21世紀型授業づくり29
全員参加を保障する授業技術

21世紀型授業づくり29全員参加を保障する授業技術

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「全員参加」を保障する授業はすべての教師の願いといえる。しかし「全員参加」を保障している教師は皆無ではないかと本書の共同研究者たちはいう。意欲的な問題提起である


復刊時予価: 3,245円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-256213-5
ジャンル:
国語
刊行:
2刷
対象:
中学校
仕様:
A5判 256頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

まえがき
T 国語科における全員参加の保障
一 子ども全員に「意欲」を喚起する
1 日々の授業の落とし穴
2 「挙手――指名」型授業の重苦しさ
二 子ども全員に「言語技術」を培う
1 研究授業の落とし穴
2 学力を保障しない国語科の授業
三 子ども全員に「思考」を促す
1 鍛えられた学級の落とし穴
2 葛藤のない授業の不毛性
四 「全員参加」は現象ではなく内実である
U 全員参加を保障する十の授業技術
一 子ども全員に「意欲」を喚起する授業技術
1 「学習意欲」の二つの意味
2 学習に対する「自発性」を促す
3 小刻みなノート作業を課す
4 教師の「視線」を巡らす
二 子ども全員に「言語技術」を培う授業技術
1 「言語技術教育」が授業を変える
2 言語技術教育――産みの苦しみ
3 言語技術が見えない授業
4 「講義形式」から「演習形式」へ
5 演習形式の言語技術指導
6 言語技術を一つにしぼる
7 言語技術は体験によって定着する
8 劇化の授業にも音声言語技術を
9 新しい国語科教育に「言語技術」をしっかりと位置付けよう
三 子ども全員に「思考」を促す授業技術
1 「総合的な学習の時間」を支える言語能力
2 「系統樹」をつくる
3 要約指導で鍛える
4 「個別作業」と「意見交流」との連動
5 「メタ認知」を核とした全体交流
6 傍観者に思考を促す
7 「傍観者中の傍観者」を授業に巻き込む
8 子どもたち全員に「当事者意識」を持たせる
9 「全員参加型授業システム」の開発――PCS
10 「PCS」で心の交流を図る
11 「思考」とは「葛藤」を経た「メタ認知」である
四 授業技術は組み合わせて使うことこそが「命」である
1 現代っ子の趣向はいかに
2 石の上にも三年
3 鑑賞させる名案は明暗にあり
4 「意欲」+「技術」→「思考」
5 授業技術を組み合わせる
V 全員参加を保障する「話すこと・聞くこと」の授業展開
一 「メモ」の技術で聞き取る力を鍛える /對馬 義幸
1 メモを「取って」いるがメモが「取れて」いない
2 そもそもメモは何のために取る?
3 メモを取って伝えよう
4 上手なメモのコツは?
5 再び作業させて、定着をはかる
二 聞いた情報を整理して再構成する /金子 理
1 よりよく「聞く」ための前段階
2 まずは区別させること
3 中心内容の位置に注目させる
4 「情報」をレベル分けさせる
三 留守番電話に用件を正しく伝えよう /小木 恵子
1 活動中心の授業でも、「全員参加の保障」を
2 身近な例で、学習の必然性を持たせる
3 子どもたちの意欲、集中力を最後まで持続させる
4 全員の準備ができたら、いよいよ全体交流
5 今日の国語の時間は、こんなこと習ったよ
四 「ブックトーク」でスピーチ学習に挑戦 /石川 晋
1 原稿から目が離せない
2 スピーチ上達のために仕組んだこと
3 ビデオで自分のスピーチの難点に気付かせる
五 子どもが本気になるネタで「話し合い」活動を促す /堀 裕嗣
1 「融合型」と「対立型」
2 さあ、だれを選ぶ?
3 班員全員で「合意形成」を図る
4 「合意形成」ができなかった理由を考える
W 全員参加を保障する「書くこと」の授業展開
一 「依頼状」で相手意識を自覚させる /山下 幸
1 手紙の価値を授業へ
2 欠点例文でポイント発見
3 ポイントに沿って実際に書かせる
4 「相手意識」を持たせる
二 先生の横暴をやめさせろ! /藤原 友和
1 主張を持つ
2 できなさを自覚する
3 材料を蓄える
4 構成について知る
5 いよいよ書き始める
6 これで明るい学校生活は守られた?
三 根拠を明らかにして書く /太布 智子
1 入学させるか、させないか
2 自分の学校の良いところを紹介しよう
3 みんなで交流し合う
4 向上的変容を確認し合う
四 短作文で論理的思考力を高める /板橋 友子
1 自分の言葉で表現する
2 まずは選択する
3 フォーマットにしたがって書く
4 子どもの表現から「言語技術」を取り出す
5 全員が磨き合い、高め合う場をつくる
五 「失敗談スピーチ」原稿で生活作文にユーモアを! /田中 幹也
1 「失敗談スピーチ」原稿を書く
2 「失敗談スピーチコンテスト」開催!
3 比べる
4 推敲する
X 全員参加を保障する「読むこと」の授業展開
一 細かなステップで全員参加を保障する詩の授業 /藤澤 賢治
1 詩の授業は印象の表出から
2 明暗を問い、全員参加を促す
3 詩の中の言葉から根拠をまとめさせる
4 言語技術として「対比の構造」を教える
5 発展教材で向上的変容を自覚させる
二 小説教材で「自らの生き方」を振り返る /中村 貴子
1 複数の教材の登場人物に焦点を当てる
2 登場人物の共通点を探る
3 比較することで獲得される「読み」
4 自分に自信を持つ
三 古典教育の導入で養う「読み」の力 /浅野 克実
1 仮名遣いの違いを教える
2 間のとり方を教える
3 文意との整合性を図る
四 説明文の読み取りを「話すこと・聞くこと」領域と関連させる /森  寛
1 地球の裏側から転校生がやってきた
2 「お年玉」って何ですか?
3 「説明のコツ」を一つにしぼる
4 練習問題で鍛える
5 全員で「向上的変容」をたたえ合う
6 「読むこと」領域と結び付ける
あとがき

まえがき

 すべての教師が、すべての子どもたちに授業に参加して欲しいと願っている。

 しかし、常にすべての子どもたちを授業に参加させている教師は、日本中に何人いるだろう。

 常に子どもたち全員に「活動」をさせている教師はいる。「劇化」や「ペープサート」「絵本づくり」「紙芝居づくり」といった活動だ。しかし、子どもたちは多くの場合、その活動をすることで自分にどんな学力が身に付いたのか、わかっていない。

 また、常に子どもたち全員に自分の講義を聞かせ、子どもたち全員にノートをとらせている教師もいる。しかし、子どもたちは多くの場合、頭の中が停滞し、ただひたすらノートにペンを走らせているだけだ。右手の運動が行われているだけなのである。おまけに、多くの子どもたちが、給食のメニューや今日のテレビ番組のことを考えている始末……。

 これでは、「全員参加」を保障しているとは言えない。おそらく、「全員参加」を常に子どもたちに保障している教師は、日本中どこを探しても一人もいないのではないか。そんな気がする。「全員参加の保障」はそれほどまでに難しい。

 しかし、私たちは現場教師だ。目の前には、常に何十人、何百人という子どもたちがいる。この子どもたち全員を授業に参加させることがいかに難しくても、それを放棄して良いというものではない。少なくとも、不断の努力によって、少しでも「全員参加」に近付けていくことは可能なはずだ。

 本書は、札幌市近郊に集う中学校国語教師十四人が「全員参加の授業」に憧れて、努力した成果として生まれたものである。もちろん、完璧ではないし、課題も山積みだ。成果と課題を比べれば、課題の方がはるかに多い。

 しかし、いまだ志半ばにさえ到達していないといえども、まずは私たちの小さな成果を発信することで、読者の方々のご批判を仰ぎたいと考え、本書をしたためた。

 私たちは「全員参加」に三つの意味があると考えている。

 一つ目に、子どもたち全員に「意欲」を喚起すること。

 二つ目に、子どもたち全員に「言語技術」を培うこと。

 三つ目に、子どもたち全員に「思考」を促すことである。

 この三つが満たされて初めて、「全員参加が保障された」と考えるのである。こういったシビアな立場を自らに課すことによって、日々の授業に甘えを許さないという「自戒」が生まれる。

 こういった「自戒」を常に念頭に置きながら、本書は執筆された。

 T章からU章では、「全員参加」の意味づけとその授業技術の紹介、V章からX章までは、それに基づいた実践の報告で構成されている。特に、実践報告は、新学習指導要領の三つの領域構成に則って構成した。

 読者のみなさんに役立てていただければ、また、ご批判をいただければ、これに優る幸せはない。

 私たちもまた、新しい国語科教育をともにつくっていきたいと考えている。


  平成十三年五月   「研究集団ことのは」代表 /堀 裕嗣

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