- はじめに
- Part1 アクティブ・ラーニング型国語授業スタートのために
- 1 自立・協働・創造を志向する国語教室づくり
- 2 学びの文脈を創る国語授業づくり
- 3 深い学びの過程を重視したAL型国語授業づくり
- 4 対話的な学びの過程を重視したAL型国語授業づくり
- 5 主体的な学びの過程を重視したAL型国語授業づくり
- Part2 自立・協働・創造を志向する国語教室づくり
- 1 学習環境の整備
- 2 学習形態の工夫
- 3 教材研究の仕方
- 4 学校図書館との連携
- 5 家庭との連携
- Part3 深い学びの過程を重視したアクティブ・ラーニング型国語授業づくり
- 1 言語活動を通した指導事項の習得と活用
- 2 国語科における問題解決的な学習指導の充実
- 3 単元の導入段階での動機付けの工夫
- 4 教えることと考えさせることの均衡
- 5 思考や判断を可視化する記述力の育成
- Part4 対話的な学びの過程を重視したアクティブ・ラーニング型国語授業づくり
- 1 自己との対話の重視
- 2 読みの深化を図る書き手との対話
- 3 子供同士の話合いの活性化
- 4 話合いを成功に導くポイント
- 5 質の高い話合いを実現する手立て
- Part5 主体的な学びの過程を重視したアクティブ・ラーニング型国語授業づくり
- 1 国語科における見通しの充実
- 2 遅れがちな子供への対応
- 3 試行錯誤や思考の停滞への対応
- 4 習得したことの自覚化と共有化
- 5 実生活や実社会での言語体験の充実
- おわりに
- 引用・参考文献
はじめに
21世紀、今後更にグローバル化や情報化が進み、変化が速くて先が見えにくい時代が待ち受けている。そのような時代の変化に受け身でなく、一人一人が自らの可能性を最大限に発揮しながら自立し、他者とよりよく協働し、そして新たな価値を創造することで、自他共に幸福な人生を送ることができるような教育が求められる。
そのためには、教育目標、教育内容、教育方法といった観点から現代の課題を捉え、未来に向けた教育の在り方を検討していくことが重要である。とりわけ、子供の視座に立ち、育成すべき資質や能力の要素を共有する必要がある。今後は、各教科等の文脈の中で身に付けていく力と、教科横断的に身に付けていく力とを相互に関連付けながら、子供たちのよりよい成長を希求していくことが重要である。その要素として、「何を知っているか、何ができるか」という個別の知識や技能を体系化すること、「知っていること・できることをどう使うか」という思考力・判断力・表現力等を重視すること、さらには、「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」という学びに向かう力や人間性等を育むことの重要性が叫ばれている。
そうした中、アクティブ・ラーニング(以下、ALと省略する場合がある)が注目されている。これは、今後育成すべき資質や能力を育むために、学びの量とともに質や深まりが重要であるという時代の認識のもと、子供たちが「どのように学ぶか」についての検討の中から提示された用語である。それは、「主体的・協働的な学び」と和訳され、前述した資質や能力の育成を目指す教育方法の側面からのアプローチと捉えることができる。
アクティブ・ラーニングは、平成20年版学習指導要領において一丁目一番地とされた、言語活動の充実の延長戦上にある理念である。言語活動が充実すれば、自ずとラーニングはアクティブになる。言語に関する能力を育成することは不易である。今後更に言語生活に生きて働き、各教科等の学習の基本ともなる言葉の力を身に付けることは引き続き重要である。
本書では、このような考えのもと、小学校国語科におけるアクティブ・ラーニング型の授業をどのように構想していけばいいかといった、学校現場の悩みに応えるようと努めた。
Part1では、「AL型国語授業スタートのために」という見出しで、国語授業をつくっていくための基本的な考え方を論述した。ここでは、まず、自立・協働・創造を志向する国語教室づくりが基盤であることを述べた。その上で、「深い学び」や「対話的な学び」、そして「主体的な学び」のそれぞれの過程の学びの統合を意図し、学びの文脈を創ることを唱えた。
Part2では、Part1を踏まえた自立・協働・創造を志向する国語教室づくりのための具体的な手立てをまとめた。
Part3・4・5では、学びの文脈を創る上で基本となる「深い学び」の過程、「対話的な学び」の過程、「主体的な学び」の過程、それぞれを重視したAL型国語授業づくりのポイントや具体的な実践事例を提示した。それぞれのPartの中を五つの小見出しに分けているが、これらは小学校現場における国語授業の現実的な課題であると捉えている。
小学校においては、アクティブ・ラーニングは従前より行われているとの見解がある。果たしてそれはどのような根拠や理由に基づくものであろうか。客観的なデータは存在しているのだろうか。中学校や高等学校、大学においても、アクティブ・ラーニングに向けた取組は鋭意行われている。筆者も大学教員として、学生らによる授業評価アンケートを自己省察の資料として受け止めながら、アクティブに学ぶ学生をどのように育成するか、またそれを実現できる授業をどのように創っていけばよいかを日々模索している。
読者のアクティブ・ラーニングに寄与できれば幸いである。本書の刊行に当たり、明治図書の木山様には企画の段階からご尽力をいただいた。記して、感謝の気持ちを表したい。
2016年6月 /樺山 敏郎
国語の授業について、これまでの私自身の実践を振り返ることができました。若い先生方に紹介したいと思っています。