- 増補版のためのまえがき
- 第一部 元気が出る作文指導実践法
- T 発想を変える! 刺激的作文指導論
- 一 作文指導こそが重要なのに
- 作文指導の重要性/社会の要請、文部省の作文指導重視
- 二 作文指導はいつも不振だ──面倒だから振るわない――
- 三 作文は子どもに嫌われているが
- 四 こうすれば作文が好きになる──刺激的提言七か条――
- 小作に安んぜよ・作品主義から文章主義へ/娯楽として書け・認識主義から興味主義へ/精しく読むな・精読主義から粗読主義へ/評語を書くな・評語主義から評定主義へ/添削するな・添削主義からべたぼめ主義へ/やたら書かせよ・質第一主義から量第一主義へ/丁寧に書かせるな・書写主義から作文主義へ
- U 作文力を伸ばす! これが極意だ
- いつでも書かせる・多作化/どこでも書かせる・生活化/やたらほめまくる・暗示化/おもしろがらせる・血肉化/用紙を手元に置く・即決化/基礎を教える・堅実化
- V 吹きとばせ! 作文コンプレックス
- いくらでも書ける「取材」の指導/これならできる「構想」の指導/らくらく書ける「叙述」の指導/ほどほどでよい「推敲」の指導
- 第二部 元気が出る作文初級レッスン
- T 手ほどきばっちり! 初級第一レッスン
- 先生、あのね/あれ、あれ、はてな/絵ばなし作文/「猫と庄造と二人のおんな」/お話作文
- U 新ネタで勝負! 初級第二レッスン
- 「なりきり作文」/返信「なりきり作文」/「再生作文」/「再話作文」
- V 教師も学ぶ! 作文の見方、考え方
- 一 作文の見方
- 例文推挙の弁/例文「グライダー作り」/例文を読んで/作品批評についての私見
- 二 評語の書き方
- 評語とは何か/評語の書き方/本文の「内容」についての評語/本文の「形式」についての評語/題名についての評語の書き方
- 三 添削の仕方
- 添削とは何か/指導のための添削のあり方
- 第三部 元気が出る作文中級レッスン
- T ぐんぐん書ける! 中級レッスン
- 一 喜んで書ける、手紙文
- 指導ポイント/指導のあらまし/文例とそのタイプ別指導法/参考範文例
- 二 省エネで大きな効果、日直作文
- 原稿用紙は黒板だい/日直作文の進め方/日直作文の文例
- 三 誰でも書ける、生活作文
- 指導の原則/指導の実際
- 四 いつでも書ける、アイデア作文いろいろ
- 諸届の実践/作品の解説/学級日誌や学級新聞/学級葉書の実践
- 第四部 元気が出る作文上級レッスン
- T 思いを凝らせ! 上級第一レッスン
- 一 味わいを深める──「鑑賞文」の指導──
- 「青瓜」の鑑賞文/「豆の葉っぱ」など
- 二 明快に主張する──「意見文」の指導──
- 学習指導案/明快な「意見文」の書かせ方/「意見文」の実例
- 三 豊かな発想を耕す──「感想文」の指導──
- 個性を豊かにする感想文/感想文指導の目標/教材文の位置づけ/記述前の指導を重視する/自分の心の本音を書かせる/文例(一)/「欠けているものの発」のねうち/文例(二)/「わたしを変えた話し合い」のねうち
- U 自らを高めよ! 上級第二レッスン
- 一 授業の実りを確かめる──「授業作文」の指導──
- 二 向上を自覚する──「読後作文」の指導──
- それは、自己について語る作文である/読書感想文とは少し違う/三年生からできる/四つの指導ポイント/読後作文の事例五篇/読後作文の意義
- 第五部 元気が出る作文指導の基礎教養
- T ことばに強くなれ! ──作文における「言語事項」の指導──
- 一 表現指導における「言語事項」の指導とは
- 表現指導の中で言語事項を指導するのはむずかしい/表現領域では、言語事項の定着、応用を図るのがよい
- 二 表現指導における「言語事項」指導・その基本的留意点
- 言語による人格の形成をめざして指導する/作文力、表現力の向上をめざして指導する/既習言語事項の定着をめざして指導する
- 三 表現指導のおける「言語事項」指導・その具体的留意点
- 正しい言語感覚を育てる/辞書を活用する習慣をつける/生きた資料の集積を図る/推敲を過信してはいけない/「言語事項」にこだわらない作文と「言語事項」の併合指導を進める
- U 「伝え合う力」の鍛え方
- 一 本義、真義をとらえる
- 本質をとらえる大切さ/学習指導要領の『解説書』を買おう/「伝え合う力」の本質は何か
- 二 伝わる体験の厚みを
- 教師の「伝える力」が弱い/実感がなければ伝わらない/伝わる体験の厚みを持とう
- 三 「伝え合う力」を支えるもの
- 中学生の汲み取り当番/ある先生の教訓/人と心とことばの隙間/「伝え合う力」を支えるもの
- 四 短い文をつなぐ
- 伝え合いの前提ルール/学生の話し方の悪い傾向/わかりません、と言わせない
- 五 短く切る。短く言う。
- この発言の意味は?/切らないからわからない/伝え合うには短く言うべし
- 六 非対面の伝え合い
- 折り鶴を添えて/直筆のことばを添えて/非対面の伝達の重み
- 七 論文作成のポイント
- 「論文」の本質を踏まえる/必要な「手続き」を踏む/チャンスを生かす積極性を/論文は「分身」、己の証/批判的精神を持つこと
- 八 紙の活字と画面の活字
- 「伝え合い」の難しさ/「教室ドットコム」への反響/紙活字に代わる画面活字
- 九 保護者との「伝え合い」
- 一般社会への教師の非協力/「伝えられること」には不慣れ/「伝え合う」ことの具現
- 一〇 道順の伝え方にも小さなコツ
- よくない教え方/上手な教え方のポイント/上手な道の尋ね方
- 一一 電話による伝え合いのコツ
- 今、よろしいですか/少しお待ち下さい/相談ではなく連絡を
- 一二 非言語コミュニケーション
- 目は口ほどに物を言い/ことばにふさわしいしぐさ/言語人格の教育
- あとがき
増補版のためのまえがき
作文指導に関する本はあまり売れないというのが教育書出版界の常識のようである。しかし、例外もある。実は、この旧版『作文で鍛える』上・下巻は実によく売れた。「よく売れる」というのは、それだけ多くの人に「よく読まれる」ということである。著者である私にとってこれはとても大きな特別の喜びだった。
特別の喜び、というのは、それが「作文」の本だからである。私は常々「作文力は、国語学力の総決算だ」と言ってきた。その人の国語学力の総合体は作文を書かせてみればよくわかる。言葉の選び方、文字の書き方、使い方、論理の構築の仕方、思いや考えの深さ、確かさ、妥当性、独創性などなどは、その人の作文にかなり正確に反映される。喋れば達者でも文章は書けない、という人はたくさんいる。読書家が必ずしもよい文章を書けるとは限らない。文章というものは、そもそも保存性、記録性、伝達性にすぐれ、くり返して冷静に読めるものではあるが、頼りになるのは無表情で無愛想で黙り屋の「文字の連なり」だけである。それだけに頼って筆者の考えを十分に伝えるというのだからこれは骨が折れる仕事だ。しかし、その骨の折れる仕事をやっていけるのが作文力であり、文章表現力なのである。
作文指導を充実させれば、文字力も思考力も論理性も言語感覚も知性も理解力も表現力もみんな鍛えられ、伸ばされていく。だから、国語科教育は「作文指導」にこそ最も力を入れるべきだとも言える。しかし、書ける前には当然文字が読めなければならないのだから、やはり読む力は書く力の基礎になる。「読み、書き、算盤」の三つが東西古今を通じて基礎学力とされるのはまことに当を得たことである。先に、「特別の喜び」と私が書いたのは、このように国語科の中でも中核的な重要性を持つ「作文」の本が多くの人の手にわたって読まれたということだからである。作文指導が盛んになるのは、国語学力の向上の上からもきわめて喜ばしいことなのである。
さて、本書の旧版は明治図書出版から「教育新書」の第47・53巻として発行され、好評の内に上巻11版・下巻8版を重ねた。教育技術の法則化運動が全国の津々浦々にまでゆきわたり、心ある教師たちは空前の「教育書ブーム」の中で競って教育書を読みこんだ昭和六十三年の出版である。それまで、「作文教師」「綴り方教師」という言葉があるように、作文指導法を真剣に学ぼうとする教師はごく一部の格別に熱心な教師に限られているきらいがあった。これではいけない。もっと多くの、いわばごく普通の教師が斉しく作文指導の重要性を自覚し、日常的にその実践に取り組めるようにしなければならない。私は、そう願って本書を執筆した。そして、その願いはほぼ叶えられることになった。
本書の中で私が強く主張しているのは、「作文指導の日常化、平易化」である。教師の多忙は改めて申すまでもないが、その多忙の日常にあって実践できる作文指導法でなければ決して広がりを生みはしない。広がらなければ作文指導は進展していかない。現場の相当な多忙と複雑さの中で実践可能な作文指導の方法となれば、そこではかなり大胆な発想の転換を必要とする。私の担任時代もまた多忙であった。私は、その多忙を極める自分の教室の中にあって、作文指導には常に力を入れて実践してきた。本書の中にあるすべての実践は私の教室の中から生まれたものである。「必ず実践をくぐらせて理論を導く」ことは、実践人としての私の一貫した執筆姿勢であり、この姿勢は本書でも色濃く、太く貫かれている。
改版にあたり、上下巻の主要部を一冊にまとめ、さらに「『伝え合う力』の鍛え方」についての稿をつけ加える。
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- 明治図書
- 作文指導の考え方が180度変わる。 目から鱗。 作文は、 長く書かなくてもよい。いちいち読み込んで訂正をしなくてもよい。たくさん書かせて、楽しくする! 作文をしたくなってくる。 教えたくなってくる。 技術、アイデア満載の本。2015/9/930代・男性