- はじめに
- 序章 保健体育科改訂のキーポイント
- 1 改訂の経緯
- 2 保健体育科の改訂の基本方針
- 3 改訂のポイント解説
- 1章 「第1 目標」のポイントと解説
- 1 保健体育で育みたい力
- 2 知識及び技能
- 3 思考力,判断力,表現力等
- 4 学びに向かう力,人間性等
- 2章 「第2 各学年の目標及び内容」のポイントと解説
- 〔体育分野〕
- 1 目標の考え方
- 2 内容の考え方
- 3 A 体つくり運動
- 4 B 器械運動
- 5 C 陸上競技
- 6 D 水泳
- 7 E 球技
- 8 F 武道
- 9 G ダンス
- 10 H 体育理論
- 〔保健分野〕
- 11 目標の考え方
- 12 内容の考え方
- 13 (1)健康な生活と疾病の予防
- 14 (2)心身の機能の発達と心の健康
- 15 (3)傷害の防止
- 16 (4)健康と環境
- 3章 「第3 指導計画の作成と内容の取扱い」のポイントと解説
- 1 主体的・対話的で深い学びの実現
- 2 カリキュラム・マネジメント
- 3 障害のある生徒への配慮
- 4 特別の教科 道徳との関連
- 5 共生教育
- 6 思考力,判断力,表現力等の育成
- 7 ICTの活用
- 8 具体的な体験を伴う学習
- 9 個に応じた指導の充実
- 10 特別活動,運動部の活動などとの関連
- 11 体育分野と保健分野の関連
- 4章 保健体育科の新授業プラン
- 〔体育分野〕
- 1 A 体つくり運動「バランスのよい運動の組合せに挑戦しよう!」
- 2 B 器械運動マット運動「学び合うマット運動の授業」
- 3 C 陸上運動ハードル走「ICTを活用し動きを捉え,動きの改善を目指すハードル走の授業」
- 4 D 水泳「ICTを活用して学び合う水泳の授業」
- 5 E 球技ゴール型「一人一人の違いを認め合うサッカーの授業」
- 6 E 球技ネット型「『生涯スポーツの設計に関する思考・判断・表現』の授業実践例」
- 7 E 球技ベースボール型「ソフトボールの楽しさを仲間とともに感じ取る授業」
- 8 F 武道剣道「三つの資質・能力をバランスよく育む剣道の授業『剣道の魅力に迫ろう!』」
- 9 G ダンス「ICTを活用して仲間と学び合う現代的なリズムのダンス」
- 10 H 体育理論「文化としてのスポーツの意義」
- 〔保健分野〕
- 11 (1)健康な生活と疾病の予防「感染症の予防」
- 12 (2)心身の機能の発達と心の健康「心と身体の機能を理解してストレスに対処しよう」
- 13 (3)傷害の防止 「自然災害による傷害の防止」
- 14 (4)健康と環境「私たちを取り巻く環境と健康の関係を知ろう」
- 付録 中学校学習指導要領 第2章 保健体育
- 執筆者紹介
はじめに
中学校保健体育科の改訂が行われました。本改訂では,「カリキュラム・マネジメント」や「アクティブ・ラーニング」等の新たなキーワードに着目しがちですが,体育科・保健体育科では,現行の改訂から「何を身に付けるのか」をテーマとした指導内容の体系化や明確化について検討されてきました。また,資質・能力の三本柱については,名称等に変更があるものの,これまでの体育分野において示された技能,態度,知識・思考・判断という資質・能力ベースに着目した指導内容について,一貫して検討されてきており,知識と技能のみではない体育指導のさらなる発展・充実に向けたものと考えています。
学校教育の目標である「社会を生きる資質・能力の育成」をテーマとして教育課程が編成されることは,我が国の学校教育を考える上で極めて有意義な改善であると考えます。一方で,教科学習,教科外学習,教育活動全体及び家庭教育・地域教育などの広がりと保健体育の指導内容との関係,小中高の系統性からみた学習課題の特定など,学習指導要領の理解がこれまで以上に授業者に求められるものと考えます。すなわち,カリキュラム・マネジメントはひとつ理解を間違えると,教科の内容が曖昧となり,保健体育で育てるべき知識や技能が不明確になることや,課題解決的な手法に過度に着目することで,「活動あって学びなし」という事態に陥ること,ひいては教科としての保健体育不要論の議論に向かうリスクがあると考えています。
これまでの現行学習指導要領における理解に基づく先生方の実践をベースとして保健体育科の教科として示されている知識と技能の関係性や学びに向かう力,人間性等で示されている指導事項を捉えた上で,思考力,判断力,表現力等の育成をどのように図るのかといった深い学びの実現に向けて指導することが最も大切なことではないでしょうか。
そのためには,単元計画を見通して,指導する機会,育てる機会,評価する機会などの単元計画の検討,1年間のカリキュラムの配列や指導内容の重点化,3年間の育成したいねらいに基づく領域の取り上げ方や時間配当の計画などを俯瞰して教育課程を見直し,指導内容の確実な定着を図ることこそが,全教科の目指す資質・能力の育成に役立つと考えます。そのため本書では,単元構造図に基づく実践事例を取り上げています。
また,保健体育科への意義や価値の問い,すなわちスポーツへの多様な関わり方に向けた「教科の見方・考え方」の視点から,生涯にわたる豊かなスポーツライフの実現,健康の保持増進のための実践力の実現に向けた保健体育で取り上げる内容の魅力や特性を意識した展開事例の作成を試みています。
体育分野でいえば,体を動かすことや運動種目の文化の有する楽しさを大切にした指導によって,運動やスポーツが内在的に有する価値や意義を生徒自身に感じてもらうことであり,そのことを原点として技能を獲得すること,仲間と関わること,改善に向けて思考・判断し仲間に伝えることなどが誘発される授業の実現を願っています。
保健分野であれば,「なるほど,そっかあ,もっと調べてみたい」などの科学的な理解を追究することが楽しいと感じてもらうことであり,保健ならではの個人の違いを受け入れた多様な価値観や自己実現の在り方などにつながる授業の実現を願っています。
本書では,体育科・保健体育科の改訂のポイントや実践事例を通して,新たな改定の趣旨に基づいたよりよい授業実践に向けてご活用頂けるよう,保健体育科教育をリードされている27名の先生方にご協力を頂き編集をいたしました。公開された解説の情報をもとに,解説を分かり易く伝えられるよう心掛けていますが,今後中央教育審議会等を通して明らかとなる情報については,変更の可能性があることをご理解いただければ幸いです。
保健体育の充実に向けて,本書が活用して頂けることに感謝いたします。
平成29年10月 /佐藤 豊
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- 明治図書
- 佐藤豊先生が書いたということだったので手に取った。わかりやすい内容で良かった。2019/7/1020代・学生