- まえがき
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[1]
- 「お母さんは病気だからこのくらいのがちょうどよい」
- ―失敗に打ちひしがれている子どもを元気づける言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 子どもの気持ちに応える言葉/ 3 子どもの作文に学ぶ親の愛/ 4 自尊感情を育てる言葉/ 5 家庭の中で自分の存在を感じさせる/ 6 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[2]
- 「桜の花が咲いたら春が来るのよ」
- ―待ちこがれる気持ちに応えて明日を楽しみにさせる言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 待ちこがれる気持ちに応える言葉/ 3 つらいことを楽しくさせる言葉/ 4 くらしを楽しむことを教える言葉/ 5 子どもの心を動かす親や教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[3]
- 「弟子になるってどういうことなの」
- ―夢やあこがれをはぐくみ、その実現を支援する言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 夢やあこがれを確かなものにする言葉/ 3 夢やあこがれの実現を支援する言葉/ 4 みなさんのおかげ/ 5 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[4]
- 「この種をまくと来年はもっと大きなカボチャができるよ」
- ―子どもの自発性・能動性を引き出す言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 実現の可能性を予感させる言葉/ 3 物と言葉の相乗効果/ 4 自ら考え行動する子どもを育てる言葉/ 5 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[5]
- 「少しでも近づきたいね」
- ―子どもの自立心を後押しする言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 子どものものの見方や考え方に感心する/ 3 子どもの自立を後押しする言葉/ 4 身近な大人を自立のモデルにする/ 5 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[6]
- 「ナイス・トライ。よーし、それでいい」
- ―小さな成功体験を重ねて自信や意欲をはぐくむ言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 失敗を恐れさせない言葉/ 3 一人一人のよさや可能性に応える言葉 / 4 活動を継続させる言葉/ 5 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[7]
- 「勉強するということは毎日が楽しくなるということ」
- ―子どもの悩みに応えて、よく学ぶ子どもを育てる言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 子どもが納得する言葉/ 3 今、学んでいる人の言葉/ 4 肯定的・能動的な学習観を育てる言葉/ 5 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[8]
- 「ほんとうだ。大変なことだったものね」
- ―心を解きほぐし、素直に表現できるようにする言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 協力、勇気、正義を育てる言葉/ 3 あたたかさから生み出される言葉/ 4 素直に表現できるようにする言葉/ 5 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[9]
- 「お母さんは助かるなって思っているよ」
- ―意味付け価値付けて子どもを元気にさせる言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 子どもの行為への共感と承認の言葉/ 3 子どもにとっての支援/ 4 意味付け価値付けて子どもに返す言葉/ 5 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[10]
- 「町にはほかにどんな予約があるだろう」
- ―知的好奇心・探究心を刺激して確かな理解に導く言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 知的な世界を広げ深める言葉/ 3 知的好奇心・探究心に点火する言葉/ 4 「確かな学力」を身に付ける/ 5 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[11]
- 「ほんとうだ、今日は特別だ」
- ―満足感・充実感を味わわせ、美意識を育てる言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 子どもの美意識を育てる言葉/ 3 子どもの欲求には段階がある/ 4 晴れがましい言葉/ 5 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[12]
- 「あれ、あれ、手が冷たいからだね」
- ―やればできる自分に気付かせる言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 自分にとって嬉しい先生の言葉/ 3 自分づくりへの道案内と振る舞い/ 4 子どもをよく見て取る/ 5 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[13]
- 「それも嬉しいけど、やっぱりアヤミが育てたんだから味を確かめてみないとね」
- ―自己関与意識をはぐくみ自立的な子どもを育てる言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 自己関与意識を引き出す言葉/ 3 子どもの自己変革を促す言葉/ 4 本物・本当の味を知る/ 5 自分自身のよさを自覚させる言葉/ 6 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[14]
- 「説明してみますか。それは誰に聞いたのですか」
- ―ほめたり認めたりして子どもの自発性を引き出す言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 ものの考え方を広げ・深める言葉/ 3 「ほめる」言葉・「認める」言葉/ 4 自分自身の声を聞かせて考えを確かにさせる言葉/ 5 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ[15]
- 「これからどうしますか。それならこうしたらどうですか」
- ―ガイド・コーチして子どもの自発的な行動や発想を引き出す言葉―
- 1 子どもの情景/ 2 ガイディング・コーチングする言葉/ 3 肝心なことに気付かせる言葉/ 4 子どもの心を動かす親と教師の語りかけ
- あとがき
まえがき
何の変哲もない言葉なのに、子どもの目がパッと輝き、子どもがサッと行動することがあります。それは、きっと、その言葉が、その子どもの思考や行為の文脈にすっぽりと納まったからなのでしょう。
子どもばかりでなく、大人が聞いても『いい言葉だなあ』と感心し、心が動かされる言葉があります。それは、きっと、その言葉が、年齢を問わず心の琴線に触れてくるからなのでしょう。
「子ども時代に言われた、親=教師=の、あのときの言葉で今の私があるのです」と語る大人もいます。それは、きっと、そのときの言葉が、子を思う純粋な愛から生まれていたからなのでしょう。
子どもにとって、親や教師の言葉は「心の糧」です。
子どもにとって、親や教師の言葉は「心の褥」です。
子どもにとって、親や教師の言葉は「生きる希望」です。
子どもにとって、親や教師の言葉は「生きる力」です。
子どもは、親や教師の言葉に心を動かして、自ら「自分づくり」をしていくように思います。
全ての親や教師は、子どものために常日頃から心有る言葉をかけています。しかし、言葉は泡沫です。心に刻まれて、いつまでも印象に残る言葉はありますが、大抵の場合、儚く消えてしまいます。また、日常に交わされる言葉が、子どもにとって教育的にどのような意味があったのかをいちいち考えたりはしないものです。それはとても惜しいことのように思います。
そういう考えもあって、筆者が直接間接に見聞きして記録した言葉を、「子どもの心を動かす親や教師の語りかけ」として十五編にまとめました。
各編は大きく三つに構成しました。
最初は「子どもの情景」です。ここでは、子どもの心を動かす親や教師の言葉をめぐる実際の場面を描きました。言葉は、言葉だけで成り立つものではなく、子どもの学習や生活全体の文脈の中に組み込まれて生きて働いているからです。
次に、取り上げた言葉の意味や背景について、筆者の受け止め、すなわち、筆者なりの意味付けや価値付けを書きました。また、取り上げた言葉から派生する今日的な課題についても触れました。言葉は心であり、文化であり、社会であって、それを考えないわけにはいかなかったからです。
最後に、子どもの成長への願いや、子どもの状況を想定して、それに関するいくつかの言葉を列挙しました。子どもの心を動かす言葉は、それまでの経過やその場の状況などの子どもとの関係性の上に成り立っています。どんな子どもの、どんなときの、どんな言葉がその子どもの心を動かすのかを考えることが欠かせないからです。
言葉は人の発する音声のまとまりです。
そして、言葉は感情です。
言葉は思想です。
言葉は愛です。
言葉は人格です。
言葉は個性です。
言葉は誠意です。
子どもの心を動かす親や教師の言葉に触れて、そうした思いを強くしています。本書を読まれた方々が、これを契機にして、子どもの心を動かす言葉に関心をもっていただければ幸甚です。
終わりになりましたが、本書をまとめるにあたり、明治図書の樋口雅子編集長には多くの示唆と助言と激励をいただきました。謝して御礼を申し上げます。
平成十五年、草木萌えいずる新緑の侯
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- 明治図書