- シリーズ発刊に寄せて
- シリーズの読み方
- まえがき
- 第1章 「中学校」という教育段階を理解する
- 1 「中学校」という教育段階の特徴
- 2 中学1年生が一番大事!ここから始める生徒指導
- 1 2:6:2
- 2 中間層には2種類の生徒がいる
- 3 上位層2割を育てて中間層6割を感化する
- 3 人として尊く生きること
- 第2章 3月 良質なチームの中で強い個人を育てる
- 第3章 4月〜5月 ルールづくり システムづくり 関係づくり
- 1 入学式前 学級発表
- 1 学級,名簿のナンバーを覚えさせる
- 2 初めての学年集会
- 2 入学式当日
- 1 教室環境を点検する
- 2 教室で入学式の練習
- 3 入学式直後 保護者が見ている初めての学活
- 1 「楽しそうな先生」だと思わせる
- 2 保護者への第一印象を意識する
- 4 学級開き〜最初の1週間
- 1 ルールづくり 安心安全の土台をつくる
- 2 システムづくり 自治的集団への第一歩
- 3 関係づくり 生徒同士をつなげる
- 4 関わらせる&リーダーを「見える化」する
- 5 最初の1か月でルールとシステムを定着させる
- 1 ルールづくり 具体的行為行動の指示
- 2 システムづくり 「担任不要」のシステムを構築する
- 3 関係づくり 話し合い活動の導入
- 6 学級懇談会 初めての保護者との語らい
- 第4章 6月〜7月 「魔の6月」に備える
- 1 関係づくりの点検 いじめのリスクが高まる6月
- 1 いじめの予防
- 2 いじめの治療
- 2 ルールの点検 問題行動への対応
- 1 アメちゃん登場
- 2 失敗に強い人にする 失敗に強い学級にする
- 3 みんなで寄ってたかって生徒指導
- 3 定期テストへの戦略
- 1 小学校のテストと中学校のテストの違い
- 2 自主学習の習慣づくり
- 3 伝えたいこと「失敗しない人より失敗に強い人に」
- 4 部活動に対して担任がするべきこと
- 1 中学生の育ちは「憧れ」でできている
- 2 部活動顧問と立ち話
- 第5章 夏休み 学級担任 ちょっと休憩
- 1 夏休み前の指導
- 2 秘密の宿題「secret mission」
- 3 部活動顧問にお願いする
- 4 家庭訪問 育ちのベースを感じに行く
- コラム 学級経営戦略会議
- 第6章 9月〜10月 学級生活再スタート
- 1 学級に戻らせる
- 2 見通しをもつ・もたせる
- 3 体育祭を活かす
- 1 勝利のための課題を全員で解決するチャンスにする
- 2 学級メンバーのもつよさを見える化する
- 3 先輩に憧れをもたせる
- 4 ルールとシステム その意義を内在化させる
- 5 部活動で「先輩」への準備をさせる
- 1 選手になる1年生 なれない1年生
- 2 壮行会で一人前にする
- コラム 教科担任とタッグを組む
- 第7章 11月〜12月 行事を使って育てる
- 1 合唱コンクールは2つの視点で
- 1 芸術としての合唱
- 2 協働場面としての合唱
- 2 合唱づくりに効く2つの視点
- 1 効く言葉「声量と隣の人への信頼度は比例する」
- 2 先輩に憧れをもたせる
- 3 生徒会選挙 来年度の学校を見据える
- 1 選挙権を行使させる
- 2 被選挙権を行使させる 来年度への助走
- 第8章 冬休み 学級経営の総点検
- 1 ゴールを見据える
- 2 認める
- 3 つなげる
- 4 自立させる
- コラム 生徒指導は気力・体力・?力
- 第9章 1月〜2月 集団づくり最終形態
- 1 良質な集団の中で強い個を育てる
- 2 クラス会議 個人のお悩み相談会
- 3 ゴールの姿 課題解決の最高潮「学年フェスタ」
- 1 学年フェスタの概要
- 2 本取り組みで生徒に求められる資質・能力
- 3 「7年生」の自覚
- 4 教室に巨大迷路出現「Hi-Hi迷宮」
- 5 他者への貢献意識
- 4 教師の仕事
- 第10章 1年間を乗り切るコツ 1年間を乗り切るコツ
- 1 安心と安全をつくるルールの先出し
- 2 変えられることにコストをかける
- 3 学年部に貢献し,依存する
- 4 手ごたえを数値化する 「何となく」を「やっぱり!」に
- 5 極論「死ななければいい」「休まなければいい」
- 第11章 学級集団づくりチェックポイント20
- 〜チームに育てるための定期点検リスト〜
- 1 学級集団づくりにも定期点検を
- 2 学級集団づくりチェックリスト
- 3 いつも自分のあり方を見つめながら学級を見る
- あとがき
まえがき
学校を荒らさない。
私が一番大切にしている考え方です。学級経営も教科経営も校内研究も,その目標はいろいろあって構いませんが,目的は「学校を荒らさない」ことに行き着くと,実感をもって解釈しています。
学校が荒れると何が起こるでしょうか。一部の問題行動を起こす子どもたちが集団の空気を牛耳るようになります。中間層の子どもたちは委縮します。そしてそれをコントロールできない教師たちを蔑視します。教師に期待しなくなります。教師ではなく,教師「たち」をなのです。教師間に不協和音が流れます。
「何でもっと厳しく指導しないのですか?」
「生徒指導部は何をやっているんだ!」
職員室に安心感をベースにした協働の雰囲気はなくなります。個々が「自分の最低限の仕事」に埋没します。
大学の附属学校などを除けば,中学校は地域の中の学校です。中には,地域内の全戸から後援金をいただいているところもあるでしょう。学校が荒れると,本来的には学校の応援団である地域からこう思われます。
「あの学校はダメだ。あの学校の教師『たち』はダメだ」
一度そうなると,どんなに学校に秩序が再構築されたとしても,私の感覚では,最低5年は「あの学校は荒れているらしい」と噂されることになります。小学校でどの中学校に行くか選択できる環境にある場合には,その噂がダイレクトに次年度の入学者数に表れます。ある年には,卒業生10名の小規模小学校から,私の勤務した学校に来た生徒はたったの2人。そして,生徒指導主事をしていた私は,ある保護者にこう言われました。
「おたくの学校に,うちの子どもを預けるわけにはいきませんので」
学力向上が叫ばれる昨今。大学入試改革とセットで,アクティブ・ラーニングが中学校段階にも要求されています。しかし,それらが現実的に機能するためには,学校にある程度の秩序が保たれている状態が必要なのです。荒れている学校では,教師にそんなことを考える余裕はありません。学力向上どころではないのです。
学校の教育効果を高めるには,前提が必要なのです。
その基礎は「集団づくり」にあります。中学校における集団とは,全校>学年>学級という単位で表現できるでしょう。学級を意図的につくるのです。その目標は「学校を荒らさない」こと。そしてその目的は,ある程度秩序の保たれた教育環境の中で「個の育ちを保証する」ことにあります。
20年弱の中学校教師経験で強く思うことがあります。それは,
中学校3年間の学校生活の質は,中学1年生で決まる
ということです。
では,学校を荒らさないために生徒たちを規則で縛り上げればいいのでしょうか。大人の言うことを聞かせることにすべてのコストをかければいいのでしょうか。
荒れの真っただ中にある場合,一時的にはそれが必要なときもあります。しかし,それは過程であって到達点ではありません。それに終始する指導は,次の荒れを生む温床になります。
学校を荒らさず,個が伸びる集団をつくるためには,何をするべきなのか。何をするべきではないのか。具体とその目的について,教職20年弱の現在伸び盛り?の私と,中学校における学級経営を一緒に考えていただければ幸いです。
/岡田 敏哉
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- 明治図書
- よい2021/2/2520代・中学校教員
- とてもためになりました。2020/5/3020代・中学校教員
- すぐに実践できる内容がたくさんあり、助かりました。2019/4/330代・中学校教員
- 学級経営をするうえで参考になった2018/10/720代・中学校教員