- まえがき
- Chapter1 教師力を磨く!基礎・基本の指導技術
- 1 国語科のおそろしさを自覚する
- 2 言語生活を充実させる
- 3 卒業式の姿を想像する
- 4 授業のキャッチフレーズを示す
- 5 生徒の言葉で授業をつくる
- 6 沈黙に耐える
- 7 問題集への取り組み方を教える
- 8 テストへの取り組み方を教える
- 9 精神エネルギーを高める
- Chapter2 授業力を磨く!話すこと・聞くことの指導技術
- 10 話すことよりも聞くことを大切にする
- 11 生徒の意見を受け止める
- 12 話すことの手本には教師がなる
- 13 自己紹介はビデオ撮影する
- 14 分かりやすく話す
- 15 話し方は読みの授業から学ぶ
- 16 答辞を国語科指導の集大成とする
- Chapter3 授業力を磨く!書くことの指導技術
- 17 メモを大切にする
- 18 自分にしか書けないことを書く
- 19 考える時間を確保する
- 20 原稿用紙をつくる
- 21 文集をつくる
- 22 報告文を書く
- 23 事実を客観的に書く
- 24 読書感想文を書く
- 25 意見文を書く
- Chapter4 授業力を磨く!読むことの指導技術
- 26 まず活字に触れる
- 27 本好きな子を育てる
- 28 言葉のおもしろさに触れる
- 29 予習の意味調べはしない
- 30 読むことの楽しさを実感させる
- 31 インプットする
- 32 教材研究は発問を掘り出すイメージで行う
- 33 生徒の思考に寄り添う
- 34 読みの方法を身に付ける
- 35 読むことの基本的な学習の流れを考える
- 36 説明的な文章の読みは見える化する
- 37 新聞を読む
- 38 詩・俳句・短歌は暗唱する
- 39 俳句の学習は「五感」を問う
- Chapter5 授業力を磨く!伝統的な言語文化・言語事項の指導技術
- ■伝統的な言語文化
- 40 暗唱でリズムを体得する
- 41 高等学校での学習を意識する
- 42 現代版枕草子を書く
- 43 漢文は訓読のすごさを体験させる
- ■言語事項
- 44 漢字の学習は努力の結果を出させる
- 45 漢字のおもしろさを伝える
- 46 熟語の構成を楽しく授業する
- 47 文法の学習では法則性を発見する
- 48 文法の指導はさらりと徹底させる
- 49 語彙指導は国語辞典のおもしろさから始める
- 50 言葉のおもしろさを授業する
まえがき
書店の教育書のコーナーには,「アクティブ・ラーニング」「主体的・対話的で深い学び」に関する本が平積みされています。
具体的にどんな授業をすればよいのか,いったいどれだけの人が分かっているのでしょうか。私自身,明確に思い描けません。実践例に目を通すと,まさに「同床異夢」,一人一人がまったく違う授業像を思い描いているのではないかとさえ思えてきます。
国語科の授業で言えば,単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりということで,全国各地で実践が行われています。当然のことながら,これらは単元全体を見据えた実践であり,1時間1時間の授業像がなかなか見えてきません。また,活動することが中心となり,どんな学力を付けているのかということが曖昧であるとの指摘も見られます。
そういう混沌とした時代に思い出した言葉があります。今から10年ほど前のことです。ある企業を訪問し社長さんからお話を聞きました。そのときの言葉です。
「原点に戻ることが,真の改革だよ」
この一言の前には,「教師としてのプライドを持ちなさい。教師は職業としてやるべきではないのだから」,さらに「学校教育の目的を哲学しなさい。これができていない時代なのだから。目的について,つきつめて考えなさいよ」などの言葉がありました。
時代が大きく変わろうとしているからこそ,原点に立ち返る。これこそが,真の改革であるということです。
30年以上,国語科の教壇に立ってきました。目指してきたのは,生徒がわくわくする授業です。「国語っておもしろい」「次の時間が楽しみだ」「国語をなぜ勉強するのか分かったような気がする」,こんな言葉を求めて実践を積み重ねてきました。これらの実践を基に国語科の原点について考えたのが,本書です。
今まで授業技術について,具体的な授業場面での対応について述べられてきた著作は多く見られました。自分自身,実際の授業で参考にしてきたことは言うまでもありません。しかし,その技術がどのような考え,理念から導き出されたものであるかについては,記述があまりされてこなかったように思います。その場面でしか有効でないということも体験してきました。技術を支える理念の重要性を痛感したわけです。
そこで,本書では,指導技術はもちろんのこと,その技術がよって来たるところの考え方にも触れるように心掛けました。指導技術だけに限定せず,理念とも言うべきものに触れるようにしました。特定の1時間だけを特定の指導技術で無難に乗り切るという方法は書いてありません。様々な場面で,どう考えたらよいのかという指針を示すようにしました。
逆に,実践例を示すときは,実際の授業で使用したワークシートなどをそのまま示すようにしました。考え方だけを提示しても簡単には理解できません。具体的に示すようにしました。
新しい時代の国語科教育に真摯に取り組んでいる皆さんの「刺激」になることを願っています。
本書は,愛知教育大学名誉教授・志水廣先生のメールマガジン「悠・愉」に連載したものに手を入れたものです。自分の授業を振り返る機会をいただいたことに心から感謝しています。また,本書を世に送る機会を与えてくださった明治図書出版の木山麻衣子さんにも心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。
平成29年6月 /伊藤 彰敏
-
- 明治図書