- はじめに
- 第1章 子どもの学び
- 1 子どもの学びと総合的な学習
- 1 創造性教育と総合的な学習
- 2 前回の研究と総合的な学習
- 3 大切にしたいこと
- 4 学びを創り出す
- 2 主題に迫るアプローチ
- 1 テーマ(主題)
- 2 ウェビング
- 3 トピック(話題)
- 4 活動の時間と形態
- 5 評 価
- 6 単元・カリキュラム評価
- 3 研究を通して見えてきたもの
- 第2章 学びを創り出す子
- 1年 「みんななかよく」
- 1 はじめに
- 2 学習の構想
- 1 子どもの学びを通して見えてきたものから
- 2 自発的な学習が深まる場へ
- 3 年間計画
- 4 実践内容
- 1 トピック「なかよくなるものをみつけよう」
- 2 トピック「みつけたものとなかよくなろう」
- 3 トピック「あそびランドをつくろう」
- 5 今,見えてきたもの
- 1 子どもと思いを共有できる感性
- 2 過程を見取ることの大事さ
- 3 子どもたちの追究のエネルギー
- 2年 「生きものとふれあう」
- 1 はじめに
- 2 年間計画
- 3 実践内容
- 1 学習の構想
- 2 トピック「ふれあいランドを作ろう」
- 4 今,見えてきたもの
- 3年 「自然たんけん」
- 1 テーマについて
- 2 年間計画
- 3 実践内容
- 1 学習の構想
- 2 トピック「プールたんけん」と「観察池たんけん」(1学期)
- 3 「じっくり見る力」と「自然の不思議に気づく感性」を育てるコンテナビオトープ
- 4 今,見えてきたもの
- 1 人間と自然との関係を見つめ直す
- 2 教えられたこと
- 4年 「人とのふれあい」
- 1 テーマについて
- 2 年間計画
- 3 実践内容
- 1 学習の構想
- 2 養護学校へ行って遊ぼう
- 3 ウォータースライダーをしよう
- 4 運動会の応援をしよう
- 5 さまざまな人に目を向けて
- 4 今,見えてきたもの
- 5年 「私たちと身近な環境」
- 1 はじめに
- 1 環境問題と子どもたちの意識
- 2 テーマ「私たちと身近な環境」を進めるに当たって
- 2 年間計画
- 3 実践内容
- 1 トピック「川へ行こう」
- 2 トピック「環境問題の中で自分にできることを見つけよう」
- 4 今,見えてきたもの
- 6年 「心とからだ」
- 1 テーマについて
- 2 年間計画
- 3 実践内容
- 1 1組の取り組みから
- 2 2組の取り組みから
- 3 「HipHopにトライ!」(音楽科)の実践
- 4 今,見えてきたもの
- まとめ 今後の研究課題
- 「想像から創造へ」創造性教育の歩み
はじめに
昨今,「総合的な学習の時間」に向けての研究や試みが各方面で盛んに行われています。本校の「創造性教育」研究も第18次を迎え,私たちも「子どもの学びと総合的な学習」をテーマに研鑽を積んでまいりました。
学び方やものの考え方を身につけ,問題解決や探求活動に主体的,創造的に取り組む態度を育み,自己の生き方を考えることのできるように,というのが「総合的な学習の時間」に寄せられる期待になっています。子どもたちが自ら課題を見つけ,学び,考え,そして的確な判断をくだせる資質や能力を育む教育は,本校の「創造性教育」が長年培ってきた路線上そのものであります。
私はいま,南海のしゅくさんと北海の忽(こつ)さんが時おり中央の混沌さんの地で出会った時の話を思い浮かべます。混沌さんはとても手厚く彼らをもてなしました。 しゅくさんと忽さんはその混沌さんの厚遇にむくいようと相談し,「人はだれにも(目と耳と鼻と口の)七つの穴があり,それで見たり聞いたり食べたり息をしたりしているが,混沌さんにはそれがない。のっぺらぼうの混沌さんにその穴をあけてあげよう」ということになります。そこで一日に一つずつ穴をあけていきました。七つの穴をあけ終わった途端,混沌さんは死んでしまいました。
「しゅく」も「忽」も迅速を意味して,すばやく機敏なことから人間的有為に例えられ,「混沌」は未分化の総合態を指しています。人間の有為のさかしらさが自然の純朴さを破壊することを象徴的に説いた『荘子』の寓話です。この件は教育にも当てはまりましょう。
主人公の子どもとその周りにいる教師が汗を流しながら共に創りあげていく,それが授業です。楽しみの心を忘れず,創造意欲を奮い立たせるような「子どもありきの総合的な学習」研究を進めてまいりました。が,「総合的な学習」に対しては未だ私たちの中に迷いや模糊としたところが横たわっています。性急なあまり混沌さんのように子どもたちの創造意欲を死滅させてしまっては元も子もありません。じっくりと21世紀を担ってくれる子どもたちを育てていきたいものです。その一里塚に本書がなってくれれば望外の喜びです。
今回の研究発表に際して,京都府・京都市教育委員会,京都教育大学,本校諸先輩の皆様方に多大なご指導ご協力をいただきました。また,本書の刊行は明治図書の樋口雅子氏のご高配によるものです。あわせて深く感謝申し上げます。
2001年2月 京都教育大学教育学部附属桃山小学校長 /脇坂 淳
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- 明治図書