- はじめに
- 第1章 「考え,議論する」道徳科授業づくり
- 1 これからの「考え,議論する」道徳科授業づくり
- その授業で子ども一人一人が輝いているか
- 子どもが「考え,議論する」先には納得解がある
- 道徳科では指導過程論から学習プロセス論へ発想転換しよう
- 子どもの瞳輝く課題探求型道徳科授業をどう創出するか
- 2 道徳科授業づくりのためのネタ&アイデアの考え方
- 導入の役割を踏まえて子どもの学びを方向づける
- 教材&教具を活用して自分事として接点をもたせる
- 話し合いの意図を踏まえて子ども自身の問いを引き出す
- 板書の効果的な活用を通して子どもの思考を深める
- ノートやワークシートで自己を見つめさせる
- 終末で子どもの日常的道徳生活との接点をもたせる
- 説話を通して未知の世界を拡げる
- 第2章 「考え,議論する」道徳のネタ&アイデア100
- 導入のネタ&アイデア
- 1 事前アンケートでつかむ
- 2 読書活動とつなげる
- 3 動画でイメージさせる
- 4 新聞記事からリアルな課題意識をもたせる
- 5 クイズで知的好奇心をくすぐる
- 6 ポスターで心に残す
- 7 展開後半につなげる導入を行う
- 8 言葉からイメージを広げる
- 9 心の中をあらわす顔絵をつかう
- 10 効果音をつかう
- 11 不確かなことをはっきりさせる
- 12 簡単なことを考えることから始める
- 13 始めと終わりの問いを同じにする
- 14 他教科の学習とつなげる
- 15 登場人物の把握と導入をセットで行う
- 16 実物に触れてみる
- 教材提示のネタ&アイデア
- 17 範読する
- 18 ペープサートを活用する
- 19 紙芝居を活用する
- 20 ICTを活用する
- 21 動画でイメージを豊かにする
- 22 パネルシアターで子どもの心をつかむ
- 23 印象的な一部分を抜き出して提示する
- 24 場面絵を活用する
- 25 効果音をバックにして提示する
- 26 補足説明を効果的に使う
- 27 ビデオ教材を活用する
- 28 小道具を活用する
- 話し合い活動のネタ&アイデア
- 29 話し合い活動のルールを定める
- 30 話し合い活動の下地をつくる
- 31 聞き方を高める
- 32 ペアトークを効果的に取り入れる
- 33 話し合い活動を活発にする「問い」を用意する
- 34 グループトークを効果的に活用する
- 35 座席を工夫する
- 36 司会カードを活用する
- 37 討論形式で深める
- 38 異なる考えの児童同士のグループトークを仕組む
- 39 ジグソー法を活用する
- 40 身につく力を自覚する
- 板書のネタ&アイデア
- 41 横書きでダイナミックな流れをつくる
- 42 子どもたちの意見をウェブにまとめる
- 43 二項対立とその解決策を位置づける
- 44 ネームプレートを活用する
- 45 道徳的諸価値の関連を示す
- 46 学習テーマを中心に位置づける
- 47 場面絵を活用する
- 48 教材に関連する資料を活用する
- 49 ラベリング・ナンバリングを活用する
- 50 吹き出しを活用する
- 51 イラストを活用する
- 52 格言や名言を活用する
- ノート&ワークシートのネタ&アイデア
- 53 道徳ノートをつくる
- 54 道徳ノートと付箋紙を活用する
- 55 巨大付箋紙で子どもたちの黒板をつくる
- 56 道徳ノートで家庭と学校をつなぐ
- 57 道徳的問題の解決シートを活用する
- 58 体験的な学習から価値の理解を深めるシートを活用する
- 59 生き方を考え続けるシートを活用する
- 60 自らの成長を実感するシートを活用する
- 終末のネタ&アイデア
- 61 導入の問いを終末でもう一度行う
- 62 話し合った学びを生活へ広げる
- 63 教科書から仲間のお話を見つける
- 64 『私たちの道徳』の「コラム」を読む
- 65 「コラム」を書く
- 66 「いいね!ノート」で多面的・多角的な思考を促す
- 67 「いいね!ノート」報告会を行う
- 68 教室に「学びの足跡」を残す
- 69 「道徳標語コンテスト」で学びを日常の中へつなげる
- 70 「道徳カルタ」で楽しみながら道徳を学ぶ
- 71 魅力ある教師の説話@自分を語る
- 72 魅力ある教師の説話A教師の宝物を用いる
- 73 手紙に思いを込める
- 74 家庭・子ども・教師で対話する
- 75 子どもに身近な人物をゲストティーチャーにする
- 76 ○○さんにインタビューする
- 教具のネタ&アイデア
- 77 風呂敷を使って先人の知恵を実感する
- 78 聴診器を使って命の大切さを実感する
- 79 赤ちゃん人形を使って命の重さを実感する
- 80 音楽の力で感動を高める
- 81 場面絵で状況や心情の把握を促す
- 82 映像を活用する
- 83 お面を役割演技に生かす
- 84 サケの飼育,放流を通して自然や動植物との関わりを考える
- 85 海岸漂着物を通して,自然環境保護に対する関心を高める
- 86 ポスターを通して人権について考える
- 87 写真集を通して,自然の美しさ,不思議さを感じ取る
- 88 すごろくで「和食」と年中行事を結びつける
- 説話のネタ&アイデア
- 89 ことわざを生かす(十人十色)
- 90 ひたむきに取り組む姿を伝える
- 91 ていねいな言葉遣いを考える
- 92 考え,決定する力についてAIを通して考える
- 93 「友達っていいな」を感じる歌を歌う
- 94 協力し合ったことで得たものを考える
- 95 「みんなのために」を実感する
- 96 「学校を愛する心」を考える
- 97 動植物の世話をイメージさせる
- 98 一人一人のよさを生かす
- 99 豊かに想像させる
- 100 生命の神秘を感じさせる
- おわりに
はじめに
2018年度,小学校は道徳科新時代の夜明けを迎える。これからどのような「特別の教科 道徳」=道徳科のスタートが切られるのであろうか。とても楽しみである。特別の教科である道徳科が新たにスタートしたら,全国の小学校の各教室でどのような素敵で力強い道徳科授業が展開されるのだろうかとワクワクしてくるのは編著者一人ではないだろう。
これから始まる道徳科授業,これまでの「道徳の時間」のよさを引き継ぎ,さらにこれまでとはひと味違う,子どもたちにとって待ち遠しくなるような素敵な道徳科学習が待ちかまえているに違いない。想像してみるだけで,とても幸せで満ち足りた輝かしい未来予想図が描けてくるのである。新たに道徳教科書も導入されるが,子ども一人一人の夢が膨らんでくるような道徳科授業にぜひともしていきたいものである。そんな夢が実現するための一助になればと願って本書が企画され,全国の実践家の協力を得てここに刊行することができたことにまずお礼を申し上げたい。
しかし,不思議なものである。学校教育において子どもの人格形成に直接的に寄与できる,教育者にとっては何よりも本懐であるはずの道徳授業は,これまで往々にして不人気であった。編著者が数年前に実施した小学校教師の意識調査でも,苦手の筆頭が道徳の時間であった。それは大学の教職課程での必要単位数の問題や指導専門性の深さという点で不十分なことも否めないが,それ以上に忌避傾向が先行している現状があるのではないだろうか。だから,いきなり教師が道徳教材を範読し,矢継ぎ早に発問を繰り返すような,子ども不在の授業が横行しているような実態も少なくなかったのである。
教師主導で授業が進んだり,教師の視点のみで発問や指導法を工夫したりしても,子どもには道徳を学んだ記憶すら残らない。この笑うに笑えない唇寒い状況が,少なからぬ教室で散見されたのも事実である。子どもが道徳的問題を自分事として受け止め,自分を見つめたり,道徳的価値を見つめたり,自分の在り方や生き方を見つめたりする時間にならなければ,本来的な道徳学習とはならない。道徳が教科となっても,教師主導の授業展開では道徳科が目指す教育成果は期待できないであろう。
道徳科授業の基本的な考え方としては,学校の教育課程に位置づけられた全ての教育活動と密接に関連づけながら,計画的・発展的に指導していくことが大切である。それは偶発的な要素を取り込むことで授業を成立させるといった発想ではなく,学習指導要領で意図する「社会に開かれた教育課程」で「生きる力」を育むという視点に立ち,道徳的な資質・能力をしっかりと身につけさせていくという教育的前提がなければかなわないことである。そんな立場で従前の「道徳の時間」を振り返ってみると,「主題やねらいの設定が不十分な単なる生活経験の話合いや読み物の登場人物の心情の読み取りのみに偏った形式的な指導が行われていたりする例がある」とこれまでの指導の在り方とその教育効果を一刀両断にした中央教育審議会答申「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」(平成28/2016年12月21日)の見解が切実感を伴って胸に響いてくる。
本書では,これから始まる道徳科の趣旨を真摯に受け止め,子どもの主体性を大切にした道徳科学習が実現されるよう,豊富な経験を有する実践家のアイデア宝箱を少しずつ公開してもらっている。その中には,明日からの授業をどうするかという喫緊の課題克服のヒントも含まれているに違いない。それらアイデア宝箱の事例を活用してみたら,つい敬遠しがちだった道徳科授業が劇的に変貌することだってあり得るに違いない。教師が変われば子どもたちも必然的に変わってくる。教師が道徳科授業で子どもたちにきちんと向き合って語りかけるなら,子どももそれに呼応するに違いない。教科教育では指導の制約から問うことができにくい人間としての在り方や生き方を真正面から取り上げ,語ることができる道徳科授業,その特質を大切にしながら,全国の教師に本書を参考にチャレンジしていただきたいと願っている。
/田沼 茂紀
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- 明治図書
- 初心者からベテラン教員まで幅広く活用することができる一冊です。2018/6/1740代 小学校教員
- 100のアイデアが、なぜ有効なのか、新学習指導要領の趣旨に即して解説されているところがとくによかった。2018/4/840代・教委