- まえがき
- 第1章 担任が統率者である 毅然とした態度と優しさのバランス
- 1.《生徒からの信頼》を教師が勝ち取る努力をしているか /染谷 幸二
- 2.「向山型指導法に支えられた翔和学園の実践」をくり返し読む /川神 正輝
- 3.人任せにするのではなく,自分が何をするのか /櫛引 丈志
- 4.教えるべきことをきっちり教え,ほめるべきをほめればよい /長谷川 博之
- 第2章 真のリーダーが出現する 「自由立候補ジャンケン制」を中学に導入する
- 1.やる気を引き出す「語り」とともに /松原 大介
- 2.立候補させ,スピーチさせ,活躍させる /野口 敦広
- 3.いじめや差別の温床をなくす 自由立候補ジャンケン制 /鈴木 勝浩
- 4.リーダーは上に立つものではない,下で支えるものだ /風林 裕太
- 第3章 座席を征する担任は学級を統率する
- 1.教室を居心地のいい場にするために座席を管理する /染谷 幸二
- 2.席替えは学級担任がコントロールする /山本 真吾
- 3.中学1年生 情報収集は中学入学前から行う /山本 雅博
- 第4章 学級経営のリスクマネジメント “荒れる”前に予防する
- 1.教師の心構え次第で“荒れ”は予防できる /寺田 加奈子
- 2.安心感を学級経営の根幹にすえる /山下 修
- 3.システムづくりと賞賛で「荒れ」を予防する /星 由紀枝
- 第5章 これだけは譲れない! 学級担任としてのこだわり
- 1.下駄箱と教室を常に整える〜靴・鞄・椅子を定位置へ /伊藤 和子
- 2.全員参加を目指す よさこいSAMURAI指導 /坂本 育朗
- 3.机を合わせることの価値を生徒に伝える /冨士谷 晃正
- 4.全員参加・全員本気・全員成長を追い求めるそれがはじめの一歩 /長谷川 博之
- 第6章 いじめ発見! まずはここから解決を図る
- 1.いじめが起きたなら3つのステップで指導する /櫛引 丈志
- 2.24時間以内に3つのことを行い,最後まで見守る /垣内 秀明
- 3.校内に発見・対処のシステムを打ち立てることが先決である /長谷川 博之
- 第7章 効果的な学級経営1 副担任との良好な関係のつくり方
- 1.日常の中で副担任の信頼を得る /志田 智明
- 2.担任だけではない 教師全員で生徒を見るのだ /吉田 る実
- 3.3つの「共に」を大切にする /横山 宏樹
- 第8章 効果的な学級経営2 学年団との連携を図るための秘訣
- 1.連携を図るために大切にしていること /風林 裕太
- 2.笑顔で,そして進んで動こう /鈴木 勝浩
- 第9章 危機管理 ちょっと気になる生徒との接し方
- 1.一点突破で指導する /新谷 竜治
- 2.学年主任として,生徒が知らない《担任の思い》を伝える /染谷 幸二
- 3.特別支援は「記録」と「複数」で臨む /倉 豊彦
- 4.笑顔で声をかけ続ける /野口 敦広
- 5.気になるところは目をつぶり,よさを見つける /星 由紀枝
- 第10章 リセット! 点検・修正 長期休業後の学級経営のツボ
- 1.長期休業前と同じように過ごさせる /三並 郁恵
- 2.新しく始まる学期を笑顔で過ごすための戦略 /垣内 秀明
- 3.シルバーの1日 休み明け初日に全力を注ぐ /佐藤 泰弘
- 第11章 心のバイブル 精神的支柱となる向山語録
- 1.安心してゆっくり休みなさい /渡邊 佳織
- 2.教育の仕事は,手品のようにはいかない /坂本 佳朗
- 3.子どもの成長は教師の成長に規定される /山口 俊一
- 第12章 学級経営に疲れた時,困った時の乗り切り方
- 1.続ける・会う・読む・休むの4つで乗り切る /志田 智明
- 2.人に会う,学び続けるとクラスが変わる /小山 典子
- 第13章 マイナスをプラスに! 保護者からの苦情に誠実に対応する
- 1.苦情から「生徒の成長」を阻む問題を探る /野口 敦広
- 2.子どもへの接し方を見直すことができた /上野 一幸
- 3.保護者の苦情は,天気予報の注意報・警報だ /新谷 竜治
- あとがき
■まえがき■
中学3年生の学級担任に復帰した。中学1年生の時に担任していた学級なので出戻りである。不思議な気分であるが,やはり嬉しい。
始業式の日,宿題として1分間スピーチを出した。これは,最初に学級を持って以来,ずっと続けている。向山洋一氏の追試である。ただし,原実践は30秒スピーチである。中学3年生ということで1分間にした。スピーチのテーマは『1年間の抱負・目標』である。
始業式の日,「原稿を書くこと」「ぴったり1分間になること」「暗記してくること」を伝えた。
これだけでは面白くない。そこで,私がモデルを示すことにした。原稿用紙1枚をゆっくり読み上げれば,だいたい1分間である。それが分かっていれば,数秒の誤差でスピーチができる。しかし,今回はピッタリ1分間で終わらせたい。それには,裏技がある。
スピーチの前に,「先生が見本を見せます。ぴったり1分で終わらせるので,時計を持っている人は計りなさい」と伝えた。当然,生徒は時計に注目する。ここがポイントである。
スピーチを始めた。学級担任に復帰して喜んだこと,修学旅行が楽しみなこと,卒業式で感動の涙を流したいことなどを淡々と話した。この場合,内容はどうでもいい。私は,時計を持った生徒に注目した。1分が近づいてくると,計っている生徒の体の動きが大きくなった。5秒前になったのだろう,まわりの生徒にカウントダウンを始めた。こうした動きは計算済みである。その生徒の体が大きく動いた瞬間,スピーチをやめた。
「すげ〜,1分ジャスト!」
私は「これが理想の1分間スピーチです」と笑顔で言った。何のことない,時間を計った生徒が1分を教えてくれたのである。もちろん,彼と打ち合わせをしたわけではない。中学教師を長くやっていれば,生徒がどんな行動を取るかはお見通しである。
前日のパフォーマンスの効果であろう。全員が原稿を用意し,練習してきた。この日,全員のスピーチをビデオに撮った。1年間の目標を発表する生徒の表情は,実に初々しい。しかも,緊張感いっぱいで臨むので,終わった瞬間,達成感いっぱいのいい表情になる。それを記録に残したいと思った。
スピーチ終了後,録画したビデオを見せることにした。当然,「え〜!」という声があがった。そこで,次のようにビデオを視聴する目的を語った。
学級のみんなの前で1年間の目標を語るというのは,勇気が必要なことです。自分の言葉に責任を持たなければならないからです。だから,みなさんは原稿を書き,練習をして臨みました。
こうした緊張した場面では,誰もがいい表情をします。でも,そのいい表情を自分で見ることはできません。これから学校をリードするみなさんにとって必要なことは,自信を持って生活することです。その自信は,表情に表れます。スピーチで見せた表情が,普段の生活でできれば,きっと後輩から信頼される先輩になることでしょう。まずは,自分のいい表情を覚えてください。そのために,ビデオを見るのです。
和やかな雰囲気の中でビデオを見ることができた。自分のいい表情を自覚する。中学校の学級経営の基本だと考えている。
本書は,TOSS中学で学ぶ教師が,日々の学級経営から学び取った実践が綴られている。中学教師は,成長期にある中学生を相手にしている。人生で最もエネルギーに満ちた中学生と一緒に過ごせることは幸せなことである。本書が《笑顔があふれる学級》をつくるきっかけになれば幸いである。
TOSS中学 /染谷 幸二
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- 明治図書
- 法則化された内容は、時代を超えて使えるものだと思った。2021/7/2940代・中学校教員