- はじめに
- 序章 外国語科導入のキーポイント
- 1 外国語科導入の経緯
- 2 外国語科導入の基本方針
- 3 全体の構成
- 4 指導事項
- 5 言語活動例
- 1章 「第1 目標」のポイントと解説
- 1 外国語科の目標の構成
- 2 外国語科の目標のとらえ方
- 2章 「第2 各言語(英語)の目標及び内容等」のポイントと解説
- 目標のポイントと解説
- 1 英語の目標
- 2 聞くことの目標
- 3 読むことの目標
- 4 話すこと[やり取り]の目標
- 5 話すこと[発表]の目標
- 6 書くことの目標
- 内容のポイントと解説
- 1 内容
- 2 〔知識及び技能〕英語の特徴やきまりに関する事項
- 3 〔思考力,判断力,表現力等〕情報を整理しながら考えなどを形成し,英語で表現したり,伝え合ったりすることに関する事項
- 4 言語活動に関する事項
- 5 言語の働きに関する事項
- 指導計画の作成と内容の取扱いのポイントと解説
- 1 指導計画作成上の配慮事項
- 2 内容の取扱いの配慮事項
- 3 教材選定の観点
- 3章 外国語科の新授業プラン
- 第5学年
- 1 聞くことの新授業プラン
- 部屋の名前
- 2 読むことの新授業プラン
- She can run fast. He can jump high.
- 3 話すこと[やり取り]の新授業プラン
- あこがれの人を紹介しよう
- 4 話すこと[発表]の新授業プラン
- What do you have on Monday? 学校生活・教科・職業
- 5 書くことの新授業プラン
- When is your birthday?
- 第6学年
- 1 聞くことの新授業プラン
- This is me! 自己紹介
- 2 読むことの新授業プラン
- 友達からの英語の手紙
- 3 話すこと[やり取り]の新授業プラン
- Junior High School Life
- 4 話すこと[発表]の新授業プラン
- 夏休みの思い出を話そう
- 5 書くことの新授業プラン
- 自分たちの町・地域を紹介しよう
- 付録 小学校学習指導要領 第2章 外国語
- 執筆者紹介
はじめに
小学校英語を語るときにどうしても考えなければならないことがある。
それは,小学校英語を小学校だけで見るのではなく,日本の英語教育全体の中で,どういう位置付けにあるかということである。
まず,日本人の全体的な状況から見てみよう。よく話題になるのが日本人の内向き志向や語学力のなさ,また,外国語に対する自信のなさということだろう。よく使われるのが,TOEFL iBT(国際的に最も権威があるとされる英語能力判定テスト)の結果を見るとアジアの大体30カ国の中で,120点満点で日本人の平均が71点。アジアの中で下から4番目。目立って低いのが,スピーキングで,30点満点中17点。アジア30カ国の中で日本人の平均が一番低いのである(2016年の結果)。文部科学省が,2014年度と2015年度に高校生,2015年度に中学生を対象に4技能テストを実施した結果,高校生の目標とされている英検準2級に到達した高校生は約36%で中学生の目標である英検3級に達した中学生は約36%ぐらいだということが分かった。中でも,やはり,スピーキングとライティングは非常に弱いことが判明した。
この理由はいろいろ考えられるだろうが,一つは,高等学校や大学入試にスピーキングもライティングも出題されないので,結局中学校や高等学校であまりきちんと教えられていない,ということが大きな要因だと思われる。
また,自信のなさという点でいうと,ベネッセが行った中高生の英語に関する実態調査の結果を見ると,中学生も高校生も英語が将来何らかの形で社会的に必要になるだろうことは分かっている(90%以上)が,自分が英語を使っているイメージはない,と答えている生徒が40%以上いることが分かった。つまり,英語は必要だろうけど,自分は自信がないから使わない,というのである。
しかし,この傾向は中高生だけではない。産業能率大学が大学を出て会社に入ったばかりの新入社員を対象に,大体3年に1回,グローバル意識調査をやっているが,2015年の結果を見ると,「日本企業はグローバル化を進めるべきだと思いますか」ということに関しては,「進めるべき」と「どちらかと言えば進めるべき」という回答を合わせると73%がグローバル化は必要だと答えている。また「海外で活躍するために必要な能力」について聞かれると,語学力・コミュニケーション力と答えている人が80%いることが分かる。しかし,「あなたは海外で仕事をしたいと思いますか」となると,2001年に始まったときには,大体30%弱が海外では働きたくないと答えたが,2015年には64%の新入社員が,海外では働きたくないと言っている。では,海外で働きたくない一番の理由はというと,語学力に自信がないから(66%)となっている。自分の今の語学力に関しても,ほとんど全く英語が使えないと思ってる人が半分近くいる。しかも,国際的なbusiness negotiationに必要な,いわゆるビジネス上での交渉力だとか折衝力があると答えた人は,2%以下だということが分かった。
このような結果は,従来の中学校で初めて正式に英語を学んだ人たちの結果である。そこで,アジアのほとんどの国で英語が小学校から導入されていることを受け,日本でも小学校から英語を導入することにより,日本人の英語に対する苦手意識や自信のなさを克服することを目指して小学校の外国語活動(実質的には英語活動)が2011年度から導入された。その結果,文部科学省の調査などを見ると,子供たちの70%以上が英語活動を楽しいと感じており,また,小学校の教師の80%近くが子供たちが異文化や外国語に対して積極的に取り組んでいると答え,中学校の教師も80%近くが,小学校で英語活動を体験してきた生徒の方がそれ以前の生徒と比べて,外国語や外国の文化に対してよりオープンであると同時に,英語の発音や聞き取る力が高い,と答えている(小学校外国語活動実施状況調査)。このことからも分かるように,小学校から英語を勉強することの効果が期待されているのである。
本書は,小学校外国語活動から次のステップとして導入されることになった,外国語科(英語科)について解説する。
平成29年10月 /吉田 研作
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- 明治図書
- 外国語について詳しく知ることができました。2018/12/2020代・学生
- 先行実施に向けて、とても分かりやすく実践しやすい内容でした。ありがとうございます。2018/3/3あつし