学校の共同研究「総合的な学習」の提案奈良の学習法 総合的な学習づくりのすべてがわかる

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「奈良の学習法」の立場とその主張/総合的な「しごと」学習の展開/「生きる力」を育てる学習の総合的展開など総合的な学習の展開例を紹介。


復刊時予価: 2,915円(税込)

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電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-261012-1
ジャンル:
総合的な学習
刊行:
7刷
対象:
小学校
仕様:
B5判 210頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

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まえがき
第T章 「奈良の学習法」の立場とその主張
§1 今,この子が生きる学校
1 自由教育の伝統が生きる学校
2 子どもが生きる学校
3 子どもがつくる学校
4 子どものための学校
§2 「奈良の学習法」の本源とその展開
1 「奈良の学習法」とは
2 『学習原論』に見る「学習」の意義
3 合科学習の開拓と展開
4 木下竹次の退官と国民学校時代
§3 戦後における「奈良の学習法」の再建
1 戦後,新教育に向かって再出発
2 新しい教育計画「奈良プラン」の樹立
3 「しごと」「けいこ」「なかよし」
4 「学習法」の実践と主張
§4 総合・合科への志向と「奈良の学習法」
1 総合・合科への志向とその経緯
2 「学習法」が備え持つ総合性
3 総合的な学習が目指していること
4 総合的な学習への期待と可能性

まえがき

 世紀変わり目の昨今,21世紀を展望しつつ,我が国における教育のあり方をめぐって,論議が活発化する様相を呈している。受験競争加熱の問題や,不登校やいじめの問題を内在する管理主義的な教育への反省や,過密化したゆとりのない学習内容への修正の必要性などが,種々論議されてきている。このことはまた,新たな社会的・時代的ニーズというべき,国際理解教育や環境教育,あるいは情報教育の課題への取り組みの必要性についても同様である。

 こうした様相の中で,とりわけ,子どもの「生きる力」をはぐくむことの重要さが,改めて強調されるようになってきたことが注目される。たとえば,第15期中央教育審議会による,横断的・総合的な指導を推進していくための「総合的な学習」の提言などが,この具体的なはずみとなったように思われる。ともあれ,喜々として学ぶ,生き生きした子どもづくりに対応しようとするこの種の論議には,既存の教科の垣根を取り払おうとする意向とか,既存の教科カリキュラムの枠組みに基づく教育を見直そうとする意向が含まれており,また同時に,子どもを学習主体とする,子どもの自発性や自律性に立脚する学習法への問いかけが,不可避的にかかわっている。

 さて,私どもの奈良女子大学文学部附属小学校の教育は,古くは大正自由主義教育に遡るものであり,当時木下竹次によって提唱された「合科学習」こそは,まさに本校における,いわゆる「総合的な学習」への取り組みのはじまりを意味するものと考えている。この合科学習の理念は,第二次世界大戦後に至っては,新教育の中で重松鷹泰を中心に構想された「奈良プラン」の,「しごと」「けいこ」「なかよし」のカリキュラム構成に基づく学習,とりわけその「しごと」学習に引き継がれてきているのであり,現在に至っている。

 このような本校の歴史をかえりみると,実に80年余りにわたって本校において実践されてきた教育は,まぎれもなく児童中心主義の自律的学習法に基づく総合的な学習に他ならない,と自負せざるを得ない。もとより本校で永年積み上げてきたこの総合的な学習は,単に既成の教科学習を前提に,合教科的な総合化を目指すようなものではなかった。本論中で詳しく触れるように,いわば子どもの経験や表現を大切にする,トータルな彼らの生活に立脚して構想される総合的な学習というべきものであった。

 このたび本書を出版することになったが,それは昨今の教育のありかたをめぐる論議,とりわけ「総合的な学習」のありかたをめぐる論議への手がかりが,古くてまた新しい,我々のこの「奈良の学習法」に求めることができると考えたことによる。本書を読まれる皆さんの,忌憚のないご意見やご批判を賜れば幸甚である。


  奈良女子大学文学部附属小学校   校長 /小田切 毅一

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