- はじめに なぜ、今学びのエンサイクロペディアなのか
- 「共生」という編集の創造的形
- ―本書の意味と編集のシステム(鮮生する編集ネットワーク)
- 学びの検証・提言1 蓄積のデザインこそ課題
- 創造授業・提言2 授業モデルの発見と構築
- ―3つのプロトタイプ
- 新たな観点の発見 新しい人間観・人生観・社会観の発見
- ―作品世界との出会い
- 地域のものや人々の魅力発見 ふるさとを誇り、大切にする大人達の思い
- ―郷土愛という価値の発見
- ドラマの発見できる学級づくり/話し合える人間関係発見と解決の共生 自分達で学級の問題を発見し、自分たちで解決する力をつけていく
- 提案はテーマ発見が原動力 帰りの会の在り方への提案
- ―本音で語り合える帰りの会が人間関係をつくる
- 流れるようなリズム感の中での発見 自然な形で問題発見
- ―トピック教材「対称」より
- 身体感覚を使って発見する 体を動かす楽しさ発見
- ―「ひらこう体と心」より
- 「なぜ」「なに」の常住こそ発見の日常化 「不思議発見」が意欲の始まり
- ―平行四辺形の面積より
- 子どもが本当にわかったときの発見
- ―教師の感性
- 心に残る子どもの言葉(生涯忘れえぬ感激の瞬間)―心にしみる感激の理由
- (1) その子なりの理解の重み……先生あのね、朝顔の緑の種は「アカチャン」だから子ども産めないんだね。
- (2) 将来への展望の開花したとき……先生、おれねー結婚して家を建てるときは、絶対こういう場所には建てないぞ。
- (3) 自分の目で見、考えられることの気づき…赤と青の絵の具を混ぜると紫色になるでしょう。この実験の結果はそれと同じようなものだと思うんだけど…。
- (4) 認識の大きな枠組みの出来たとき……自由ってちょっぴり大変だけど、でもやっぱりいいでーす。
- (5) 主体的発想の力……今日は私のすごい記念日です。本当です。先生信じて下さい。
- よさを発見することこそ原点 人はわかり合えるのでしょうか
- ―愛され続ける「ごんぎつね」の魅力発見
- 参加型発見・身体で参加する 自分づくり自分発見 なりたいな、ボランティア
- ―総合的な学習の時間
- 歴史から学び歴史の創造力を現代に生かす 歴史学習の面白さ発見へのアプローチ
- ―楽しさや親近感をもてる歴史学習
- 遊びの工夫から発見 遊びの中から表現する楽しさを味わう
- ―君のサイレンはどんな音?
- 自らの「ものづくり」からの発見 発見した手作りの楽器の魅力で相対的な音感を磨く
- ―コップと水で奏でる音楽
- 発見の連鎖による発見 追究したくなるような「疑問」をもつ
- ―ものの温まり方と体積
- 「ものづくり」のプロセス―電気のはたらきからの発見 おもちゃ作りを通して問題を発見する
- ―ものづくりが学びになぜ必要か
- 仮説による発見 一つの投げ掛けから自己課題が生まれる
- ―もし見えなくなってしまったら…
- 提言3 ある・なる・するの教育論
- 提言4 問題のいしずえは、授業にある
- ―自ら問題を発見し、学びとる構造を仕組む
- なぜフィンランドは真の学力が伸びたのか?
- ―メディアリテラシー能力の育成
- 具体化の手法・図式 問題発見のためのデザインフォーマット
- 発見のポイント・キーワード 生きる力をつける問題発見学習・キーワード /杉山 明博
- 真のディスコースが自己形成・問題発見につながる
- 時間の「時」化
- 問題発見力は創造力
- 創造的な学びの共同体づくり
- 共通感覚
- 原理・法則発見のためのイニシアチブのバランスを保つ感性
- 教師には特色あるドラマの演出者としての「技」が必要
- 教師の生き方再発見 天才・教師・研究者たちの語録 /大橋 智之
- おわりに 教育デザイン研究に期待する
はじめに――なぜ、今学びのエンサイクロペディアなのか
本書は、現代の教育課程や学びの現場で不可欠の原則的な用語、「問題を発見する」「調べる」「発表する」「読む」などのキーワード一つ一つを実践現場で役立つよう具体的な手法の提示をし、考えられたものである。授業ベースの展開を基本とし、他の分野や研究にも適応ができるよう、汎用性のあるプロトタイプを提示し、学びのエンサイクロペディアとして総合的な視点から編集した。
教師は学習のデザイナーといった視点から、編集に当たり、デザイン的な切り口として、教育理論や実践に基づいた図式化や思考のプロセスと構造図、具体化や即戦力に繋がるデザインフォーマット(考え方が具体的授業で使用出来るためのベースとなるもの)をふんだんに取り入れて、今まで試みられていない編集方法をとった。視覚的に読解しやすく、実践に役立てられるよう色々と配慮を盛り込んだ。
今日、経済のグローバリゼーション、国際化・情報化などによる、変革の時代への突入は、日々の変化と共存しながら、不安をかかえて生きなければならない不確かな時代となっている。
そんな状況での教育の果たす役割は、自らテーマを発見し、解決していく、創造的な思考力を持った人間の育成にある。さらに、やさしさや思いやりを失いつつある人間の砂漠化をとりもどすための、美や人格に対する感性をもった創造的人格を同時に持ち合わせた子供たちの形成こそ課題である。
速く解くことよりも、より確かなものとして、深く掘り下げ、新しい価値や生きる意味を生み出す「生きる力」の学びが大切となってきている。知的能力と人格的能力とが一体化された総合力が要求される時代である。
今、学校の個性化とともに、ゆとりある教育による一人一人のための一つずつの学びが要求されている。ゆとりは、一人一人への配慮を生み、忙しさの中で、忘れがちな一隅の生へ「光」をあてることが可能となる。
学力は見えにくい成果を視覚化されうるデータとして、目に見えるもので提示しなければならない。
教科専門をたて軸に、教科間の関係や他との結がり、広義には人物、地域、社会、異文化、出来事などとの関係をよこ軸に、たてよこをリンクしてフレームを構築しネットワークをしっかり形成して、一人一人異なった「力」を持った子どもたちを育てなければならない。
教師においても、情熱をもって日々現場に立ちながら、明日にもやめたいといった矛盾の共存する中で、「教師おこし(静岡大学教育学部附属小学校の研究の過程で生まれた言葉。教師が自分をふり返り、子どもの思いとのずれによる葛藤のなかで自分自身を見つめ直す営み)」を具体的にプログラミング化し、教師の潜在性をも喚起して、評価にたえうる魅力的な教師創造にも目を向けなければならない。特色ある学校づくり、クラスづくり、子どもづくりに役立つ事典として編集した。
複合的な状況の中で、真に「生きる力」をもった子どもや教師、保護者、教師を目指す人のために、さらに、日常のドラマに夢を込める多くの人々のためにも「学びのエンサイクロペディア」を活用し、役立てられることを願いたい。
/杉山 明博
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