- はじめに
- 第1章 「コーチング」で子どもが変わる?!
- ―子どもの潜在能力を引き出すアプローチ―
- [1] ティーチングが機能しないところにコーチングなし
- [2] 教師にとってのコーチング
- [3] 教育におけるコーチングの意味
- (1) 「傾聴」のスキル
- (2) 「質問」のスキル
- (3) 「フィードバック」のスキル
- (4) 「承認」のスキル
- (5) 「勇気づけ」のスキル
- (6) I(アイ)メッセージのスキル
- [4] 子どもを育てる教師とは
- 第2章 子どもの発達段階に関わる!
- ―「他者」としての子どもを見る視点―
- [1] 他者としての子ども
- [2] 子どもの成長に関心を寄せる
- [3] 子どもが大人になるということ
- (1) 自己抑制(=社会ルールの取得)
- (2) 社会ルールの適用(=参加と連帯と自治)
- (3) 自律(=自立)
- [4] 無意識の意図(=意味・目的)を理解する
- 第3章 教育現場で使える「アドラー心理学」
- ―勇気づけの原則とコミュニケーション法―
- [1] アドラー心理学とは
- [2] 従来の教育指導の問題点
- 〜アメとムチ〜
- [3] アドラー心理学の理論
- (1) 実存主義
- (2) 目的論
- (3) 全体論
- (4) 対人関係論
- (5) 現象学
- [4] 教育現場で使えるアドラー心理学の技法
- (1) 勇気づけの原理原則 その1〜相互尊敬と相互信頼
- (2) 勇気づけの原理原則 その2〜受容と共感
- (3) 勇気づけの表現
- @事実表現と意見表現
- A永久表現と一時表現
- BYOUメッセージとIメッセージ
- C否定表現と肯定表現
- D結果表現と過程表現
- E未達成表現と達成表現
- F賞賛表現と感謝表現
- (4) 自然の結末
- (5) 論理的結末
- [5] 不適切な行動の4つの目的
- 第4章 コーチングの基本技法
- ―子どもの信頼を勝ち取るコーチングスキル―
- [1] コーチングの姿勢
- [2] コーチングの構成
- [3] 「傾聴力」を高めよう
- (1) 「傾聴力」を高めるスキル
- @座る位置
- Aアイコンタクト
- B相槌
- C繰り返し
- Dペーシング
- Eミラーリング
- F要約
- Gフィードバック
- (2) 「傾聴スキル」の身につけ方
- [4] 「質問力」を高めよう
- (1) 質問の種類
- (2) 更に積極的な思考を促す質問
- @子どもの関心に沿って質問すること
- A未来に向けた質問をすること
- B肯定的な質問をすること
- (3) 「閉じた質問」を「開いた質問」に変える
- (4) 擬似質問
- (5) 質問によって単語に秘められたメッセージを解読する
- [5] 傾聴・質問の究極のねらい
- [6] NLP(神経言語プログラミング)
- (1) ニューロロジカルレベル
- (2) 代表システム
- 第5章 こんな時どうする? 【実践】場面別コーチング会話例
- [1] あいさつ
- [2] 目標設定
- (1) 会話例@ 朝の会
- (2) 会話例A 学期の目標を決める
- [3] 役割を担わせる
- (1) 会話例@ お休み係
- (2) 会話例A 子どもの行動に対するフィードバック
- [4] 子どものやる気を引き出す
- (1) 会話例@ 「何で勉強するの?」
- (2) 会話例A 消極的な子どもにはたらきかける
- [5] 子どもの課題解決をサポートする
- (1) 会話例@ テスト結果を改ざんする子ども
- (2) 会話例A テストの結果に落ち込む子ども
- (3) 会話例B 喧嘩して落ち込んでいる子ども
- 第6章 セルフ・コーチングで教師力を高める!
- [1] 内省で自分を発見する
- [2] 自分を勇気づける
- [3] 自分の目標・ビジョンを定める
- (1) ゴール(目標)を明確化する
- (2) リアリティー(現状)を把握する
- (3) リソース(資源)を発見する
- (4) オプション(選択肢)を創造する
- (5) ウィル(意志)を確認する
- [4] 自分の中の潜在能力を引き出す
- [5] 自分を高めるために何かをやり続ける
- おわりに
はじめに
明治図書から2冊目の本になります。今回は,井上郁夫氏と共著という形で出版することができました。
井上氏との出会いは,1990年の冬でした。彼は,公立中学校の教師を辞めて,私の勤めていた神奈川の大手学習塾に転職してきたのです。駄洒落をしきりに言って,職場を明るくし,また授業の上手い教師として,職場でもすぐに一目置かれる存在になりました。私は,この学習塾を7年弱で転職してしまいますが,彼はその学習塾で研修担当者として,責任ある立場になります。そして,その間にアドラー心理学を学び,コーチングスキルを学び,若手教師の育成,問題教師の再教育に取り組みます。そして,独立志向を持って,2005年に私の会社にやってきました。今では,コーチング研修,保護者対応研修,授業研修等で全国の学習塾や私立学校,そして教育センターを飛び回っています。こんな彼とこの本を書きました。
さて,本書ですが,教師が,コーチングスキルを学ぶことによって,子どもたちとの関係を良好にしてほしいと願うと同時に,子どもたちにコーチングスキルを身につけてほしいという思いを込めて書きました。子どもたちが,コーチングマインドを持った教師から実際の指導を受ければ,それだけ子どもたちに真の意味でのコーチングスキルが実感できるだろうと思ったのです。教育は,人間の自律=自立を促すものです。しかし,それだけで終わるものではありません。人間を自律=自立に向かわせると共に,大人になった人間に力を与えるスキルを伝えなければなりません。そのスキルが,コーチングスキルです。それもセルフ・コーチングスキルです。子どもたちにも自分で自分を鼓舞する姿勢や技術を学んでほしいのです。子どもたちは,学校での生活を通して,大人になっていくための様々な流儀を学びますが,その中に,自分自身を勇気づけるスキルがあると私たちは,思っているのです。
ぜひ,教師の皆さん,この本を参考にして,日常の指導の中にコーチングマインドを浸透させ,子どもたちに自問自答させる風土を根づかせてください。
子どもたちが,大人になって,自分で困難を乗り切れるようにさせたいのです。そのために,コーチングスキルを有効に使って,子どもたちを導いてほしいと思います。この本は,そんな願いで書きました。
/中土井 鉄信
筆者分担は次の通りです。
中土井鉄信:1章・2章・6章
井上 郁夫:3章・4章・5章
その要望に見事に応えてくれた書籍であり、しかも、ビジネス書にはない柔らかさ、判りやすさ、そして読んでいるうちに、改善しなければいけない人は自分自身ではないかということに気付きを与えてくれる名著だと考える。大推薦の一冊。