- はじめに
- 1 硬筆書写
- 〜学力の基礎の基礎
- 1 基本的な学習習慣も養える(硬筆書写指導の意義)
- 2 そのまた基礎(姿勢・鉛筆の持ち方)
- 1 姿勢
- 2 鉛筆の持ち方
- 3 指導の工夫
- 1 字形のコツ
- 2 連絡帳の活用
- 2 計算
- 〜即効性のある処方箋
- 1 とりかかりやすい計算の指導(計算指導の意義)
- 2 中途半端はあだになる 百マス計算
- 1 五〇〇〇問(一〇〇問二回を二五日)で手応え
- 2 百マス計算がきっかけで変わった佐川君
- 3 お絵かき計算ワーク
- 3 計算指導の工夫
- 1 補助数字(くり下がりはどうするか)
- 2 たまごとさくらんぼ(くり上がりの補助記号)
- 3 指の使い方も教える
- 4 おはじきの効用
- 3 音読
- 〜意外と奥が深い世界
- 1 まずは音読から(音読指導の意義)
- 2 一人一人が読めるようになるために
- 1 子どもの状態を知る
- 2 音読の指導
- 3 説明文の音読(一年)
- 1 説明文の音読
- 2 指導方法
- 3 「どうぶつの赤ちゃん」(光村・一年)から
- 4 その他
- 4 漢字
- 〜その楽しさを伝えたい
- 1 くり返しだけではない(漢字指導の意義)
- 2 練習方法再考(宿題ノート)
- 1 小テストの結果から個人の分析へ
- 2 読みがな先行・自分テスト方式
- 3 さかのぼりくり返し
- 4 成長する小テスト
- 5 佐川君の急成長
- 6 やはりくり返しだけでは足りない(字源の指導へ)
- 3 字源の指導
- 1 新出漢字指導の時点でまず指導
- 2 一年生から漢字字典を
- 4 漢字の授業(六年) 「莫」でつながる字
- 1 字源の授業への二つのこだわり
- 2 「謨」が読めますか?
- 5 読み書き計算を豊かな学力へ
- 〜情報のインプットとアウトプット
- 一 読書
- 1 読書の意義
- 2 絵本の楽しさを知る
- 3 クイズづくりで読書に誘う
- 1 「どうぶつの赤ちゃん」(光村一年・下)(二月三日〜二月一八日)
- 2 クイズづくりの指導
- 3 授業の後で
- 二 俳句〜言語感覚を磨く
- 1 俳句指導の意義
- 2 一年生にも俳句〜ポケモンを使って
- 3 六年生の授業〜型を使って
- おわりに
読み書き計算の可能性
この本で言おうとしていることは、次の二点である。
・読み書き計算の取り組みは、子どもの集中力や根気を育てることにつながる。また、子どもに自信をつけ、積極的に学習に向かうようになるきっかけにもなる。
・読み書き計算の取り組みは、まだまだ工夫の余地がある。
荒れの手だてとして
子どもが読み書き計算の力をつける過程で獲得するもの(集中力・根気・自信など)は、読み書き計算の力と同じくらい大切なものだと私は考えている。
本文中に何度も登場する佐川君は、四月の授業ではほとんど集中することがなかった。しゃべり続け、すぐに立ち歩いていた。ちょっと気に入らないことがあると、友だちにも口汚くののしり、席が隣になった子は毎日のように泣かされていた。
そんな佐川君が変わり出したのは、読み書き計算の取り組みがきっかけだった。計算が少しずつできるようになるにつれ、集中できる時間も徐々に長くなっていった。漢字は二学期になって急成長した。そのころから少しずつ友だちとの関わり方も変わっていった。
今、子どもの荒れや学級崩壊が教育現場の大きな課題になっている。読み書き計算の取り組みは、その一つの手だてになるのではないだろうか。
誰でもできるちょっとした工夫
新任のころ、読み書き計算の練習方法は、ただくり返すだけだと思っていた。いざやってみると、いろいろと工夫の余地があることに気づいた。
一〇までの足し算が、うまくできない一年生に「おはじき」とよんでいる紙を使わせると、かなりスムーズにできるようになる。本書では、そんな誰でもできるちょっとした工夫をならべている。すべて私が実際にやってみたものである。
それぞれの分野の専門家やベテラン教員から見ると、とるにたらない当たり前のこともあるかもしれない。しかし、それだけに名人芸が必要なものは一つもない。
なお最後に、読書と俳句についてもふれている。読書と作文(俳句は短作文の一種と考えている)は、情報のインプットとアウトプットでもある。読み書き計算を支えるもの、あるいはより豊かな学力に導くものとして、読書と俳句にも章をとることにした。
2000年3月 /岡 篤
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- 明治図書