- まえがき
- T 黄金の三日間授業準備ノート
- 一 情報を集め、貼る。そして授業の形で発問指示を書き込む
- 1 三種類のノート/ 2 授業のために/ 3 第一時に向けて/ 4 第二時から
- 二 一年間の授業システムを作る「準備ノート」
- 1 出会いの一時間のための情報収集/ 2 授業の備品のチェックリスト/ 3 シナリオ作り/ 4 隙間時間の小ネタ
- U 黄金の三日間で子どもをつかめ
- 一 やんちゃも真面目も活躍できる授業をする
- 1 一時間目から授業をする/ 2 システムを作る
- 二 黄金の三時間では勉強の仕方を教える
- 1 黄金の三時間は勉強の仕方を教えながら生徒の力を見抜く/ 2 指示通りにやればできる授業システム/ 3 黄金の三時間の授業プラン
- 三 黄金の三日間以降、失速しないための授業システム
- 1 「失速」しない方法は、授業をシステム化することである/ 2 現在効果を上げている授業システムはこれだ/ 3 仲間の力を借りることである
- V 授業のルール・システムはこう作る
- 一 これが私の七つ道具:授業編入念な物の準備で授業を安定させる
- 1 教師が使う物授業で使うアイテム/ 2 生徒が使う物
- 二 これが私の七つ道具:書写編システム作りと添削で、上達させる
- 1 貸し出し用道具を準備する。忘れ物に対応するシステムを作る/ 2 道具の置き方を決め、机周辺をすっきりさせる/ 3 字の整え方のコツを教える。添削して回る
- 三 趣意説明は短く端的に!
- 1 鉛筆指導の趣意説明/ 2 ノート指導の趣意説明/ 3 音読指導の趣意説明/ 4 暗唱指導の趣意説明/ 5 視写指導の趣意説明/ 6 趣意説明は繰り返し行う
- 四 アドバルーンを打ち落とし、荒れを予防する
- 1 荒れへの対応「三つの原則」を使いこなす/ 2 模擬授業で授業の基礎基本を身につける
- W 生徒の学力を把握するための手
- 一 学力調査は仕事人としての「務め」である
- 1 スタート地点の学力を明確にしておくから、伸びを説明できる/ 2 中学入学時学力調査から見えた、学力と指導法の驚くべき実態/ 3 学力調査はプロとしての「務め」である
- 二 生徒の学力=視写スピードに表れる
- 1 「なぞる」ことが作文の第一歩/ 2 「視写」の到達目標とは何か/ 3 到達目標は一〇分間で視写ができる文字数/ 4 定期考査にも視写の問題を出題する
- 三 高校入試に向けた語彙力アップも毎日の授業から
- 1 辞書/ 2 語彙を増やす授業の方法/ 3 定期考査にも語彙の問題を出題する
- X 授業のパーツ・年間計画
- 一 フラッシュカード年間計画テンポと知的な組み立てで生徒を巻き込む
- 1 フラッシュカードのシステムと留意点/ 2 フラッシュカードには知的な問題を書く/ 3 フラッシュカードは知的な組み立てにする/ 4 フラッシュカードは生徒に成功体験を保障する
- 二 詩文暗唱年間計画
- 1 詩文の暗唱は国語の授業の必須課題だ/ 2 授業中の五分間/ 3 暗唱テスト/ 4 暗唱詩文年間計画/ 5 暗唱の効果
- 三 視写年間計画四月の指導とちょっとした時間の有効活用がカギである
- 1 授業時間に視写のパーツで得られる効果はきわめて大きい/ 2 四月に連続して取り組む時間、定期考査と学校行事を考慮した年間計画/ 3 国語の勉強の仕方を身につけさせる視写指導
- Y 複数で学年を担当するときのポイント
- 一 国語を複数の教師で教えるとき、私はここを打ち合わせる
- 1 相談する心、素直に聞く態度/ 2 四月:年間の指導計画=定期考査との関連/ 3 四月:教材選定/ 七月:評定/ 4 最後は笑顔とちょっとした心遣い
- 二 私はここを打ち合わせる
- 1 「年間指導計画」の素案を作る/ 2 「教材研究」の成果をお裾分けする
- 三 校内サークルも夢じゃない、模擬授業交流のコツ
- 1 女教師はなぜ改善点が言えるのか/ 2 模擬授業のイメージ/ 3 模擬授業で授業を見る観点/ 4 自分の足もとの模擬授業
- Z 今年こそ分析批評に挑戦!
- 一 三年間計画的に指導する
- 1 「分析批評の授業」の計画/ 2 枠組みを教える/ 3 討論の授業をめざして
- 二 主題を見つける技術を身につけさせる
- 1 主題を見つける方法を一つずつ教える/ 2 対比から主題を見つける方法を習得させる「分析批評ワーク」を活用して授業する/ 3 対比から主題を見つける方法を習熟させる「わたしを束ねないで」
- 三 定番教材を分析批評の観点から斬る
- 1 定着教材を斬る分析批評の観点はこれだ/ 2 高一『羅生門』の授業/ 3 高二『山月記』の授業
- [ 選択授業を向山型で構成する
- 一 作文の技術を習熟させるなら「時間」「場所」「物」を与えよう
- 1 「時間」「場所」「物」を与える/ 2 「時間」を与える/ 3 「場所」を与える/ 4 「物」を与える
- 二 TOSS教材活用プラン
- 1 TOSS教材年間プラン/ 2 「五色名句百選かるた」を使った授業……「春」から/ 3 国語スキルの活用/ 4 ノートは絶対TOSSノート
- 三 行事を利用する選択授業プラン書写編
- 1 年間の大まかな流れ/ 2 年間プラン/ 3 生徒が使用する教材教具等/ 4 作品作成の具体案
- \ これで参観日も怖くない
- 一 参観日こそパーツで組み立てる
- 1 参観授業は、一時間完結の教材をパーツで組み立てる/ 2 フラッシュカードで活気づける/ 3 保護者も一緒に考える詩の授業/ 4 五色百人一首でリラックス
- 二 参観授業で追試したい授業クイズ風編
- 1 口に二画/ 2 オリジナル漢字を作る/ 3 一字題一行詩
- 三 保護者をも熱中させる教材を選択する
- 1 参観日の授業では、生徒一人ひとりが活躍する場を創出するのが原則である/ 2 保護者をも授業に引き込む教材を選ぶ/ 3 「あれども見えず」を発見させる発問をつくる
- ] 一〇年後まで使える教材研究ノートの作り方
- 一 カテゴリー別に一冊ずつノートを作る
- 1 基本論文・先行実践ノート/ 2 研究論文ノート/ 3 授業パーツノート/ 4 授業ノート
- 二 一〇年後まで使える教材研究ノート作りのコツ
- 1 ノートに背表紙(タグ)をつける/ 2 ノートを使い分ける/ 3 教科書も教材研究ノートにしてしまう
- 三 三つのステップで授業の設計図を書いていく
- 1 三つのステップで授業の設計図をノートに書き出す/ 2 ノートの作り方@先行実践を集める/ 3 ノートの作り方Aゴールを見据えて、指示・発問を決める/ 4 ノートの作り方B板書計画を立てる/ 5 作ったノートの活用法こそがポイントである
- 四 一〇年後まで使える教材研究ノートの作り方
- 1 ノート作り@どんどん貼るノート/ 2 ノート作りAどんどん書くノート/ 3 授業作り各時間の細案/ 4 一〇年もののノート作り/ 5 ノートの整理
- 五 計画は年初に立て、目に見える形で教材研究を進める
- 1 年間指導計画の作成/ 2 TOSSノートで始める教材研究/ 3 ノートは見開き二ページで一時間分
- あとがき 教師修業を共に
まえがき
「学び続ける教師だけが、生徒の前に立てる」TOSS代表、向山洋一氏の言である。
平和な学校にいて、日常に埋没すると、「学び続ける」ことから逃げてしまう。「この程度でいいかな」と現状に満足してしまう。子どもたちだけに努力を強いて、自分は安穏としていることに慣れてしまう。
現場にはそういう教師がたくさんいる。学んでいない。たとえば、特別支援の話などほとんど通じない。管理職でさえ、「ああいうわがままな子どもには、『硬派』の生徒指導でいいんだよ。一回泣かした方がいいんだ」などと馬鹿なことを言う。
学び続けていない教師の言葉には、力がない。子どもの心にずしんと響くような話ができない。自分の発する言葉が上滑りに滑っていくような感覚を、みずから持てればまだいい。大抵は、子どもが言うことを聞かなかったり、学力が上がらなかったり、指示通りに動かなかったりすることを、子どもや家庭のせいにして終わりである。
だから、関係が良くなることはない。そういう教師が信頼と尊敬を勝ち得ることはない。「普通」の集団を荒らしてしまう。「荒れた」集団を、いっそう荒らしてしまう。損をするのは、子どもたちである。
荒れた中学校の現状は、見ただけではわからない。小学生と中学生は、違う。体格も、精神も違う。外部からの想像はあくまでも想像の範疇を出ない。毎日毎日、教師がどれだけ神経をすり減らすかは、その立場に立ってみなければわからない。こうしている今も学級・学校の荒れと格闘している仲間がいる。教室に放火され、牛乳を撒き散らされ、学級通信を目の前で破り捨てられ、手を上げられ、夜間の「パトロール」で帰りが九時一〇時という人もいる。いつ倒れてもおかしくない状態だ。
中学校から荒れる、という子は少ない。ほとんどが、小学校時代にその「芽」が出て、それが思春期(第二次反抗期)と重なって表出する、というケースだ。明らかな反抗挑戦性障害と診断される子も、中学校では少なくない。二次障害だから、薬は効かない。人が人を救うしかない。
私たち教師にできることは何なのか。荒れを一ミリでも二ミリでも落ち着かせ、事態を正常化させていく。目の前の子ども一人ひとりを育んでいく。そのためには、どんな考え方と方法とが必要なのか。
解決の大前提は、教師自身が学び続けることである。
たとえば、向山型国語である。一般に為されてきた「国語教育」とは、次の二点で明確に画される。
一 子どもに国語の力がつく。
二 子どもが国語の授業を好きになる。学ぶことを好きになる。
保護者からすれば、国語の授業で一、二が実現するのは「当たり前だ」となる。だが、現場の事実はそうなってはいない。この二つを実現している教師は、思いのほか少ない。一も二もない国語教育とは、何なのか。
学ぶべきものをもう一つ挙げるならば、特別支援教育である。特別支援教育のセミナーに参加する、『特別支援教育教え方教室』(明治図書)をはじめとした書籍を読むなどして、知識を得、対応技術を知ることである。その上で、可能ならば、サークルで何度も模擬授業を重ねて、技術を「技能化」することである。
教師が学び、対応力に磨きをかけることが、「すべての」子どもの心を救うことになる。
学校の荒れは、授業で鎮静化できる。勉強嫌いな子どもを勉強好きにするのも、授業でできる。
TOSSは「子どもの事実」を何よりも大切にする。だから、具体的な修業論があり、修業方法がある。その方法を忠実に行っていけば、教師の力量が上がる。教師の力量が上がれば、子どもの学力も、精神力も向上する。
子どもの成長は、教師の成長に規定される。
これもまた、向山氏の言である。このことを身に沁みて知っているからこそ、TOSSに集う教師は平日も休日もなく、真摯に学び続け、実績を積み上げ続けている。
本書は、子どもたちに国語力を育むために日々学び、さまざまな試みを実行し、成果を挙げている教師たちからの提言である。年度初めに、一年を見通した「国語科授業」の準備をより効率的に行うための「技」を収録した。
なお、向山型国語の全体像については『向山型国語教え方教室』(明治図書)を参考にしていただきたい。
この一冊が、読者の皆様の、日常の授業の向上に資すると信じる。
二〇〇九年一月 TOSS中高向山型国語授業研究会代表 /長谷川 博之
綿密に準備してあれば、子どもも安心だし、教師も楽だと思いました。
これだけの準備を行って生徒の前に立つから、子どもたちを褒めていくことができるのですね。分析批評の授業、今年は挑戦してみたいです。
「授業をパーツで組み立てる」という言葉には驚き、納得しました!自分も実行していきます。
昨日、餞別のお礼に新任2年目の国語の先生にプレゼントしてしまいました。
できるだけ早い再版をお願いしたいです。
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