- まえがき 次世代の黒板
- T ITを効果的に活用する授業設計
- 1 ITで授業の「創造力」をアップする
- ■ITで新しい授業を創造しよう
- 2 IT活用は授業設計にあり
- ■デジタルコンテンツ 見せすぎちゃ,だめだめ!
- ■見せすぎで意欲半減?!
- 3 y=axでコンテンツを整理しよう
- ■a=「子どもの興味・関心」を高める
- ■x=「入力情報」を増やす
- 4 授業のねらいに応じて情報をしぼりこもう
- ■静止画教材はこう作る
- 5 あえて不完全に加工した情報を提示しよう
- ■勇気をもって音声を消す!
- 6 実体験からうまれる「どうして?」を引っぱり出そう
- ■体験で学んだことをスライドショーで発信しよう
- 7 見せれば分かるわけではない
- ■デジタルとアナログ(操作活動)の併用
- 8 映像の中身と順番にこだわる
- ■映像を見れば,できる?
- ■鑑賞は少しずつ見せよう
- 9 映像を見せてはならないとき
- ■成功の秘訣は『5秒』
- ■ここがコンテンツの『出番!』
- U 授業設計のための七つの視点
- 1 教科の本質を外さない「七つの視点」を意識しよう
- ■TV会議─活動の意欲づけだけじゃ,もったいない!
- 2 「興味・関心を高める教材」を活用しよう
- ■惑わせる教材提示で知的好奇心を高める
- ■アニメーションでイメージをつかむ
- ■ビデオクリップで知的好奇心を高める
- ■英語でコミュニケーション!
- 3 「明確な目標」を設定しよう
- ■新種目の目標設定はビデオクリップで!
- ■ビデオクリップでテクニカルポイントを探る
- ■意欲倍増! 動くおもちゃのビデオクリップ
- ■文字だけでは正しく伝わりにくい
- 4 「学習の見通し」をもたせよう
- ■スライドショーでイメージをもたせる
- 5 「思考を深化させる活動」を組みこもう
- ■自分の考えを,画面上で表現する
- ■速さを距離と時間で表す
- ■デジタルで試行錯誤を繰り返す
- 6 応答的な環境をつくろう
- ■TV会議は何のために?
- 7 学習者間の積極的な交流を促そう
- ■楽しいプロジェクト学習の30秒CMづくり
- ■「算数のまとめ」は「プロジェクト学習」で
- 8 進歩の跡を明確にしよう
- ■デジタルストーリーテリング
- V 子どもがITを使う
- 1 「調べ方」を指導する
- ■インターネットを使ってレポートを書く
- 2 デジタル表現における学習のプロセス
- ■スライドショーをつくろう
- 3 映像を鑑賞学習に役立てよう
- ■美術作品鑑賞を楽しく
- 4 試行錯誤させながら本物にこだわらせよう
- ■ポスターの秘密を探ろう
- 5 ルーブリックで自己評価力を育てる
- ■ルーブリックと自己評価カード
- W 教師がITを使う
- 1 学校のIT活用推進はメリットを示すことから
- ■教師がプロジェクト学習を経験しよう
- 2 ITを授業に直結させる職員研修をしよう!
- ■研究のまとめと研修を一度に行おう
- 3 プレゼンテーションのための三つのポイント
- ■聴衆に変化をもたらそう
- 4 コンピュータ係の活動をデザインする
- ■教室に置きたい便利な道具
- 5 教科書の情報をばらばらにする
- ■図工の教科書は切り抜いて使う
- 6 消す映像,残す映像
- ■スクリーンを「考える場」にしよう
- 7 自己モニタリングで自分の成長を実感させよう
- ■デジタルカメラの動画で分かる! 技のコツ
- ■動画教材はこう作る
- 8 さまざまな機器を授業で活用する
- ■実物投影機で授業が変わる
- ■光の中で描き写す大型共同絵画の下絵
- 9 授業力アップのためのブログ活用
- ■ブログに教師の「学び」を記録する
- あとがき
- * 本企画のまんが部分は,学研『NEW教育とコンピュータ』2003年7月号〜2005年3月号連載「まんがで読む! IT活用授業のつくりかた」を一部改変したものです。
まえがき
次世代の黒板
■欠落からの発展
マルセル・デュシャン(Marcel Duchamp 1887-1968)の遺作「(1)落ちる水 (2)照明用ガス,が与えられたとせよ」では,木の扉にあいた孔から制作された情景を覗き観るようになっている。扉の中に隠されたものをどうしても知りたくなる。しかし,その扉の孔を覗くためには,わざわざ飛行機に乗って,フィラデルフィア美術館に行かなければならない。
「触るな」,「開けるな」の張り紙があると,むしろ気になる。浦島太郎も「絶対に開けないでください」と念を押された玉手箱を開けている。「絶対に……」ではなく,「気が向いたら開けてもかまいませんよ」と言われていれば,浦島太郎は急におじいさんにならずに済んだかもしれない。
テレビドラマを見ていると,いいところで「つづく」になる。番組制作者の罠と知りつつ,次回が待ち遠しい。しかし,またいいところで「つづく」になり,次を待たねばならない。
上の話はすべて「不十分」という状態から変化していく様子である。何かが欠けている。そこで,「居心地が悪い」→「居心地をよくしたい」→「安心したい」,そしてそのためには「もっと知りたい」という欲求が出た結果である。
■不十分から生まれるもの
「人間は飛べない」という概念から「鳥のように飛びたい」という欲望になり,今の飛行機がある。「○○でない」「○○できない」という現実から「○○したい」という欲望や期待が生まれ,「○○する」という目的や動機になる。「不十分」とは文字からするといかにも心許ない言葉だが,「不十分」から生まれる人間の心の芽生えや動きや揺らぎは「十分」からは生まれてこない。提示されるものが「不十分」であればこそ,さまざまな反応が返ってくる。
下の写真を見て,読者は何を連想するだろうか。単なる風景の一コマにしかすぎないが,人それぞれによって感じ方が異なるに違いない。ちなみに「この写真から何が分かりますか」という発問をしたら,読者はどう答えるだろうか。
(写真省略)
■封印された文明
筆者が小学生のとき,テレビが各教室に設置された。ワクワクした。しかし,そのテレビは施錠された観音開きの戸棚の中に厳重に収められ,めったに開くことはなかった。数回だけ教育放送を見たことを覚えているだけである。当時,筆者のような小僧が,学校備品のテレビをおいそれと触らせてもらえるわけではなく,今のコンピュータよりも高級品だった。しかし,せっかく導入された高価な視聴覚機器が戸棚に閉じ込められたままでは役に立つはずもない。使い方では視聴覚機器としてすばらしい使い方もあったはずだ。遠い地域の情報や教科書の写真だけでは得られない知識も与えられたはずである。しかし,テレビは封印されたままで,テレビがもつ本来のそのすばらしい能力や機能を発揮することはなかった。
(図省略)
■次世代の黒板
現代はコンピュータ,プロジェクター,ソフト,インターネットなどなど,高度な機械や道具や環境が入手できる時代になってきた。……とすれば,授業のあり方も変わってきてもよい時代が来たのかも知れない。もちろん,黒板がなくなるわけはないが,黒板の上手な使い方,新たな使い方が出てきてもおかしくはない。そして,現在の黒板に代わるIT黒板が出現するときは,そう遠くはないかもしれない。
教師が子どもたちに提示するものが意図的に「不十分」であれば,子どもたちには興味・関心が芽生えるはずである。本書では,「見せすぎて」失敗した例や「隠す」ことで子どもの興味関心を引く授業事例を掲載し,次世代の黒板に期待を込めている。
■IT IS IT.
ITを使った授業は近年数多くあるものの,コンピュータ,プレゼンテーション,インターネットを使っただけのものが氾濫している。そこで,本書ではITを活用した授業の目標・観点,授業事例,失敗例を掲載し,教材作成マニュアルを付録とした。特に,ITを活用した授業を積極的に実施している現場教師が執筆し,それぞれのノウハウを集めた。
コンピュータやインターネットを使えるだけでは,まさに封印されたテレビと同じである。ITを子どもたちの学習に効果的に活用すること,それこそ IT −It is IT.−である。
本書を利用して,多くの教師が効果的なIT活用をした授業を実施することを願っている。
/塚本 光夫
また、本書には
失敗事例も掲載されており、
それをどう克服するのか示されていて、
大変読みやすい。
視聴覚主任、情報教育主任には
おすすめである。