- はじめに
- 序章 理科改訂のキーポイント
- 1 「社会に開かれた教育課程」の実現を目指す理科教育
- 1章 「第1 目標」のポイントと解説
- 1 育成を目指す資質・能力の三つの柱と理科教育
- 2章 「第2 各学年の目標及び内容」のポイントと解説
- 第3学年
- 1 第3学年の目標のポイントと解説
- 2 A 物質・エネルギー(1)物と重さ
- 3 A 物質・エネルギー(2)風とゴムの力の働き
- 4 A 物質・エネルギー(3)光と音の性質
- 5 A 物質・エネルギー(4)磁石の性質
- 6 A 物質・エネルギー(5)電気の通り道
- 7 B 生命・地球(1)身の回りの生物
- 8 B 生命・地球(2)太陽と地面の様子
- 第4学年
- 9 第4学年の目標のポイントと解説
- 10 A 物質・エネルギー(1)空気と水の性質
- 11 A 物質・エネルギー(2)金属,水,空気と温度
- 12 A 物質・エネルギー(3)電流の働き
- 13 B 生命・地球(1)人の体のつくりと運動
- 14 B 生命・地球(2)季節と生物
- 15 B 生命・地球(3)雨水の行方と地面の様子
- 16 B 生命・地球(4)天気の様子
- 17 B 生命・地球(5)月と星
- 第5学年
- 18 第5学年の目標のポイントと解説
- 19 A 物質・エネルギー(1)物の溶け方
- 20 A 物質・エネルギー(2)振り子の運動
- 21 A 物質・エネルギー(3)電流がつくる磁力
- 22 B 生命・地球(1)植物の発芽,成長,結実
- 23 B 生命・地球(2)動物の誕生
- 24 B 生命・地球(3)流れる水の働きと土地の変化
- 25 B 生命・地球(4)天気の変化
- 第6学年
- 26 第6学年の目標のポイントと解説
- 27 A 物質・エネルギー(1)燃焼の仕組み
- 28 A 物質・エネルギー(2)水溶液の性質
- 29 A 物質・エネルギー(3)てこの規則性
- 30 A 物質・エネルギー(4)電気の利用
- 31 B 生命・地球(1)人の体のつくりと働き
- 32 B 生命・地球(2)植物の養分と水の通り道
- 33 B 生命・地球(3)生物と環境
- 34 B 生命・地球(4)土地のつくりと変化
- 35 B 生命・地球(5)月と太陽
- 3章 「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」のポイントと解説
- 1 理科における主体的・対話的で深い学びの実現
- 2 思考力,判断力,表現力等の育成
- 3 特別支援教育の視点での配慮
- 4 道徳科との関連
- 5 言語活動の充実
- 6 プログラミング教育との関連
- 7 体験的な活動の充実
- 4章 理科の新授業プラン
- 第3学年
- 1 A 物質・エネルギーの新授業プラン 磁石の性質
- 2 B 生命・地球の新授業プラン 太陽と地面の様子
- 第4学年
- 3 A 物質・エネルギーの新授業プラン 金属,水,空気と温度
- 4 B 生命・地球の新授業プラン 季節と生物
- 第5学年
- 5 A 物質・エネルギーの新授業プラン 物の溶け方
- 6 B 生命・地球の新授業プラン 流れる水の働きと土地の変化
- 第6学年
- 7 A 物質・エネルギーの新授業プラン てこの規則性
- 8 B 生命・地球の新授業プラン 土地のつくりと変化
- 付録 小学校学習指導要領 第2章 理科
- 執筆者紹介
はじめに
今後の教育界の10年を決める大きな転換となる,新学習指導要領が平成29年3月に告示された。今回の改訂では「社会に開かれた教育課程」「カリキュラム・マネジメント」「主体的・対話的で深い学び」などといった様々なキーワードが出されており,小学校理科においてもこれらのキーワードに示されている改訂の基本方針に基づき,次の6点を改訂のポイントとして挙げている。
1 理科の学習を通じて身に付ける資質・能力の全体像の明確化
2 資質・能力を育成する過程で働く,物事を捉える視点や考え方である「見方・考え方」の整理
3 育成を目指す資質・能力のつながりを意識した指導内容の示し方の改善
4 探究的な学習の充実
5 「主体的な学び」,「対話的な学び」,「深い学び」の実現
6 指導体制の強化や教員研修の充実,実験器具等の整備充実,ICT環境の整備
特に今回の理科の改訂の一番のポイントは,「理科の見方・考え方を働かせ,必要な資質・能力を育成する」ことと考えられる。これまでの小学校理科学習指導要領では,科学的な「見方や考え方」は「養う」として示され,問題解決のゴール,目標に位置付けられてきた。しかし,今回の改訂により,「見方・考え方」は「養う」のではなく「働かせ」と変更されたことから,「資質・能力を養うための探究の方法」として示されたことが大きな変更点となる。
これは,今回の改訂で全教科等を通して各教科等を学ぶ意義を明確化するために各教科等と同様に整理されたことによる。答申では「理科の見方・考え方」を,「自然の事物・現象を,質的・量的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な視点で捉え,比較したり,関係付けたりするなどの科学的に探究する方法を用いて考えること」と示している。
では,理科の目標に「理科の見方・考え方を働かせ」と示されたことで,どのように授業が変わるのだろうか。
例えば,「エネルギー」領域では,自然の事物・現象を主として量的・関係的な視点で捉えることが,特徴的な視点として整理された。
第4学年で学習する「電流の働き」では,豆電球の明るさについて,電池の数(量)と直列・並列つなぎとの関係で捉える。このことを,第3学年「光の性質」で身に付けた,平面鏡に日光を当てた時の鏡の枚数(量)と温度や明るさとの関係で捉えるといった,前学年で培った「見方・考え方」と関連させることで,直列つなぎや並列つなぎの電流の大きさについて調べる際に量的・関係的な視点や考え方を子供自らが自覚しながら問題解決する授業へと変革できるようになると考えられる。
このように「理科の見方・考え方」を働かせることで,「電気単元」と「光単元」の学びを「エネルギー」領域の視点からつなぐことが可能となる。つまり,単元ごと,学年ごとバラバラに指導してきた単元完結型から単元関連型,学年完結型から学年関連型の授業展開がこれまで以上に期待できるのである。
しかし,学習指導要領が変わっても,教育への期待は何といっても実践にある。そして,その実践はどのような子供の姿に育っているかで評価するしかない。戦後最大の改訂がなされたと評価されている新学習指導要領について,その背景,理念,全体構想などをしっかり踏まえると同時に,私たち教師が一番力を注がなければならないことは,その新学習指導要領の理念,理科の目標にふさわしい子供が育ちつつあるかを常に念頭におき日々の実践に取り組むことである。
本書は,こうした小学校理科の改訂の趣旨を十分に理解し,先進的に理科を実践している先生方に執筆頂いた。本書を手に取って頂き,新しい理科教育が目指す,学ぶ楽しさを子供たちに伝えて頂ければ幸いである。
平成29年9月 /塚田 昭一
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- 明治図書