物を造ろう」の展開
- 2 人間教育としての総合教育
- 3 総合学習,夢を実現へ
- (1) 刺しゅう遊びから,4年生の総合学習「刺しゅう画」へ
- (2) フラクタルも含めた模様描きの総合学習を
- (3) 海外旅行を総合学習に
- (4) 鼓笛隊とマスゲーム隊
はじめに
この本は,算数を中心とする総合学習について,その役割,由来,方法,そして,今後の展望を述べたものである。この本を資料に,日本の多くの学年・学級で,算数を中心とする総合学習が実践されることを願っている。
小学校を,教科の学習の場とするだけではなく,子ども達が生き生きと活動する生活の場にしたいという願いは,早くから訴えられてきた。算数の場合で言えば,1975年頃から「生きる算数」といったキーワードのもとに,算数を子ども達の生活の問題と結びつけて学習する方法が実践されるようになった。続いて1985年頃からは,算数を他教科の内容と総合して活用し,生活の諸問題を解決していく,総合学習が実践されるようになった。そして,ここ数年来は,中教審の答申を初めとして,総合学習の必要が,繰返し訴えられるようになった。
こうした状況の中で,私どもは,算数を中心とする総合学習を,今日的に整理し,総合学習の全国的な普及に一段と役立てて頂くことを願って,この本を執筆することにした。
この本では,「生きる算数」の時代から始めて,総合学習の今日的なあり方と将来の展開に及んでいる。一方,歴史的に遡れば,総合学習の検討は,第2次大戦直後の生活単元学習の問題から始める必要がある。この本ではそうした検討も加えることとした。
更に,この本では,視野を国際会議にまで広げ,学校も幼稚園・保育園から中学校にまで及ぼし,母親や教師の数学の学習会まで含めて,広範な観点から,総合学習を述べることとした。こうして,小学校での総合学習の役割を,一段と客観的に把握して頂くことを願ったのである。
この本の実践編として「“算数+総合学習”へクロスする授業」を,低学年用,中学年用,高学年用に分けて,刊行する。「“算数+総合学習”へクロスする授業」は,私どもの助言のもとに,小学校の現場で実践された総合学習の成果を基礎に執筆された図書である。是非,全国の先生方が活用され,総合学習の実現に役立てて頂くことを願っている。
なお,この本の第T章,第W章は横地が執筆し,第U章,第V章は菊池が執筆した。内容の全体の調整は横地が行った。
この本の執筆に当たっては,数学教育実践研究会を初め,多くの方々のお世話になった。また,明治図書の江部満氏,樋口雅子氏には,この本の出版に際し,ご教示とご支援を頂いた。これらの方々に,改めて感謝の言葉を述べておきたい。
1997年12月 /横地 清 /菊池 乙夫
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- 明治図書