- はじめに
- 第1章「豊かな人間関係」
- 1.なぜ「豊かな人間関係」なのか
- 2.「豊かな人間関係」を培うために
- 3.主題に迫るアプローチ
- 第2章「豊かな人間関係」を培う学習
- 1年「遊び」/ みんなともだち
- はじめに
- 1.はじめに
- 2.年間計画
- 3.観察と実践
- 4.考察と今後の課題
- 2年「くらし」/ くらしの中で仲間とともに楽しむ子ども
- 1.はじめに
- 2.年間計画
- 3.実践例「太鼓をたたこう」より(1年2学期〜2年2学期)
- 4.「名人になろう」の実践より(1年3学期〜2年1学期)
- 5.おわりに
- 3年「自然」/ 自然には,おもしろいことやふしぎなことがいっぱい!
- 1.はじめに〜『自然』を通した豊かな人間関係〜
- 2.学習計画
- 3.実践例
- 4.評価について
- 5.おわりに
- 4年「福祉」/ 一人ひとりが互いに手をたずさえて
- 1.はじめに
- 2.学習計画
- 3.豊かな人間関係を培うために大切にしたいこと(人の気持ちにせまる学習)
- 4.「体験をもとにした学習ステージで豊かな人間関係を培う学習」
- 5.成果と課題
- 5年「環境」/ 地球環境と私たちの暮らし〜COSMO学習〜
- 1.地球環境と私たちの暮らしを考えるCOSMO学習とは
- 2.「豊かな人間関係を培う」授業構想の視点
- 3.年間計画について
- 4.地球環境と私たちの暮らしを見つめる学習―「感じる」―
- 5.地球環境と私たちの暮らしを見つめる学習―「知る」―
- 6.地球環境と私たちの暮らしを見つめる学習―「行動する」―
- 7.昨年度のCOSMO学習〜国際理解の目を通して〜
- 8.おわりに
- 6年「健康」/ 「生きる力」を育む「COCOROGY」学習
- 1.いま,なぜ「COCOROGY]学習なのか?
- 2.年間計画
- 3.実践例自分の生活を見直そう―「テレビとの付き合い方を考えよう」―
- 4.実践例自分の体力づくりをめざそう
- 5.実践例やさしく豊かな心を育てよう
- 6.おわりに
- まとめ/ 今後の研究課題
- 「想像から創造へ」創造性教育の歩み
はじめに
私たちは国際化あるいは情報化といわれる時代にあって,世界のさまざまな現象に好むと好まざるとに関わらず組み込まれています。人事交流に加え,各種メディア機器の発達がいっそうそうした事態を押し進め,知らず知らずのうちにいわゆる異文化に浸っています。
異文化を意識する場合,端的にいって憧れの思いを持つか,蔑視するか,両極の接し方があります。しかし,憧れや過大評価,または蔑視の域を超え,冷静な客観的評価ができるようになった段階ではじめて異文化を理解したといえましょう。
2年前のこと,New Orleans に住む友人夫妻が娘の Manya を連れてわが家へやって来ました。ランチを共にした時のことです。6歳の Manya が「うさぎ」をかたどった箸置きにいたく興味を示しました。そこでお土産にその箸置きをプレゼントすることにしました。1匹の「うさぎ」では寂しかろうと5客分を贈りました。
彼女は New Orleans に帰ってから母親に,この「うさぎ」は何故6匹でなく5匹なのか,という問いを投げかけました。十二進法の生活習慣の中にあって5客が1セットになっている日本の文化に疑問を抱いたことになります。この出来事が彼女に探究心を起こさせ,入学したばかりの小学校で日本人が食事の折に箸置きを用い,それも多彩な箸置きを使っている,と大げさにいえば日本文化についての話をクラスメートにしたそうです。
いかなる文化も周知のように人間が創りあげてきました。その多様な人間の営為の中で,ほんの些細な事柄でも子どもたちは敏感な感性を働かせてくれます。異文化に対しての単なる評価は偏見に過ぎません。理解は偏見を止揚したところに生まれます。他者と己が一体になれば,自ずと豊かな人間関係が築かれましょう。
本校の第17次「創造教育研究」は,「豊かな人間関係を培う子ども」をめざして各学年ごとに取り組んでいます。そして,アデレードのベレール小学校,上海師範大学附属小学校,釜山の土城初等学校との交流をはじめました。交流は緒についたばかりです。いずれ子どもたちどうしが行き交うようになる時,今次の研究授業の成果が具現化されるものと確信しています。
今回の研究発表に際しまして,ご指導やご協力をいただいた京都府・京都市教育委員会,京都教育大学,留学生,本校諸先輩の皆様方ならびに,本書の刊行についてご高配をいただいた明治図書の江部 満,樋口雅子の両氏に深く感謝いたします。
1998年 9月 京都教育大学教育学部附属桃山小学校長 /脇坂 淳
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- 明治図書