- まえがき
- T 「伝え合う力」を育てる方策
- 1 「伝え合う力」を育てる
- ―国語科の再構築
- 2 「伝え合う力」を育てる
- ―学校教育の成果、国語科の成果を確認する
- 3 「伝え合う力」を育てる
- ―国語科の実践課題は何か
- 4 「伝え合う力」を育てる
- ―観点別学習状況に照らして言語活動例を評価する
- 5 「伝え合う力」を育てる
- ―国語科は、どのように評価されているか
- 6 「伝え合う力」を育てる条件とは、何か
- 7 「伝え合う力」
- ―書く能力の育成
- 8 「伝え合う力」を育てる「本時の学習指導案」の条件
- 9 「伝え合う力」を育てる
- ―評価規準の作成
- 10 「伝え合う力」を育てる
- ―文字力・漢字力・語彙力の育成
- 11 「伝え合う力」を育てる「各学校」の取組み方
- U 国語科の学力保障の説明責任・結果責任とは
- 1 従来の「Plan―Do」から、学び手の「See」(評価)が具体化される国語科授業へ
- 2 「A話すこと・聞くこと」の授業改善―その1
- 3 「A話すこと・聞くこと」の授業改善―その2
- ―学び手の「See」(評価)が具体化される国語科授業へ
- 4 「A話すこと・聞くこと」の授業改善―その3
- ―単層的能力観から重層的能力観へ
- 5 「B書くこと」の授業改善―その1
- 6 「B書くこと」の授業改善―その2
- ―子供の学習意識と教師の指導意識との「ズレ」
- 7 「B書くこと」の授業改善―その3
- ―書く能力は、自分探し、第一言語の基礎・基本
- 8 「B書くこと」の授業改善―その4
- ―人間形成と家庭・地域との連携
- 9 「B書くこと」の授業改善―その5
- ―感情言語と思考(学習)言語の育成
- 10 「C読むこと」の授業改善―その1
- ―理解(文学的な文章)の調査結果と「年間指導計画」
- 11 「C読むこと」の授業改善―その2
- ―理解(説明的な文章)の調査結果と「年間指導計画」
- 12 国語科の説明責任・結果責任が具体化される国語科授業へ
- V 国語科は、「目標を明確にして結果を検証し質を保証する」
- 1 なぜ、「学力保障の説明責任・結果責任」なのか
- 2 誰が、「学力保障の説明責任・結果責任」を担うのか
- ―「五者の責任関係」を明確にしよう
- 3 どのように、「学力保障の説明責任・結果責任」を担うのか―その1
- ―「各学校」「保護者」「本人」の意識のズレ・乖離
- 4 どのように、「学力保障の説明責任・結果責任」を担うのか―その2
- ―「保護者」「本人」の「声」を聞こう
- 5 どのように、「学力保障の説明責任・結果責任」を担うのか―その3
- ―「三者」が連携する「授業びらき・授業づくり」
- 6 「各学校」「本人」「保護者」連携の指導過程の創意工夫
- ―従来の「評価」を「メタ評価」へ高める
- 7 「国語科」をメタ認知してみると―その1
- ―他教科等の基礎教科として機能しているのか
- 8 「国語科」をメタ認知してみると―その2
- ―社会科、理科等の基礎教科として機能しているか
- 9 再度、「国語科」の学力問題を考察すると
- ―平成13年度及び15年度教育課程実施調査から
- 10 現行の「国語科」の問題点は何か
- ―「保護者七割『学校より塾』」(註@)を受けて
- 11 義務教育の質の保証・向上のための国家戦略
- ―「グローバル社会」と「読解力」育成
- 12 総括・国語科の学力保障の説明責任・結果責任
- ―三つの重要課題
- あとがき
まえがき
本書のねらい(願い)は、「学力低下問題」や従来の漠然とした学校教育・国語科の役割等を点検し、第一言語力のための教科へ転換することである。
それは、本来の母国語教育を確立することであり、第一言語力とは、考えるための言語力であり、感情を表現できる言語力であり、我が国の文化伝統を継承発展できる言語力である。それは、算数・数学、社会や理科、「総合的な学習の時間」等に役立つ言語力であり、英語や韓国語等の他言語教育にも応用できる言語力でもある。
その実現のために、第一章では、伝え合う力の育成について、その方策を提案している。伝え合う力とは、自分の考えをもち、論理的に意見を述べたり、聞き取ったりできる能力、目的や場面などに応じて適切に文章表現できる能力であり、目的に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度である。それは、第一言語力を人間と人間との間で、具体的に伝え合う力として育成することである。
第二章では、話題の「学力低下」問題の実態や本質(正体)を点検し、「学力調査」を踏まえ、「各学校」が一層の国語学力の向上と学習成果を評価できる国語科授業の考え方とその方策を論述している。特に、「平成13年度及び15年度教育課程調査」を取り上げ、国語科の成果と課題を追究した。
端的に指摘をすれば、国語科は同一問題で比較する限り、「学力低下」ではない。この意味で、学校教育の現場(先生方)の取り組みは、高く評価できる。ただし、課題は、本書で取り上げたように、例えば、自分の考えを構成したり表現したりする言語力の育成である。
第三章では、国語科としての学力保障をどのように具体化するのか。それは学校教育本来の「評価機能」を回復したり、獲得したりすることである。「各学校」が一人一人の学び手の資質や能力を育成する「学校教育」へ自立、独立することであり、説明責任・結果責任という本来の公務を果たすことである。と同時に、「親が本来有している子を教育すべき義務」(「今後の学校の管理運営の在り方について(答申)」平成16年3月4日)という「教育機能」を回復することである。この実践課題を、例えば、「各学校」「保護者」「本人」の「三者」や、さらに、「教育行政」「マスコミ」を加え、「五者」の関係・かかわりから追究している。
さて、現下の学校教育の現場に「英語」が小学校の必修に導入されるような言語教育の現実、情報化・グローバル化する社会状況、なによりも、子供たち(=学び手、註)の学習状況や保護者の教育状況を鳥瞰すると、ますます、学校教育・国語科は、思考言語力、感情言語力、文化言語力を育成する第一言語力育成の立場を確立することが重要かつ緊急の課題である。それは、「目標を明確にして結果を検証し質を保証する」、つまり、「説明責任・結果責任」を発揮・機能する国語科を構築することである。
なお、本著に納められた論考は、『教育科学 国語教育』(明治図書)に掲載されたものである。資料等を提供された関係各位、明治図書出版社の江部満編集長には、本書の刊行にかかわる励ましとご高配をいただき、記して感謝の意を表したい。
平成一八年六月 青山学院大学文学部教授 /小森 茂
註「こども」は、引用を除き、広辞苑の表記に従い、また、「大人」の対語の関係を考慮し、「子供」と表記する。
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- 明治図書