- はじめに
- Chapter1 クラス全員をアクティブな思考にする算数授業の基礎・基本
- 1 子どもがアクティブな思考をしている姿とは
- 2 「何のために」と考えることを大切にする
- 3 算数授業の4つの楽しさとは
- ―「2・6・2の法則」から子どもたちの階層を考える―
- 4 柔軟な授業観をもつ
- 5 何を教え,何を考えさせるのか
- 6 一人で考える時間を「孤独解決」にさせない
- 7 柔軟な授業展開を選択する
- 8 授業の中には「つながり」をつくる
- 9 子どもの発言を切り捨てない
- 10 最大の理解者になるのではなく,最大の優しさをもとう
- 11 算数科の4つの領域を理解する
- 12 失敗を恐れずに,どんどん挑戦する
- 13 授業には「自分らしさ」を出す
- Chapter2 アクティブな思考に導く算数授業づくり14のステップ&教科書教材実践例
- ステップ1 指導書の単元の目標を確認しよう
- ステップ2 教材開発のために@ 問題を解いてみよう
- ステップ3 教材開発のためにA 内言を書き出そう
- ステップ4 教材開発のためにB 内言をもとにアレンジしよう
- ステップ5 教材開発のためにC 内言は3つに分けよう
- ステップ6 子どもたちの中に課題をつくり出そう
- ステップ7 教育書からネタや実践を探そう
- ステップ8 自分で教材をつくってみよう
- ステップ9 教科書を比較してみよう
- ステップ10 指導言を考えよう
- ステップ11 考えるためのアイテムを考えよう
- ステップ12 授業は単元で考えよう
- ステップ13 授業展開を選択しよう
- ステップ14 板書計画を立てながら本時の流れを考えよう
- チャート図 教材開発の流れ
- 実践編
- 1年
- 繰り上がりのあるたし算
- 時計
- 2年
- 何番目
- 九九表
- 3年
- 表とグラフ
- 分数
- 4年
- 折れ線グラフ
- 計算の工夫
- 5年
- 図形の合同
- 割合
- 6年
- 速さ
- Chapter3 クラス全員をアクティブにするための算数授業づくりQ&A
- Q1 宿題をしてこない子がいます
- Q2 どうしても学力の差や進度の差が出てしまいます
- Q3 板書をすべて写すことのできない子がいます
- Q4 子どもに考えさせる授業をいつ取り入れていいかがわかりません
- Q5 問題が早く解けた子にはどうさせたらいいでしょうか
- Q6 数直線や図がかけない子が多いです
- Q7 毎年同じプリントを使っています
- Q8 めあては書かなければいけませんか
- Q9 ペア学習がうまくいきません
- Q10 振り返りがいつも感想だけになってしまいます
- COLUMN
- 他教科に視野を広げて
- 1つの教科のプロを目指す
- おわりに
はじめに
──算数授業で一番大切にしていることは何ですか?
こんにちは,京都教育大学附属桃山小学校の樋口万太郎です。教職13年目,今年度は4年生の担任をしている,算数の研究を始めて13年目になる算数大好き教師です。
みなさんは,算数は好きですか? 私は子どものとき,算数・数学が大好きでした。問題を解けたときのスッキリ感やワクワク感がたまらなく好きでした。でも,高校数学で問題を解くことができなくなり,挫折を味わいました。そして,算数・数学が嫌いになりました。それでも小学校の先生になると決まったとき,「スッキリ感やワクワク感を子どもたちにも味わってもらいたい!」,そう思い,算数授業を教科の中で一番頑張ろうと思いました。
しかし,現実はそうは甘くはありませんでした。
算数授業に限ったことではありませんが,身体的事情,家庭の問題,学力の問題から,発表が得意な子・苦手な子,集中して取り組める子・取り組めない子,運動が得意な子・苦手な子,歌を歌うのが得意な子・苦手な子,友だち関係が上手くいっている子・上手くいっていない子……,算数が好きな子,そして算数が嫌いな子たちまで……。教室にはいろいろな子がいました。
すべての子どもたちが算数授業で学力差など関係なく,退屈することなく,アクティブに学びに向かい,様々な力を身につけることができたらと私に限らず教師はみな願うことです。この現実と理想に悩み続けた13年間(今も悩んでいます)。悩み続けた中で気づいたことがあります。それが本書で一番みなさんに伝えたいことです。それは,
目の前の子どもに応じた授業づくりをしよう!
ということです。
「え!? 当たり前のことじゃん」と思われたかもしれません。でも,この当たり前のことができていない算数授業が多く見受けられます。自分自身では,当たり前にできていると思っていたことが,他者から見ればできていないということがあります。
例えば,算数には様々なすばらしい指導法や授業形態があります。勤務されている学校には,先輩たちが残してくれたプリント集などがあるかもしれません。そのために,プリントに沿った指導法や授業形態で行わないといけないと思い込んでいないでしょうか? 毎年そのプリントを必ず使用しているといった状況はありませんか? 経験年数が浅いうちは,どのように算数授業をしていいか迷うため,このようなことはいいかもしれません。しかし仕事にも慣れ,授業の仕方がある程度わかってきたならば,それに固執するのではなく,それぞれの子ども・クラスに適した指導法や授業形態を用いるべきです。
また,自分がよいと思っている指導法や授業形態を人に押しつけていませんか? 自分がよいと思っている指導法や授業形態以外を否定していませんか? 私自身がそうでした。
こういった状況にあるとき,目の前の子どもに応じた授業がつくれているのかには疑問符がつきます。目の前の子どもたちを置き去りにし,教師の思いだけの授業になっていることがあるからです。
目の前の子どもに応じた授業をつくるというのは,決して当たり前のことではなかったということ,自分自身はできていなかったということに,私は様々な出来事から気づきました。
次期学習指導要領では,「主体的・対話的で深い学び」「資質・能力」「カリキュラム・マネジメント」「プログラミング教育」など,様々なキーワードが出てきています。様々なキーワードから私が思うことは,
目の前の子どもに応じた授業づくりをしよう
現在の授業に満足せずに目の前の子に応じた授業へと改善をしよう
というメッセージです。本書で伝えたいことと同じメッセージです。
そこで本書では,目の前の子どもたちに応じた授業づくりの方法を私のエピソードを交えながら紹介していきます。
Chapter1では「クラス全員をアクティブな思考にする算数授業の基礎・基本」として,クラス全員をアクティブな思考にするために考えてほしいこと,授業づくりのための核となることを書いています。
Chapter2では「アクティブな思考に導く算数授業づくり14のステップ&教科書教材実践例」として,私が授業をつくるときの実際に行っている手順や方法,そして,その手順や方法をもとに実際に授業した実践について書いています。
Chapter3では「クラス全員をアクティブにするための算数授業づくりQ&A」として,若手の先生からよく質問されることについての解決法をまとめました。どれも樋口学級で行ったことがあることばかりです。こんな解決法があるんだと自分の選択肢の1つにこれらの解決法を加えてください。
「算数授業で一番大切にしていることは何ですか?」という問いに,みなさんはどのように答えるでしょうか。教職年数,年代,クラスの状況などによっても答えは変わります。私が一番大切にしていることは,本書の中に書いています。自分自身の考えと比較しながらお読みください。
本書を手に取られたみなさんには,「今のままの算数授業ではダメだ!」「子どもがなかなかアクティブにならない!」「算数授業に悩んでいます」といった「目の前の子どもに応じた授業をつくりたい」という思いがあることでしょう。ページを開いて,目の前の子どもに応じた授業づくりの方法を一緒に考えていきましょう。そして,みなさんにとって算数授業で一番大切にしていることを改めて発見してみてください。みなさんの授業づくりに少しでもお役に立てれば,幸いです。
/樋口 万太郎
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