- はじめに
- 小学1・2年物語教材を読み解く 教材研究の目
- 小学1年 物語の教材研究&授業づくり
- くじらぐも
- 教材研究の目
- 1 物語内容
- 2 話者の省略
- 3 反復表現
- 4 空所
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 くじらぐもの音読劇をしよう
- 2 オリジナル「くじらぐも」を書こう
- おとうとねずみチロ
- 教材研究の目
- 1 表現の工夫
- 2 語りとプロット
- 3 空所
- 4 シリーズ作品
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 音読発表会をしよう
- 2 面白いと思うことを伝え合おう
- たぬきの糸車
- 教材研究の目
- 1 空所
- 2 語り
- 3 オノマトペ
- 4 場面
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 好きなところを紹介しよう
- 2 お話の世界を楽しもう
- ずうっと、ずっと、大すきだよ
- 教材研究の目
- 1 物語内容
- 2 物語の時間
- 3 強調表現
- 4 語り手になる
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 わたしの「せかいでいちばん」を語ろう
- 2 別れの物語を読み合おう
- おおきなかぶ
- 教材研究の目
- 1 ロシア民話「おおきなかぶ」の概観
- 2 繰り返しの構造
- 3 語り@
- 4 語りA
- 5 空所
- 6 挿絵
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 「おおきなかぶ」を読んで、音読劇をしよう
- 2 比べて読もう「おおきなかぶ」
- 小学2年 物語の教材研究&授業づくり
- スイミー
- 教材研究の目
- 1 人物の設定
- 2 絵から読む
- 3 物語の構造
- 4 人物の葛藤
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 レオ=レオニ作品の紹介文を書こう
- 2 レオ=レオニ作品の読み聞かせをしよう
- わにのおじいさんのたからもの
- 教材研究の目
- 1 登場人物の設定
- 2 象徴表現
- 3 語り
- 4 空所
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 おにの子へ手紙を書こう―なりきり作文―
- 2 ミニマル・ストーリーで作品紹介をしよう
- かさこじぞう
- 教材研究の目
- 1 絵本と教材文との比較
- 2 オノマトペや特徴的な表現
- 3 語り
- 4 心の豊かさを読む
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 紙芝居をつくろう
- 2 自分のお気に入りの「かさこじぞう」を紹介しよう
- きつねのおきゃくさま
- 教材研究の目
- 1 語りの特徴
- 2 誰のセリフか
- 3 アイロニーを読む
- 4 題名・揺れ動く心情を読む
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 心情メーターを使って読もう
- 2 語り手と登場人物の思いが伝わる音読劇をしよう
- お手紙
- 教材研究の目
- 1 作品の構造(挿し絵の比較で捉える)
- 2 空所@
- 3 空所A
- 4 かたつむりくんの存在
- 5 語り
- 6 シリーズで読む
- 教材研究を活かした単元計画と発問・交流プラン
- 1 登場人物になりきって音読発表会をしよう
- 2 シリーズ本の好きな場面を紹介しよう
- 参考文献
- 執筆者一覧
はじめに
文学の学習をデザインし、授業をつくっていくという営みにおいて、学習の過程を構造的に構想し、その枠組みの中で学習内容を配置するような試みが増えています。それは、ひとつには、学習の内容をいわゆるコンテンツベースからコンピテンシーベースに転換する学習観が、学習指導要領においても明確化されてきたことからきています。また、もうひとつには、その転換を受けて、評価のあり方が「何ができるようになったか」に焦点化され、評価の対象となる力を構造的に捉えたところから、学習を組み立てようとする傾向が強まったところからきています。淵源には、学習科学の進展があると思われます。
しかし、一方では、学習は教科や教材の特性と不可分なものですし、とりわけ国語科においては、いわゆる教材研究・教材化研究の重要性が長く大切にされてきました。そのことの意味はもう一度見直されなければなりません。
私たちはこれまで、いくつかの本を通して、文学教材を読むときの「問い」をめぐる読みの交流の大切さ、交流による読みの深まりを促す「問い」のあり方、有効な「問い」を創り出すことの大切さを主張し、具体的な教材に即してその「問い」の事例や交流のすがたを提示してきました。私たちの願いは、一人一人の先生方が、愉しく深い文学の読みを教室で実現するために、交流を促す「問い」づくりの力を身に付け、教師の個性と学習者の個性に合った読みの学習を実現していくというところにありました。
この本は、一人一人の先生方に、学習をデザインし、授業をつくっていくうえで、「問い」づくりの基盤にあるべきたしかな「教材分析」「教材研究」の目を身に付けていくための教材研究の観点を提示し、そこからの学習デザインの事例を示すようなものでありたいと構想されました。
学会レベルでも、教材研究をめぐる状況は一種の危機にあります。学習のデザインや学習過程研究を欠いた教材論は意味がないという認識が進んできたことはある意味当然ですが、行き過ぎると「教材論の不在」という状況を生み出しかねません。文学の教材研究は、その危機の中にあります。ここでは、もう一度、文学の教材論、教材研究の再構築を目指したいと思います。
その際に注意しておきたいことがあります。文学や周辺の研究領域、優れた実践研究の蓄積を踏まえて、先行研究の渉猟と読みにかかわる可能性のある細部の精細な読みという手続きは踏まなければなりません。その一方、子どもの素朴な読みの営みの中にも教材研究のための大きなヒントがあることを大切にしたいのです。研究の枠組みよって読みを制御するのではなく、自由な読みの中から新たな教材研究(論)が生まれてくることに賭けたいのです。
「教材研究の目」を一覧にするような試みは多くなされてきました。ただ、私たちはそうしたリスト化よりも、一つ一つの教材に即した、具体的な検討を大事にしました。教材研究の目として、語り・空所・象徴・人物像・プロットなどが採りあげられていますが、そうした「目」が概念として先行してしまわないように留意したつもりです。読者のみなさんもそのことに意を留めながら、自分ならこの「目」を大事にしたい、この「目」ならこういう教材分析ができるのではないか、という新たな可能性に向かっていただきたいと願っています。愉しい、充実した文学の学習の実現に、ともに向かっていきたいと思っています。
2023年7月 /松本 修
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- 明治図書