- はじめに
- 第1章 造形的な見方・考え方を働かせる 指導のポイント10
- 1 新学習指導要領のポイント―3つの柱
- 2 授業の流れを見直す
- 3 3年間を見通して題材を組み立てる
- 4 生徒自身に主題を生み出させる
- 5 発想を広げさせる
- 6 構想を練らせる
- 7 知識・(創造的な)技能を高める
- 8 他教科と関連付ける
- 9 学びの空間としての美術室・校内掲示を工夫する
- 10 社会とつなげる―授業を美術室だけで完結させない
- 第2章 造形的な見方・考え方を働かせる 題材&授業プラン36
- 絵や彫刻
- 絵や彫刻の題材 実践のポイント
- 1 植物の生命力を感じてみよう[1年]
- 2 石ころコピーに挑戦![1年]
- 3 私のお気に入りの風景[1年]
- 4 感情の種から花が咲く[1年]
- 5 ズートピア―私の性格・行動って,どんな動物!?[1年]
- 6 ◯◯中学校,妖怪現る!―私の中にいる妖怪[1年]
- 7 ライトドローイング[全学年]
- 8 気持ちの灯り[1・2年]
- 9 光と影をつかまえろ![2年]
- 10 新たな一歩を踏み出す靴[2年]
- 11 想いの形―私の心の奥にあるもの[2年]
- 12 ピクシレーション―人間界を超えてゆけ[2・3年]
- 13 小さな世界の物語[2・3年]
- 14 りんごの兄弟―絵本『りんごかもしれない』より[全学年]
- 15 15歳の存在証明―今の私をかたちづくること[3年]
- デザインや工芸
- デザインや工芸の題材 実践のポイント
- 16 アートなカードで気持ちを伝えよう![1年]
- 17 君の名は―1文字で「自分」を表すことができるか!?[1年]
- 18 はじめまして,○○です!―ひと目で伝わるマークをつくろう[1年]
- 19 展覧会をポスターで告知しよう![1・2年]
- 20 ある惑星の文字をつくる[全学年]
- 21 ふるさと再発見!―地域のよさを和菓子に表そう[2年]
- 22 ご当地キャラクターで地域のいいとこ発信しよう![2年]
- 23 ふるさとの自然を模様に―生活を彩る自然の美学[2年]
- 24 ふるさとをパッケージング![2年]
- 25 橋を創造せよ!―夢の街プロジェクト[2・3年]
- 26 もし私の街に博物館があったら…[3年]
- 27 ご当地オリジナルドリンク―地域のよさを全国へ![3年]
- 28 紙の可能性を追求しよう!―1つのモノから新たなモノへ[全学年]
- コラム 授業の「その先」へ…
- 鑑賞
- 鑑賞の題材 実践のポイント
- 29 有名絵画 未来の目撃者は君だ![1年]
- 30 あなたならどうする?[1年]
- 31 何がいいの? 伝統工芸の秘密[2年]
- 32 世界建築探訪―こんなところにすごい建築![2年]
- 33 デザインの解剖[2年]
- 34 助けて! ピクトさんが困ってる![2年]
- 35 ゴッホの人生 あなたならどう生きる?[3年]
- 36 中学校最後の鑑賞―表現は何のために?[3年]
- おわりに
はじめに
私が教師になりたての頃,日々の仕事に追われ授業準備もままならない日々を過ごしていました。自分が受けてきた美術の授業を思い出してやらせてみたり,大学時代に受けた課題をそのまま中学生にやらせたりしたことだってありました。コンクールで賞を取るために必死に技術指導したこともあります。でも,そのときの子どもたちの表情は…。私は「美術の教育」に一生懸命だったと思います。しかし美術は,大人の考え・感じ方を子どもの手を使って形にする教科ではないと,今改めて思います。
美術の時間とは子どもにとってどんな時間なのか,この題材は何のためにあるのか,美術を通してどんな力を付けるのか,AI時代を生きる子どもたちにどう生きてほしいか。指導者自身がこれらを深く考え,「美術の教育」ではなく,「美術による教育」をしていくことが今後必要なのではないでしょうか。目の前にいるのは子どもではなく,「未来の大人」だという意識で授業をしていかなければなりません。
(右の図は,中学2年生に「美術の時間はあなたにとってどんな時間か」を聞いたものです。美術の時間とは,子どもにとって単に絵を上手く描いたり,つくったりする時間ではないことがわかります。)
この本で紹介した題材は完璧なものではありません。本書を手にしてくださったあなたは,目の前の子どもにどんな力を身に付けさせたいですか。どのように成長してほしいと思っていますか。それを実現する授業のためのヒントになれば幸いです。また,授業をやりっぱなしで終えず,「もっとこうすれば,こんな風にしたら子どもたちの活動や思考が変わったかもしれない」と振り返る癖をつけてほしいと思います。子どもがもともともつ力を引き出し,さらに伸ばしていくことが私たちの仕事であり,その先には豊かに生きていく力を付けさせたいという思いにつながります。
時代はものすごいスピードで変化を続けています。そんな中,これまでの美術教育で本当によいのか,これまで受け継がれてきた題材は何のために存在するのか,そういったことを検証しながら新たな価値観で授業をつくっていく責任が今の教師にはあると考えています。自分なりの問いを立てて,自分なりの方法で,自分なりの答えにたどり着く。とにかく手を動かし,やってみて,失敗し,どうすればうまくいくのか悩み,また手を動かす。自分にしかできない表現や表したいことが表せたときの達成感は何よりも嬉しいことです。少ない時数の中で「自分ならどう授業するだろう」と考えるきっかけになればと思います。
2019年7月 / 田中 真二朗
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