- Preface/はじめに
- 第1章 クラス全員が熱中する授業づくりの基礎・基本
- 1 「熱中」は「実態×背伸び×成果」で生み出す!
- 2 全員参加できる安心の言語活動を保障する
- 3 「やってみたい!」「何だろう?」で発火の一石を投じる
- 4 自分の意思で頑張っている感覚を持たせる
- 5 ユーモアに富んだ意見が対話的な学習を押し進める
- 第2章 クラス全員が参加する授業づくりスキル&パーツ
- 教材研究・教材づくり
- 1 教材研究の基盤を整える
- 2「指導事項―子供の興味・関心―言語活動」をつなげる
- 3 螺旋型の展開で学習が生きる単元を計画する
- 4 教材はねらいを絞ってシンプルにつくる
- 5 「授業マンダラ」で不備・不足・不十分を見つめる
- 対話的な活動
- 6 広げる?絞る?教師がイメージを明確にする
- 7 学習の段階を捉えて対話的な活動を設定する
- 8 「ペアローテーション」で一人一人の対話する力を高める
- 発問
- 9 一問一答ではなく,一問多答にする
- 10 「発問+○○をする」で一人一人の立場を「見える化」する
- 11 3つの発問「どこで?」「なぜ?」「どれか?」で対話を生み出す
- 発表・指名
- 12 「発表したい!」「発信したい!」という子供のやる気を掘り起こす
- 13 参加率2倍!3倍!の指名の仕方
- 板書
- 14 黒板を「子供が学ぶために自ら使う道具」にする「参加型板書」
- 15 「解く」「創る」「比べる」「参考にする」参加型板書4つの機能
- 16 今すぐできる!「参加型板書」基本の3ステップ
- ノート指導
- 17 ノートは考える基地!ノート検定でレベルアップ
- 18 「書くのは楽しい!」と思える授業を仕組む
- 教室環境づくり
- 19 飾りの掲示物はNo! 共有・確認・参考のための掲示をする
- 20 授業における教師と子供の動線を整える
- 振り返り活動
- 21 感想から脱皮! 何について,どのように振り返るかを明確にする
- 22 振り返りを生かし,学びに対する自信を持たせる
- ICT活用
- 23 デジカメ,プリンタ,タブレットは係活動でシステム化する
- 情報の扱い方
- 24 ポスター,新聞,実の場に生きる学習で熱中度UP!
- 25 子供が必然性を持って情報を整理する単元を仕組む
- 26 「囲む」「つなぐ」情報の整理の仕方を体験する
- 語彙指導
- 27 小単元をアレンジして言葉を考える楽しさを知る
- 28 俳句や詩を作る学習は,言葉を見つめるチャンス!
- 29 「気に入った言葉」を集めて物語づくりに生かす
- 第3章 クラス全員が熱中する話すこと・聞くこと,書くこと,読むことの指導スキル&パーツ
- 話すこと・聞くこと
- ・低学年
- 30 「できる!」と言いつつ難しい時期に成功体験を繰り返す
- 31 「尋ねる・そそのかす・わざと間違う」で全員参加させる
- 32 クイズやゲームで話したり聞いたりすることを楽しむ
- ・中学年
- 33 目的を持ち,伝え合いたくなる言語活動で鍛える
- 34 ペア,グループ,全体!目的に応じた形態を選ぶ
- 35 聞くことをメモで見える化し,ほめて広める
- ・高学年
- 36 よい話し方や聞き方を共有してクラスの文化にする
- 37 生きた教材と本格プレゼンが自信につながる
- 38 自分たちで話し合いたいテーマを決めて討論会を開く
- 書くこと
- ・低学年
- 39 「先生ちがーう!」子供たち大興奮の平仮名・漢字指導
- 40 「視写プリント」で段階的に書く練習をする
- 41 スモールステップで書く機会を見通す
- ・中学年
- 42 書くために重要な書く前のプロセス
- 43 「題名」「書き出し」を共有することで工夫する
- 44 読み合い,よさを述べ合う機会が肯定感を育む
- ・高学年
- 45 子供イキイキ!読んでほしい相手を選んで書く
- 46 短歌や俳句は「プチ吟行」と手直しを取り入れる
- 47 随筆を書いて「紙上ブログ交流会」
- 読むこと
- ・低学年
- 48 低学年の音読は変化をつけて繰り返す
- 49 本好きがいっぱいになる毎時の読み聞かせクイズ
- 50 場面に着目した音読劇+動作化で想像する
- ・中学年
- 51 子供の思いと教師の意図をつなぐ授業をつくる
- 52 第2次の学習を精選し,第3次で応用できる力を付ける
- ・高学年
- 53 朗読一つで登場人物の心情が異なることを考えさせる
- 54 どの子も熱中!群読で読みを創り出す
- 55 一つの教材から広げて読むことで深く考える
- Afterword/おわりに
Preface/はじめに
「楽しくて,あっという間だった!」「明日もやりたい!」教師であれば,子供たちからこのような反応が返ってくる国語の授業を,誰でも一度は行ってみたいと思ったことがあるのではないでしょうか。
「楽しく力が付く国語」。これが私の信条です。子供たちの資質や能力を高めるのは当然の使命です。そのことを肝に銘じた上で,国語の授業が,子供たちにとって熱中できるものであってほしいと願っています。それが,今日求められている「学びに向かう力」を高めることにつながると考えています。
国語の授業は1週間の中で最も多く行われます。しかしながら,子供たちには,あまり充実したものとは受け止められていないようです。ある年度の全国学力・学習状況調査における6年生へのアンケート結果を見ると「国語の勉強は好きですか?」という質問に対して「好き」と答えた全国の割合は,25.7%でした。それに対して,当時,国語専科である私が担当していた3クラス104名の6年生たちの割合は,「好き」77.9%。「どちらかといえば好き」という割合も入れると96.2%。全国と実に50%以上も違いがありました。この数値から,104名の子供たちが,毎日の国語に対して非常に高い割合で肯定的に受け止めてくれていることが分かりました。
また,私が国語専科と同時に研究主任として勤めてきた学校では,「どの子も熱中する授業をつくる」を研究主題に掲げ,全職員で3年間の授業研究に取り組んできました。おかげさまで,県内外から関心を持ってくださった方々が3年間で延べ3000名近く参観に訪れてくださいました。このことから,明日の授業を子供たちのために価値あるものにしたいという先生方の思いが伝わってきました。
本書は,こうした研究と日頃の国語実践を基に,一人でも多くの子供が国語の授業に熱中して臨み,必要な資質や能力を高めることができるために,教師の授業のスキル(教師の技術・技能)とパーツ(学習活動のアイデア)に関するヒントをまとめたものです。
スキルやパーツと聞くと,場当たり的なテクニックではないかと思う方がいるかもしれません。しかし,本書で紹介するスキルとパーツは違います。課題解決の過程を重視した国語科の言語活動を遂行する上で支えとなるものです。どんなに言語活動が計画されても,それを生かす教師の技術や技能,第1次から終末までの学習活動のアイデアが乏しければ,結局のところ子供に退屈と我慢を強いる状況が生まれてしまいます。
授業スキルについては,国語の枠を超えて他教科でも子供たちが参加し,熱中する状態を生み出すヒントになるものを選びました。学習活動のアイデアであるパーツは,言語活動の過程に組み入れることで,その時間の学習がより充実し,付けたい力の習得や活用に生かせるものだと考えています。
さらには,子供たちが授業に熱中する状態を生み出すために,心理学者M.チクセントミハイ氏のフロー理論や法政大学国際文化学部教授の浅川希洋志氏にアドバイスいただいたことも紹介する実践の中にちりばめました。フロー理論の詳細については,お二人の著作などを参考にしていただければと思いますが,浅川氏から子供が熱中する状態を生み出す条件として次のようなアドバイスをいただきました。
【条件@】はっきりとした目標があること。
【条件A】活動の難しさのレベルとその活動に取り組むための能力のレベルがつりあっていること。
【条件B】「自分がどれくらいできているか」すぐにフィードバックが得られること。
ただし,浅川氏は次のようにも仰いました。「これは一般的な条件。授業については,先生方がプロなのだから,ぜひ考えてみてください。」と。
試行錯誤と多くの失敗から私が学んだことが,これからの国語の授業をつくり出していく方々に,少しでもお役に立てば幸いです。
2019年3月 /八巻 修
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