支援の技術シリーズ44「考える習慣」で思考力を伸ばす 中学年

投票受付中

考える習慣づくりの年間見通し,考える習慣を育てる上手なほめ方・励まし方,考える習慣が身につかない子へのアドバイス,授業での追い込み等


復刊時予価: 2,156円(税込)

送料・代引手数料無料

電子書籍版: なし

ISBN:
4-18-261403-8
ジャンル:
授業全般
刊行:
対象:
小学校
仕様:
B5判 104頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

もくじ

もくじの詳細表示

まえがき
T「考える習慣」を身につけさせるために
1 思考力の低下は授業のせいである
2 「考える習慣」が身につかないのは、教師が教え込もうとしているからだ
3 「問題を見つけさせる」ことが何よりも大切
4 子どものこだわりを大切にする
5 体験させることによって確かめさせる
U発達段階別「考える習慣」づくりの決め手
1 「考える習慣」づくりのステップ
2 「考える習慣」づくり、究極の決め手
V「考える習慣」づくりの年間の見通し
1 「考える習慣」をつけるために
2 どのような場面で考えさせるか
3 どんなことを考えさせるか
4 どのようにして考えさせるか
5 「考える習慣」づくり年間の見通しについて
W「考える習慣」を育てる上手なほめ方・励まし方
1 発問―応答―ほめるという流れの中で思考力が育つ
2 きれいに書いたノートをほめる
X考える習慣が身につかない子へのアドバイス
1 考えていないなあと感じるとき
2 基本的方針
3 アドバイスの実際
4 ノート指導の工夫
Y授業で「考えさせる」追い込みのテクニック
◆国語科授業で「考えさせる」追い込み方
1 日記で考えさせる
2 聞くことで考えさせる
3 文章の読み取りの中で考えさせる
4 川柳づくりで考えさせる
◆社会科授業で「考えさせる」追い込み方
1 子どもに身近な話題の提示の仕方
2 見る力を育てる提示の仕方
3 カード操作について
4 仕組み図について
◆算数科授業で「考えさせる」追い込み方
1 全員確認の原則を貫く
2 まずい方法を教師が提案し、反論させる
3 子どもの頭にすっと入る方法を教える
4 思考へと追い込むための条件整備
5 計算問題は文章題に置き換え、図をかいて解かせる
6 文章題―変化のある繰り返しでタイプのちがいを考えさせる
◆理科授業で「考えさせる」追い込み方
1 4年「水の3つのすがた」の授業
2 3年「まめ電球とかん電池」の授業
3 4年「てんびん」の授業
4 4年「流れる水のはたらき」の授業
◆道徳授業で「考えさせる」追い込み方
1 道徳は眠い
2 考えさせる授業の例
◆「総合的な学習」授業で「考えさせる」追い込み方
1 近未来のことを考えさせる
2 「電気はなくならないのか」4年での授業(1時間目)
3 電気の材料は何かを考えさせる
4 発電所の見学
5 大停電にならないために
Zサークルからの提案「考える習慣」はこうすればつく
1 考える習慣のもとになるもの
2 見る習慣を身につけさせるために
3 問題を発見する習慣を身につけさせるために
4 考える習慣をどのようにして、身につけさせるか
あとがき

まえがき

 子どもたちの考える力が弱くなってきていることがいろいろなところで話題になっている。

 J・ハーリーの『滅びゆく思考力』(大修館書店)という本の中にも、その実態が衝撃的に述べられている。

 学習をしていて、時間がかかることや面倒なことに直面すると、すぐに諦めてしまうというのである。

 確かに授業をしていても、こんな子が増えてきているような気がする。

 深刻な問題である。

 だが、待って欲しい。

 「こういった子どもを育ててきたのは、いったい誰なのか」ということである。それは、まぎれもなく教師自身である。


 三年生の理科の授業をしていたときのことである。

 子どもたちは、へちま、ひょうたん、ひまわりなどを育てていた。

 その観察を授業ですることになった。

 ある日、子どもたちが観察に出かける前に私はこんなことを言った。

 「虫めがねを使いたい人は使ってもかまいません。後ろの戸棚に入っています」

 子どものほうから使いたいと言ってきたわけではない。虫めがねがあったほうが細かい所まで見れるので便利だろうという「親切心」から言ったのである。

 ほとんどの子どもが虫めがねを持って、外に出かけた。ところが、私の「親切心」はものの見事に裏切られた。

 虫めがねで光を集めたり、手を見たりしている子がたくさんいたからである。

 植物の様子を観察している子は、ほとんどいなかった。

 私は、そういった子どもたちに注意をしたが、ほとんど効き目はなかった。

 なぜか。

 その原因をいろいろと考えてみた。そして、行き着いたことは次のことであった。

 「子どもたちに虫めがねを使いたいという欲求がないのに、与えてしまった」

 この場合、虫めがねは別になくても観察はできたのである。それなのに、教師から与えられた。子どもたちからすれば、虫めがねで光を集めたりするほうが面白いに決まっている。こういった行動が出てくるのは当然であったのである。

 教師の不要な「親切心」が、子どもの観察意欲、そして、考える力をも奪ってしまったのである。

 後で、この場合どうすればよかったのかを考えてみた。

 自分なりに出した結論。

 それは、「子どもが虫めがねを使わなくてはならない状況に追い込む」ということであった。

 それから半年。

 子どもたちは遮光板を片手に太陽を観察している。

 ある女の子が私の所に来て言った。

 「先生、こちらの方向は?」

 私は聞き返した。

 「どうしたら分かるかね」

 その子は、回りにいた子といろいろと相談しながら方位磁石が必要だということに気づいた。その子は、方位磁石を持っていろいろと調べ始めた。

 自分のやりたい、知りたい、調べたいことがはっきりしてくると、子どもたちは自分で必要な物を求め、動き始めることを改めて思い知らされた場面であった。


 子どもたちに考える習慣を身につけさせていくにも、教師の適切な支援が必要である。

 「教えよう」「与えよう」という意識のみが強くては考える力は育たない。

 この本は、「子どもたちが考える習慣を身につけていくためにどういった支援が有効であるか」をまとめたものである。

 いずれも実践を通してのものである。

 お読みいただき、お気づきの点を教えていただけたらと思う。


   /戸井 和彦

    • この商品は皆様からのご感想・ご意見を募集中です

      明治図書

ページトップへ