- はじめに
- 第1章 中学校音楽の「常時活動」のポイント
- 1 「常時活動」と題材の学習との関連
- 2 各領域・分野における「常時活動」の生かし方
- 3 「常時活動」における1人1台端末の活用
- 4 第2章の読み方
- 第2章 中学校音楽の「常時活動」アイデア70
- 歌唱
- (1)1年 新入生の基礎・基本,楽しくていねいに身に付けよう
- (2)1・2年 発声の違いを感じよう
- (3)全学年 音のつながり方を捉えて歌おう(その1)
- (4)全学年 音のつながり方を捉えて歌おう(その2)
- (5)全学年 旋律を線で捉えよう
- (6)全学年 階名で歌おう
- (7)全学年 歌唱で1人1台端末を活用しよう
- (8)全学年 視覚効果で全校音楽集会をつくり上げよう
- (9)全学年 複数のパートを同時に音程確認(音取り)しよう
- (10)全学年 何を意識して歌うのかな?
- (11)全学年 声部の役割を意識して歌おう
- (12)全学年 イメージを絵に描いて表したいイメージを広げよう
- 器楽
- (13)1年 リコーダーでリレーをしよう
- (14)2年 今日はどんなかえるかな?
- (15)2・3年 手元を見ずに弾けるかな?
- (16)全学年 どのように音を出すのかな? どんな音が出るのかな?
- (17)全学年 ギターのチューニング,できるかな?
- (18)全学年 コードチェンジ,うまくできるかな?
- (19)全学年 ビートにチャレンジ! つくって楽しもう
- (20)全学年 器楽で1人1台端末を活用しよう
- (21)全学年 拍の流れに乗れるかな?
- 創作
- (22)1年 身の回りの音を探そう
- (23)1年 音のつながり方は2種類しかない?
- (24)1年 どんな旋律になるのかな?
- (25)3年 同じジャズアイテムでコール&レスポンスをしよう
- (26)全学年 リズムや拍,とれるかな?
- (27)全学年 リズムしりとりをしよう
- (28)全学年 アドリブを楽しもう
- 鑑賞
- (29)1年 民謡で日本を巡ろう
- (30)1年 音楽で世界を巡ろう アジア編
- (31)2・3年 音楽の多様性を理解しよう
- (32)全学年 「口唱歌」で歌ってみよう
- (33)全学年 聴いてみよう 5分で楽しめる映像と音楽
- (34)全学年 楽器に注目して聴こう
- (35)全学年 何の音かな?
- (36)全学年 音色が変わると?
- (37)全学年 この曲のタイトルは何かな?
- (38)全学年 お気に入りの曲を紹介しよう
- (39)全学年 みんなでつくろう! 「◯◯中 名曲アルバム」
- (40)全学年 鑑賞で1人1台端末を活用しよう
- (41)全学年 聴き取れたらサインを送ろう
- (42)全学年 知覚・感受を関わらせて記録し,音楽の語彙を増やそう
- (43)全学年 いろいろな色で表そう
- (44)全学年 その音楽はどうして生まれた?
- 歌唱・器楽
- (45)全学年 音で授業を始めよう
- (46)全学年 音の重なりを感じて歌おう
- 歌唱・器楽・鑑賞
- (47)全学年 曲の一部分にこだわろう
- 器楽・創作
- (48)1年 アドリブに挑戦しよう(リズム編)
- (49)2・3年 アドリブに挑戦しよう(旋律編)
- (50)全学年 ペンタトニックで遊ぼう
- (51)全学年 即興リズムで楽しもう
- (52)全学年 即興的にリズムをつくってつなげよう
- (53)全学年 箏で即興リレーをしよう
- (54)全学年 拍を感じながら運指を身に付けよう
- 器楽・鑑賞
- (55)全学年 演奏している楽器は何かな?
- 鑑賞・創作
- (56)全学年 聴いてみよう! テレビの中のクラシック
- 表現
- (57)全学年 真似してみよう(リズム編)
- (58)全学年 真似してみよう(3音編)
- (59)全学年 聴いて真似しよう
- (60)全学年 音符カードでリズムをつくって表現しよう
- (61)全学年 3音ソルフェージュ,歌えるかな? 吹けるかな?
- 全領域・分野
- (62)1年 知覚と感受って何?
- (63)1年 楽しみながら楽譜と触れ合おう
- (64)全学年 和音でこんにちは
- (65)全学年 指揮者になろう
- (66)全学年 つくってみよう! ドレミファソラシド
- (67)全学年 今日の学びを振り返ろう
- (68)全学年 発言・発表しよう
- (69)全学年 音や音楽と積極的に関わろう
- (70)全学年 音楽と関わる仕事を意識しよう
はじめに
本書の編著についてお声がけいただいたとき,正直「困ったなぁ」と思いました。それは,自分自身の実践を振り返っても,また参観させていただいた多くの授業を思い返しても,中学校音楽科の授業での常時活動について,ピンと来るものがなかったからです。
小学校音楽科で,授業の始めに常時活動を行っている授業を参観させていただいたことはありました。小学校の先生方が児童の興味・関心,集中力,継続性などを考えつつ,時に遊びの要素も取り入れながら,様々に工夫された常時活動を行っている様子に触れ,「すごいなぁ」と思っていました。一方,自分の授業での常時活動的な活動と言えば,「とりあえず既習曲を歌う」という程度のものでした。何かねらいがあったかと言えば,それほどのものはありませんでした。
かつて創作分野の授業の学習指導案を書いたとき,「学習活動」の最初に,特に深い考えもなく「1 既習曲を歌う」と書いたことがあります。そのとき,先輩の先生から「なぜ,創作の授業の始めに既習曲を歌うの?」と聞かれ,「言われてみればそうだな…」と思ってしまった私は,苦し紛れに「音楽の授業を始めるための雰囲気づくりです」と答えたことを思い出します。授業を始めるに当たって雰囲気づくりは大切なことだと思いますが,ほぼ惰性で行っていた「既習曲を歌う」ということが,雰囲気づくりになっていたのか,それ以外に何かできることはなかったのか。今さらながら反省しきりです。とはいえ,「せっかくお声がけいただいたのだから,頑張ってみよう」と思い,お引き受けした次第です。
そこで,まず考えなければならなかったことは,本書における「常時活動」の捉えです。自分で何が書けるのか考えたり,著者としてご協力いただいた先生方とメールでやり取りしたりしながら次のようなことが見えてきました。それは,これまでの授業実践の中で行ってきた様々な活動の中で,「常時活動」という意識はなかったけれど,短時間で継続的に行っていけば,題材の学習にとって意味のある,有効な活動になるものがあったのではないか,ということです。
中学校音楽科の授業時数は,ご承知のように,第1学年で45時間,第2学年及び第3学年でそれぞれ35時間ですから,一題材にかける時間はそれほど多くは取れません。そこで大切になるのが,前時にやったことを次時の学習に生かせるようにすることと,既習の題材で学習したことを別の題材で生かせるようにすることです。しかし,時間が経てば,忘れてしまったりできなくなってしまったりするのは,ある意味自然なことですので,何らかの工夫が必要だったはずです。そのような視点でこれまでの実践を振り返ってみると,私も著者の先生方も,何らかの工夫をしていたことに気付きました。また,その工夫はある程度継続的に行うことで,より大きな効果が得られるのではないか,と考えました。
本書で紹介する70の活動例は,著者の先生方が,目の前の生徒の実態を踏まえ,授業で育成すべき資質・能力を,限られた時間の中で身に付けられるようにする活動を展開するために,言わば「常時活動的」に行ってきた活動を振り返り,短時間で効果的に,常時活動として行うことができるような活動として整理したものです。それぞれの活動はある音楽を形づくっている要素の知覚・感受の質を高めたり,ある指導事項に示された資質・能力の育成に寄与したりするものです。
年間45時間または35時間という授業時数の中で,70もの常時活動を取り入れることはもちろん無理ですので,目の前の生徒を思い浮かべ,その生徒たちにとって有効だと思うものを取り入れてみてください。
最後に,お忙しい中本書にご執筆いただいた皆様に心から感謝いたします。全国各地の中学校で,生徒が音楽活動の楽しさを感じながら,着実に資質・能力を身に付けていく授業が展開されることを願っています。
2023年3月 /臼井 学
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- 明治図書