- はじめに
- 1章 見方・考え方を働かせる!中学地理授業デザイン
- 1 見方・考え方を働かせて探究的な学びを実現
- 2 板書構成について
- 3 本書の読み方
- 2章 見方・考え方を働かせる!中学地理授業づくりの教科書 板書&展開プラン
- 1 【世界の地域構成】
- 1 日本ってどこにあるの?
- 2 地球儀と世界地図はどっちが便利?
- 3 ユニオンジャックが色々な国の国旗にあるのはどうして?
- 4 岩に750億円?!
- 2 【人々の生活と環境】
- 1 動物はどの気候がお好み?
- 2 熱帯 〜高床式が減っているって本当?〜
- 3 乾燥帯 〜砂漠でどうやって生活しているの?〜
- 4 温帯 〜7月なのにスーツにネクタイ?〜
- 5 寒帯 〜寒い地域にも高床の家?!〜
- 6 高山気候 〜富士山並みの標高にまちが広がっている?〜
- 3 【アジア州】
- 1 アジア州ってどんなところ?
- 2 どうして人口がこんなに増えたの?
- 3 キャッシュレス大国韓国!
- 4 砂漠の近くの近代都市?!
- 5 MADE in Chinaが減った?!
- 6 日本が支援している理由とは?
- 4 【ヨーロッパ州】
- 1 ヨーロッパ州ってどんなところ?
- 2 離脱をして嬉しいの?
- 3 「霧」に隠された意味って?
- 4 エコ大国ヨーロッパ州!
- 5 【アフリカ州】
- 1 アフリカ州ってどんなところ?
- 2 ダイヤモンドに隠された真実
- 3 よりよい支援って?
- 6 【北アメリカ州】
- 1 アメリカ合衆国は農業もスケールが大きい!
- 2 すごいぞ!アメリカ合衆国の自動車社会!
- 3 タイガー・ウッズの優勝が伝えたこと
- 4 北アメリカ州の特色って?!
- 7 【南アメリカ州】
- 1 全ての気候帯をコンプリート?!
- 2 ブラジルなの?日本なの?
- 3 「恥の壁」って?
- 4 環境保護というけれど
- 8 【オセアニア州】
- 1 オセアニア州にフランスの国旗?
- 2 オセアニア州といえば羊?!
- 3 単元の学びから見えるオセアニア州の過去と現在
- 9 【日本の地域構成】
- 1 山が高くなった?!
- 2 災害大国日本
- 3 果物はどの気候がお好き?
- 4 自動車保有率が高い地域と低い地域
- 5 日本の電力の行方
- 6 産業の課題をどうやって解決?!
- 10 【九州地方】
- 1 九州地方ってどんなところ?
- 2 1000回も噴火する御岳
- 3 どうしてこんなに大きい大根が育つの?
- 4 公害で廃校になった小学校
- 5 きれいな海を取り戻した母親たちの行動
- 11 【中国・四国地方】
- 1 中国・四国地方ってどんなところ?
- 2 焼け野原から復興へ
- 3 人口が増加!邑南町の秘密
- 4 人口よりも視察者の方が多い町
- 12 【近畿地方】
- 1 近畿地方ってどんなところ?
- 2 およそ10年間でこんなに変わったの?
- 3 どうなる?!京町家!
- 4 近畿地方×歴史で見えてくるもの
- 13 【中部地方】
- 1 中部地方の日本一から見えるもの
- 2 深夜に作業を始める理由
- 3 ビニールハウスで育てる理由
- 4 副業から伝統へ
- 14 【関東地方】
- 1 東京都ってどんな場所?
- 2 東京都で農業を営むKさん
- 3 どうして東京都で農業をするのか?
- 15 【東北地方】
- 1 東北地方ってどんなところ?
- 2 かたちを変える伝統工芸品
- 3 豊作への祈りと祭り
- 4 修学旅行先として東北をPRしよう!
- 16 【北海道地方】
- 1 今じゃ考えられない?!開拓当時の北海道!
- 2 米がよくとれるのはどんな場所?
- 3 北海道東部の人たちが選んだ道は?!
- 4 手間もリスクもある「カキえもん」を育てるNさん
- 5 漁師が森にいる?!
- おわりに
- 参考文献一覧
はじめに
社会の変化はめまぐるしく,生成AIの登場により教育のあり方も大きく変わろうとしています。ChatGPTは既存の情報から大量のアウトプットを出すことが得意であるため,教科書の掲載内容についても質問さえすれば,事実をいとも簡単に説明してくれます。私もChatGPTを活用しますし,本書でも授業での活用例を紹介しています。しかし,ChatGPTを通して単に個別知識を調べただけでは,深い意味理解を促すことや,社会とのつながりは見出せないと考えます。授業を通して,自分で知識を獲得したり,友達の発言から「はっ」とする瞬間があるからこそ,子どもたちは深い意味理解に到達するのではないでしょうか。その前提として,子どもたちが楽しいと思える授業を行うことが大切です。そして,いわゆる公開授業のときだけ,とっておきの授業をするのではなく,日常的に楽しい授業を積み重ねていくことが大切だと考えます。
中学校社会科の大家である安井俊夫氏は,「日常」の授業に関わり,次のように述べています。
教科書の「事実」を中心に授業を構成することが求められているとしても,それに軽重をつけ,考えさせるべきヤマ場を設定して,授業を起伏のあるものにする工夫も必要である。あるいは,「事実」を並べるにしても,ストーリー性をもたせるような順序で並べれば「知識羅列型」の授業を少しは脱却できる。
中学校社会科では,毎時間かなり大量の「事実」を扱うことを要求されます。そのため,「日常」の授業では,それらの「事実」を中心に授業を構成せざるを得ません。本書も「日常」の授業を示すものですので,この制約内にあります。私自身も,中学校社会科の授業づくりをしていく中で,どのように「事実」を扱うか悪戦苦闘しています。しかし,事実ばかりを伝えることに終始していては,楽しい授業を準備し,子どもに力をつけることはできません。安井氏が述べるように授業のヤマ場をデザインし,子どもが「えっ?!」「どうして?!」と思うような場面をつくることで,子どもたちが主体的に知識を獲得することや活用することにつながるのだと考えます。日常的にこうした授業を積み重ねていくことで,本当の意味で子どもたちが力をつけられるのではないでしょうか。
中学校地理的分野の学習では,気候帯の特徴について学ぶ単元があります。乾燥帯について学ぶ際,単に「気温が高い」「日較差がある」「オアシスがある」などの特徴を伝えただけでは,子どもは知識を獲得することはできませんし,追究する場面も生まれないので,単なる暗記を強いることになりかねません。しかし,例えば服装を切り口に考えてみてはどうでしょうか。多くの子どもたちには「砂漠=暑い」といったイメージがあるはずです。そこで,砂漠での現地の人の服装を提示します。「気付いたことはあるかな?」と問うと,子どもたちは「長袖を着ている!」「こんな服装なら暑くて大変!」「自分なら短パンTシャツになりたい!」などの反応が生まれると考えます。このような子どもの反応をもとに,「暑いはずなのに,なぜ砂漠で長袖を着るのだろう?」といった問いへつなげていきます。こうして生まれた問いは,子どもたちの追究のエネルギーにもなっていきます。資料提示や発問の仕方を工夫することにより,子どもたちの学びも大きく変わります。(図省略)
本書では,授業の導入からまとめまでの学習過程について,板書をもとにしながら紹介しています。本書の小学校シリーズの著者である朝倉一民氏も述べているように,授業について方法論的な「型」を生み出すべきではないと考えます。しかし,本書を手に取っていただいた先生方にわかりやすく,明日の実践に生きるような内容構成にしたいと考え,単元としての問題解決ではなく,一単位時間の問題解決ができるような授業も多く紹介しています。もちろん私自身も,日々試行錯誤しながら授業をしています。上手くいかなかった点,もっとこうしたらよいという点については,ぜひ工夫・改善しながら授業に臨んでいただければと思います。日常の授業の充実に向けて,授業の手引きにしていただければ,これ以上嬉しいことはありません。
/澤田 康介
-
- 明治図書
- どのページを見ても、参考になる板書だと感じました。授業展開が、見開き1ページで視覚的に分かる構成も良かったです。2025/3/1540代・小学校管理職