- まえがき /溝西 任
- T 統合単元学習構築の背景
- 1 子どもを取り巻く現状からの授業の転換
- 2 これまでの本校の取り組み
- U 本校が考える統合単元学習
- 1 学びの文化を生み出す統合単元学習
- 2 認識の変革の重要性
- 3 育てたい力と各教科等の統合
- 4 統合単元学習構築のための学びの活性化
- V 教科等から見た統合単元学習
- ―大学教官からの提言―
- 国語科 「統合学習史」に的確に位置付けられる理論と実践を /白石 壽文
- 社会科 社会科から見た統合単元学習への期待 /松尾 正幸
- 算数科 算数科から見た統合単元学習 /國次 太郎
- 理科 理科から見た統合単元学習の展望 /世波 敏嗣
- 生活科 生活科と統合単元学習 基礎・基本としての「やさしさ」 /新富 康央
- 音楽科 音楽科と統合単元学習 /筒石 賢昭
- 図画工作科 子どもの変化をみすえた、新たな美術教育の可能性 /栗山 裕至
- 家庭科 家庭科と統合単元学習 /小西 史子
- 体育科 体育科における統合単元学習 /福本 敏雄
- 健康教育 健康教育分野からみた統合単元学習への期待 /礒谷 誠一
- 道徳 統合単元学習における「道徳」 /丹野 眞智俊
- 特別活動 特別活動と統合単元学習一出会いを求めてー /新富 康央
- W 統合単元学習の実践
- 1 各教科等の学習はどのように活性化したか
- ◎「教科等の学習はどのように活性化したか」を読む前に
- 実践事例1 学級を想う心が学習意欲を変えた!
- (第2学年 国語・生活・音楽・特別活動)
- 実践事例2 教科を生かじ,虫で単元を展開
- (第2学年 生活・図画工作・体育)
- 実践事例3 教科が『駅』 旅行感覚で自分発見
- (第3学年 国語・理科・道徳)
- 実践事例4 自他認識に生きる学びの個別化と協同化
- (第6学年 国語・図画工作・特別活動)
- 実践事例5 学びの活性化の中での自分さがし
- (第6学年 国語・社会・特別活動)
- ◎『育てたい力』はどのように育ったか
- 『育てたい力』はどのように育ったか」を読む前に
- 自分自身に関すること
- 実践事例6 これがぼくらの見つけた「お手伝い」だよ
- (第1学年 国語・算数・生活)
- 実践事例7 守り続けよう! 「命」
- (第3学年 国語・道徳・特別活動)
- 実践事例8 いろいろな立場で考えたよ
- (第4学年 国語・社会・理科)
- 実践事例9 こんなぼく(わたし)が,大好き
- (第5学年 国語・体育・道徳)
- 実践事例10 大丈夫! わたしの食生活
- (第6学年 家庭・体育)
- 他者との関わりに関すること
- 実践事例11 遊びを楽しむ力のある子ども
- (第1学年 生活・体育・特別活動)
- 実践事例12 よさ見つけで広がった友だちの輪
- (第2学年 国語・図画工作・特別活動)
- 実践事例13 学んだことを工夫して活用したり伝えたりする子
- (第3学年 国語゜社会・図画工作・特別活動)
- 実践事例14 ぼくの わたしのイメージが音楽になった!
- (第4学年 国語・音楽・特別活動)
- 社会生活や身の回りとの関わりに関すること
- 実践事例15 やっぱりうちのかぞくはすてきだ
- (第1学年 国語・生活・音楽)
- 実践事例16 自慢大会で,尊敬・感謝の気持ちを高める
- (第4学年 国語・社会)
- 実践事例17 郷土の発展に積極的に関わろうとする意欲が育った
- (第4学年 社会・図画工作)
- 実践事例18 興味津々! 見つけたぞ身近な問題点!
- (第5学年 国語・社会・道徳)
- X 統合単元学習の今後の展望
- 1 「合科的」「横断的」「総合的」な学習との関係
- 2 今後の展望
- 参考・引用文献
- あとがき /志波 昌興
- 研究同人
まえがき
現在の教科等は学問体系にあわせてあり,記憶するにも,教師にとって教えるにも都合よくつくられており,それぞれの教科等で知識として完結したような錯覚にさえ陥るものである。現行の教科等は知識の便宜上の枠組みであり,知識の整理や記憶または総括には便利であるが,生活や実際に生きて働く知識とするためには,学校教育で得た知識を場面に当てはめて活用しなければならない。教科等で学習したものをすべて配列し直した形で断片的な知識を総括的に繋ぎ合わせ,思考され,実行されるもので,単独で用いることは少ない。
実際の生活や問題解決に活用される知識から,先進的な学校では現行の教科の枠組みを外して問題解決的枠組みを考えた学習方法は試行された経験があった。1970年代の教育実践でも試みられたものが合科であり総合単元学習であった。その後,この考えは全国的に行きわたり,実践されてきた。それらは,類形化するものによって3つにも4つにも分けられている。大野練太郎氏に従えば,(1)2つ以上の教科の内容や方法を生かし,学習目標を効果的に達成させるもので,教科の違う複数単元の中から関係あるものを集めて学習を進めるもの,(2)現行教科構成にとらわれず,学習者の生活あるいは人格的発展を図ることを目的としたもので,学習者である児童の心身の発達に従って総合的に学習を進めるもの,(3)教科や教科外活動とも異なり学習者の学習意欲に支えられたもので,新たな教科を形成するに等しいもの,などに分けることが出来るといわれている。また,水越敏行氏は,(1)台科としてあくまで教科内の目標で2教科以上の内容を関連させた学習,(2)課題志向的学習として,ある特定の課題研究に向けて教科や領域を統合した学習,(3)総合学習で生活学習といった総合的学習,に分けている。
このような方法で実施された実践には相当先進的なものが見られたが,一般の多くの学校では急激な広がりが見られなかった。総合学習の問題点とては,単元等の目標が明確でなかったこと,教科のような指導教材がないと,労力に対する十分な効果が得られなかったこと,従来の教科学習で十分であること,指導の施設,設備,場所が不足していること,教材の開発に間がかかりすぎること,教師に指導技術がないこと等が挙げられている。
これらの広がりを見せなかった理由である問題点は,問題解決的学習で掲げた問題は解決するが,本来の学習に明確な目標が掲げられなかったことが大きい原因と思われる。普及しなかった他の理由も総合単元の計画次第は解決できない問題ではない。 .
本書では,教師の願いと学習者である子どもの学びへの願いをもとに現行の教科等を複数統合し,新たな単元目標を掲げ,その単元を学習することによって,統合した複数の教科等にも活性化が図られるよう配慮した統合単元学習を提案する。これらの統合単元学習の特徴は出来るだけ学年の教科の範囲を越えないこと,用いた教科がより学習しやすくなること,統合単元学習自体が現在社会の文化の側面を持つまでに高めたものであること等である。
ここで提唱する統合単元学習は従来の総合学習やクロスカリキュラムの一種として,複数教科の同類単元をただ単に集めたものではなく,より高度に目標を持たせ,その効果が十分に発揮できるように配慮したものである。
統合単元学習の実践研究は本校では3年前から取り組んできた。はからずも昨年の15期中央教育審議会は,そのまとめで「横断的・総合的な学習」を設けることを提唱した。その総合的な学習の1つとしてわれわれが本書で提案する統合単元学習が実践家である小学校の先生方はもとより,考え方については中学校の先生方にも十分な示唆を与えるものと信じている。
平成10年3月 学校長 /溝西 任
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- 明治図書