目次
- はじめに
- 第一章 これからの古典教育
- 第一節 古典教育再生の方途
- 第二節 古典指導の課題
- 第三節 古典指導の方向
- 第二章 教材論・指導論
- 第一節 古典に親しむ
- 第二節 教材再考
- 第三節 古典を楽しむ 『伊勢物語』と物語創作
- 第四節 比較による古典学習 一 『枕草子』と『徒然草』
- 第五節 比較による古典学習 二 『枕草子』と『古今和歌集』
- 第六節 比較による古典学習 三 『伊勢物語』『枕草子』『徒然草』
- 第七節 『平家物語』「祇王」教材化の一試案
- 第三章 戦後古典教育小景
- 第一節 新制中学校発足期の古典教育
- 第二節 中等古典教育の史的展開
- 初出一覧
- おわりに
はじめに
授業をするということは、どの教科に限らず難しいものである。教科の特性によって事情は異なり、どの教科が教えやすく、どの教科が難しいとは一概には言えない。
国語科の難しさの一つは、指導者の裁量にまかされる部分が比較的大きいところに由来する。自由度の高さは経験豊かな者には心地よい。しかし、経験の少ない者には、ときとして「何をどうすればよいのかわからない」という迷いのもとともなる。
勤務校で担当した教育実習生、各種の研究会でお会いした若手の先生方、講師として出講した大学で教えた学生など、若い方々は大いに悩んでいた。まじめな方ほど悩む。それはわるいことではない。迷いも悩みもないところでは、人は成長しない。
原稿の依頼があるたびに、若い人たちを応援するつもりで文章を書いている。もとより高所に立っての物言いではない。同じ場所でともに歩む者の一人としての提案である。
折にふれて書いてきた拙稿の中から、古典教育に関するものを選び、加筆・修正してまとめて一書とした。このようにならべてみると、説明に重複のみられるところがある。しかし、どの部分からお読みいただいてもよいように、あえて削除せず、そのままにしたところもある。
本書は三つの部分から構成されている。
第一章は総論にあたる。学習指導要領がかわり、小学校から古典指導がはじまることになった。また、古典指導の位置づけもかわった。したがって、これを契機としてあらためて古典教育とは何かということについて再確認し、そのうえで、これからの古典指導のありかたについて考える必要がある。
第二章では、具体的な新教材の提案と指導法の提案とを行っている。とくに、比較という方法を取り入れることによって、「考える古典学習」の確立を目ざした。本書で提案した他にも、教材の組み合わせはまだまだ考えられる。本書をお読みくださった皆様が、それぞれの教室で新しい試みに挑戦されることを念じている。また、比較以外にも効果的な指導法はあろう。それについても今後の研究を待ちたい。
第三章では、古典教育の歴史的な背景について略述した。戦後の古典教育は、実り豊かな実践が積み重ねられた一方で、矮小化していった部分も少なくない。過去に学ぶことによって、現状の把握と改善につなげていければと思う。
このささやかな書物が、古典教育のありかたを考える一助となれば幸いである。
二〇一〇年一月 ／岩﨑 淳
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明治図書
