- まえがき
- Ⅰ 情報リテラシーと国語教育
- ―なぜ言葉に立ち止まる力なのか―
- 第1章 人として必要な言葉の力とはなにか ―二人の犯罪者から「情報リテラシー」へ―
- 1 二人の犯罪者
- 2 「新宿駅西口バス放火事件」から
- 3 「連続ピストル射殺事件」から
- 4 〈言葉によってつなぐ力〉と〈言葉に立ち止まる力〉 ―「情報リテラシー」の基底として―
- 5 ふたたび、二人の犯罪者について
- 第2章 今、なぜ文学の授業か ―「速い情報」と「遅い情報」―
- 1 ふたたび注目される文学の授業
- 2 戦争報道と言葉
- 3 「速い情報」と「遅い情報」
- 4 「遅い情報」としての文学 ―「お手紙」(小2)を例に―
- 5 独歩の夢 ―文学と教育の最初の接点から―
- 第3章 「速い情報」と、どう向き合うか ―説明的な文章を生かす―
- 1 「速い情報」の価値 ―新聞を例に―
- 2 「速い情報」としての要約文
- 3 「速い情報」としての非連続テキスト ―「アップとルーズで伝える」(小4)を例に―
- 4 「速い情報」としてのレッテル=言葉 ―「ごみ問題ってなあに」(小5)を例に―
- ◆ 実践のためのアングル
- Ⅱ 新しい「読むこと」の授業づくりの視点
- ―どの言葉に、どう立ち止まるか―
- 第1章 作品の面白さを生かした読みの授業① ―「大造じいさんとガン」(小5)を例に―
- 1 「PISA型読解力」と旧来の読解力
- 2 面白い場面から読み始める授業の構想 ―「大造じいさんとガン」(小5)を例に―
- 3 作品に表れたものの見方から読書へ ―読書への文脈を作る―
- 4 縦横の関係から教材の面白さ・特徴を見付ける ―教材研究のために―
- 5 教材と活動のミスマッチを克服するために
- 第2章 作品の面白さを生かした読みの授業② ―「ガイアの知性」(中2)を例に―
- 1 「ガイアの知性」はむずかしい?
- 2 説明文がむずかしく感じられる理由
- 3 作品の面白さを生かして文章の基本構造を捉える
- 4 批判的に読む ―「検証読み」(仮称)の可能性―
- ◆実践のためのアングル
- Ⅲ 新しい読書指導のための視点
- ―読書生活をデザインする―
- 第1章 指導すれば、子どもは本を読む
- 1 PISA調査に見る日本の子どもの読書離れ
- 2 日本の子どもは読書の価値を認識している
- 3 本を読むようになった子どもたち ―二つの実践から―
- 4 読書の質を高める「しかけ」と「知識・技術」の指導
- 第2章 読書生活をデザインする力を育む
- 1 平成二〇年版「学習指導要領」における「読書」の位置
- 2 読書行為を分析する
- 3 指導方法を分析する
- 4 「読書生活をデザインする力」へ
- ◆ 実践のためのアングル
- Ⅳ 国語科における言語活動の充実とは
- ―言語活動を通して言葉に立ち止まる―
- 1 流れる言語活動、軽視される言語活動
- 2 言語活動を分析的に捉える
- 3 目標設定、指導、評価に生きる言語活動の分析
- 4 読みの学習における「話し合い活動」
- ◆ 実践のためのアングル
- Ⅴ 〔小学校〕情報リテラシー教育のプランと実践
- 1 「しんゆう」という言葉に立ち止まって広がる読書 ―読み比べから読書へ― /黒田 英津子
- 2 「おおきくなあれ」で語彙を広げる ―詩歌の読みから創作へ― /藤原 悦子
- 3 小学校に古典がやってきた ―遊び心を大切に― /小瀬村 良美
- 4 小学生から取り組みたい新聞活用 /臼井 淑子
- 5 一つのデータから広がる読書活動 /塩谷 京子
- Ⅵ 〔中学校〕情報リテラシー教育のプランと実践
- 1 「詩歌」の創作 ―定型が表現を促進する― /近藤 真
- 2 文章と図表を関連付ける読み /笹平 みどり
- 3 文字に立ち止まる ―古文書リテラシー入門― /大音師 右至
- 4 新聞報道を読み比べる /植田 恭子
- 5 読書生活をデザインする読書指導 /杉本 直美
- あとがき
まえがき
「情報リテラシー(information literacy)」とは「情報活用能力」と言い表されることもあるように、コンピュータなどの情報機器の活用に限らず、文字や映像等を含む様々な情報を批判的に受容し、効果的・創造的に活用する能力ほどの意味合いで用いられる。本書では、その中核となる力を「言葉に立ち止まる力」であると考え、それに関わる論考や実践を国語科を中心に集め、構成した。
国語科でこの語を用いる場合には、一般に説明的文章の読みや、いわゆる「調べ学習」などを念頭に置くことが多い。本書もそれを否定するものではないが、ここでは問題提起の意味も込め、あえて「情報リテラシー」の一般的な意味合いからは対象となりにくい、詩歌や物語、古典の学習なども含めて考えた。それは、詩歌や物語、古典などが紛れもなく「情報」そのものであるということの他に、それらに「情報」という角度から光を当てることで、従来とはやや違った学習材としての価値やその扱い方が見えてくるのではないか、と考えたからである。
また本書におけるそうした考え方や実践は、平成二〇(二〇〇八)年三月告示の新「学習指導要領」の方向性と軌を一にする面が多い。その意味でも本書の提案は、これからの国語科を再構築する上で、理論面からも実践面からも、参考にしていただけるものと考えている。
なお、本書のⅠ~Ⅳは、髙木が、本書における基本的な考え方などを論じた。続くⅤ~Ⅵは、それを踏まえた上で、第一線で活躍する現職の小中学校等の先生方に、それぞれのお立場から創意工夫をこらした実践の成果を紹介していただいた。両者は緩やかに関連しつつ、相互に補い合い、かつ互いに主張し合う関係にある。
/髙木 まさき
-
- 明治図書