- はじめに /市毛 勝雄
- 第一部 提案 「伝統的な言語文化」を活かす言語技術と国語科授業改革
- 「伝統的な言語文化」の内容をしっかり見よう /市毛 勝雄
- 伝統的文化のすぐれた教育力を生かす /向山 洋一
- 教室音読による「伝統的言語文化」の感得 /野口 芳宏
- 「伝統的な言語文化」という考え方の危険性 /渋谷 孝
- 古典言語を活き活きと甦らせる指導を /小田 迪夫
- 伝統芸能の言語技術 /井関 義久
- 改訂学習指導要領の誕生と新国語科の本質的な役割
- ――なぜ、〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕が新設されたのか(註) /小森 茂
- 「伝統的な言語文化」を活かしてことばの身体性を取り戻す
- ――音読・朗読・視写等の言語活動も「伝統的な言語文化」である―― /大内 善一
- 地域の昔話の語りと古文の群読を /高橋 俊三
- 「伝統的な言語文化」の指導要領解説を超える授業が求められる /大森 修
- 「音読・暗唱」や「暗記」に矮小化しない古典教育 /鶴田 清司
- 小学校の古典学習で何を指導するか /中村 孝一
- 各校で指導の全体構造図を作成し、年間計画に位置づけることが大切である /谷 和樹
- 鑑賞を通して批評へ /齋藤 勉
- 古典の魅力と学び方を「楽しく論理的に」教える /佐藤 洋一
- 第二部 授業者による提案
- ――大会テーマを実践的に深める――
- 授業者による提案
- 一年一組 繰り返しの読み聞かせと音読・暗唱によって、和の精神を継承・発展させる /手塚 美和
- 一年二組 学習用語を行為化させる「伝統的な言語文化」の授業 /冨樫 いずみ
- 二年二組 「楽しい授業」の開発で、子ども達の言語技術を高める
- ――伝統的な言語文化の学習は、子ども達の語彙と思考を支える芯となる―― /森川 敦子
- 三年一組 圧縮と精製の日本語芸術「ことわざ」「慣用句」「故事成語」の成り立ちを教え活用させる /河田 孝文
- 三年二組 文語詩の指導 提示と暗唱に「ちょっとずつ」を /山田 浩之
- 四年二組 音声化と作品化とで構成する短歌・俳句の授業 /中原 広司
- 五年一組 伝統的な言語文化 /甲本 卓司
- 五年二組 理解を助ける音読 /佐藤 康子
- 六年二組 漢詩に親しむ手がかりを与える授業 /藤原 かおり
- 低学年三組(複式学級) 「面白さ・歯ごたえ・味わい」のある教材で /照井 孝司
- 中学年三組(複式学級) 俳句作りにチャレンジ! /新田 見誠
- 高学年三組(複式学級) 平成の「国学」である /伴 一孝
- 大会テーマに関わる提案授業
- 説明的な文章教材を用いた日常語の指導を通して /山中 伸之
- 「TOSSみおつくし暗唱詩文サイト」を使った授業 /神谷 祐子
- 漢詩を中国語で音読しよう /岩井 信康
- 第三部 第一七回大会報告と資料
- ――新学習指導要領と「伝統的な言語文化」――
- 日本言語技術教育学会 第一七回大会の報告 /佐藤 洋一
- 資料・新学習指導要領の「伝統的な言語文化」
- 編集後記 /佐藤 洋一
はじめに
本年の大会テーマは、「『伝統的な言語文化』を活かす言語技術」である。
会場は、新潟大学教育学部附属新潟小学校、期日は、二〇〇九年三月七日(土)である。
「伝統的な言語文化」という語は、新学習指導要領・国語科に新設された〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕という項目名から来ている。従来の学習指導要領の〔言語事項〕は、「話す・聞く・書く・読む」の四領域を中心として、抽象的な指導事項が列挙されてきた。新学習指導要領では、〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕という長い名称とともに、「短歌、俳句、慣用句、故事成語、古文、漢文、文語調の文章、古典、敬語、慣用句、和語、外来語」等の例が示された。国語の教科書はこれらの具体例を全部扱うことになる(検定合格の要件である)。新教科書は従来の詞華集のような、絵本のような教科書とはかなり様変わりすることになるだろう。
「言語事項」という味気ないルールの学習から、我が国の「伝統的な言語文化」を学ぶ学習へと変化すれば、生徒は学校の授業に、伝統文化を学ぶ喜びと誇りとを持つことができる。これは太平洋戦争敗戦後すぐに制定された教育基本法が二〇〇八年に改正された、その改正の趣旨に沿った変化である。わが学会は言葉の学習が持つ高度な文化的意義を重視するから、今回のこのような変化を歓迎すべきものと考える。一部の研究者が「わが国の伝統と文化に対する関心や理解」という文言に超国家主義や旧封建道徳への復活を危惧しているというが、インターネットの普及した現代に超国家主義や封建道徳が生き返る余地はない。
今回は会場校の新潟大学教育学部附属新潟小学校の多大なご厚意により、全一五組(複式三組を含む)を拝借して研究授業をさせていただけることになった。関係各位のご厚意とご努力に深く感謝する。前回の第一七回大会は常葉学園大学付属橘小学校の三組を拝借して、研究授業とその研究会を行った。それが今回は拡大して、全国に名を馳せる一五人の授業名人が、全学年の生徒諸君に対する研究授業を公開する場を得た。これはまことに壮観である。
研究授業は二時間、行われる。
第一時の授業は、全一五組のうち一二組が小学校の各教室で、本学会推薦の授業名人が四〇分間の「伝統的な言語文化」を扱った国語の授業を行う。
第二時の授業は、二年一組、四年一組、六年一組の三組が、教室を体育館(全体会場)に移して全会員の前で、本学会を代表する三人の授業名人が各二〇分間ずつの「伝統的な言語文化」を扱った国語の授業を行う。午後は、この三人の授業を、全体研究会において研究討議する。
ふだんは一人、二人の授業名人の授業を見る機会を得るのも容易ではない。それが、一二人の名人の授業を一望できる。お目当ての教室一つに張りつくのもよし、いくつもの教室を渡り歩くのもよし、各自の参観法を駆使する機会である。そのあと、三名人の立ち会い研究授業を全員で見て、比較研究会に参加できる。授業の運び方、生徒の動きを見る技術を身に付ける絶好の機会である。名人の授業の極意を知り、わがものとしようではないか。
このようなすばらしい機会を提供してくださった新潟大学附属新潟小学校の関係者各位に、改めて深く感謝する。
本大会が多くの熱心な会員に豊かな収穫をもたらし、国語教育の指導技術を大きく発展させる第一歩となることを心から期待している。
二〇〇九年三月 日本言語技術教育学会会長 /市毛 勝雄
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