- はじめに
- 第1章 単元を貫く「学習評価」のポイント
- 1 テストの特徴と課題
- 2 「見方・考え方」が働くテストの問いづくり
- (1)授業づくりから考えるテストづくり
- (2)テスト問題とその解法から考える授業改善
- (3)単元を貫く「発問」による授業構成から考えるテストづくり
- 3 テストの失敗例から考える防止策
- 4 テストづくりの鉄則と配慮
- 5 本書の読み方
- 第2章 単元を貫く「学習評価」とテストづくりアイデア
- 地理的分野
- A 世界と日本の地域構成(1)地域構成 世界や日本はどのように構成されているのだろうか?
- B 世界の様々な地域(1)世界各地の人々の生活と環境 なぜ世界各地では人々の生活に多様な特色が見られるのだろうか?
- B 世界の様々な地域(2)世界の諸地域 世界の諸地域で生じている課題について追究しよう
- C 日本の様々な地域(2)日本の地域的特色と地域区分 日本の地域的特色に基づいて,日本の地域区分を考えよう
- C 日本の様々な地域(3)日本の諸地域 日本の諸地域の特色を追究しよう
- C 日本の様々な地域(4)地域の在り方 ※(1)地域調査の手法 私たちの学校周辺の課題はどのように解決していけばよいのだろうか?
- 歴史的分野
- A 歴史との対話(1) 私たちと歴史 なぜわが国では様々な時代の表し方をするのだろうか?
- A 歴史との対話(2)身近な地域の歴史 学校周辺の地域には,どのような歴史的な特徴があるのだろうか?
- B 近世までの日本とアジア(1)古代までの日本 ア (イ)日本列島における国家形成 日本では,どのようにして国家が形成されていったのだろうか?
- B 近世までの日本とアジア(2)中世の日本 ア (ア)武家政治の成立とユーラシアの交流 なぜ武士が政権を立て,影響力を及ぼすようになったのだろうか?
- ア (ウ)民衆の成長と新たな文化の形成 民衆の成長を背景にどのように社会や文化は変化したのだろうか?
- B 近世までの日本とアジア(3)近世の日本 ア (ア)世界の動きと統一事業 安土桃山時代は,どのような特色があるのだろうか?
- B 近世までの日本とアジア(3)近世の日本 ア (エ)幕府の政治の展開 なぜ幕府の政治は行き詰まりを見せたのだろうか?
- C 近現代の日本と世界(1)近代の日本と世界(前半) ア (イ)明治維新と近代国家の形成 明治維新によってどのように近代国家の基礎が整えられたのだろうか?
- C 近現代の日本と世界(1)近代の日本と世界(後半) ア (オ)第一次世界大戦前後の国際情勢と大衆の出現 第一次世界大戦はどのように起こり,どのような影響を与えたのだろうか?
- C 近現代の日本と世界(2)現代の日本と世界 ア (ア)日本の民主化と冷戦下の国際社会 敗戦後の諸改革により,日本の社会はどのように変化したのだろうか?
- ア (イ)日本の経済の発展とグローバル化する世界 なぜ冷戦において日本は経済成長をすることができたのだろうか?
- 公民的分野
- B 私たちと経済(1)市場の働きと経済 私たちはどのように市場経済に関わればよいのだろうか?
- B 私たちと経済(2)国民の生活と政府の役割 国や地方公共団体が果たす役割について考えよう
- C 私たちと政治(1)人間の尊重と日本国憲法の基本的原則 私たちはどのように社会に関わるのがよいのだろうか?
- C 私たちと政治(2)民主政治と政治参加 私たちはどのように政治に関わるのがよいのだろうか?
- 第3章 学びの履歴を可視化するデジタルポートフォリオの可能性
- 1 未来の学校に必要な新しい評価方法とは
- 2 新学習指導要領が求める資質・能力をどう育てるのか
- 3 「問い」を軸にした社会科の授業づくりのポイント
- 4 社会的な見方・考え方を働かせる授業づくりの手立て
- 5 振り返りのワークシートを使った学習評価の取組
- 6 デジタルポートフォリオによる学習評価の取組
- 7 データサイエンスによるデジタルポートフォリオの分析
- 8 データサイエンスによる学習評価の分析
- 9 「個別最適な学び」の保障
はじめに
「社会科のできる生徒とは?」と問われて,「暗記力のある生徒」と答える教師はいないでしょう。しかし,生徒や保護者にそのように思わせていないでしょうか。この要因は,知識に比重を置いたテストにあると考えます。日本の学校教育において,授業公開をして協議をする研究会は数多く存在しますが,テスト問題を公開して協議をする場はほとんどありません。公開授業後の協議会で,今日の授業をどのように評価するか,特にテスト問題をどのようなものにするか,ということが話題になっても,実際にあらかじめ用意されたテストを提示したり,後日実施したテストを公開したりする教師は多くはありません。様々な評価方法がある中でも,特にテスト問題を対象にして解答の背景にある授業を検討するというアプローチを用いた研究や書籍は,社会科においてはほとんどなかったと言ってもよいでしょう。
そこで,本書は単元を貫く「学習評価」と題し,特にペーパーテスト,定期考査としてのテストについて,次の3点を意識して執筆しました。
@ テストづくりにおいて,資質・能力が身に付いた状態であると判断できる「指導と評価の一体化」した問題をつくるための方法を提示する。
A 生徒の解答の背景にある授業の在り方,授業改善の視点を示す。
B テストでは見取ることになじまない資質・能力について,その評価方法や判断の基準を,具体的な授業実践に基づいて提示する。
優れたテストとは,正解できたことによって資質・能力が身に付いていると判断できるもの,誤答分析からつまずきの原因を明らかにし,授業改善に生かせるもの,そして,生徒に学習改善の視点を示せるものと考えます。筆者は日頃,定期考査の作問,学力調査・試験問題の点検など多くのいわゆる「テスト」を目にする機会がありますが,授業もテストもよい資料と問い方が不可欠であることに気付かされます。優れたテストを見ると,自分の担当生徒に,この問題が正解できるだけの資質・能力が身に付くような授業展開をしていただろうかと振り返る機会にもなります。そのため本書は,テスト問題から考える授業改善の視点についても触れていきます。
一方,定期考査を廃止した学校が増えています。理由の一つに,「思考・判断・表現」はテストでは見取りにくいという考えがあります。このような学校では,単元テストやレポートを中心とした学習評価が行われています。本書はこうした教育事情も踏まえ,定期考査に限らず単元テストなどでも活用できる,思考力を見取るテストづくりの理論と具体例を提案しています。
本書の最大の特色は,テストの問題例を先に示し,出題意図,背景となる授業実践を,社会科三分野を通して提示する点にあると考えます。その際,出題者のねらいどおりに生徒が解答できない,様々な方向に解答が広がって採点ができないといった問題や,いわゆる出題ミスを避けるための資料提示,問い方の工夫,授業改善などの具体的な手立てについても触れています。本書は,いわゆる難問を紹介するものではありません。確かに,入試問題の中には,知識量が求められる問題,情報量の多い難解な資料を読み取る力が必要な問題もあります。しかし,合格者を選抜する入試と学校におけるテストは目的が異なります。テストは,学校の授業を通して育成した資質・能力が,身に付いたかどうかを判断するための評価方法の一つだと考えます。さらに本書は,テストだけでは見取ることができない「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の評価方法についても,レポート,ポートフォリオを用いた個別最適な学びの実践例とともに紹介します。
本書が,多くの先生方の学習評価,授業改善の一助になることを期待しております。そして,単元を貫く「学習評価」を通して,生徒や保護者の方々に対して,社会科で身に付ける資質・能力や授業・家庭学習の取り組み方を示すことができるような一冊となることも,心から願っております。
2022年10月 /上園 悦史・内藤 圭太
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- 明治図書
- 序章だけでも大変参考になりました2024/7/2320代・中学校教員
- テストづくりの考え方や問題例が豊富に紹介されていて参考になった。2023/3/3130代・中学校教員
- はじめとおわりにだけでも読む価値が充分あった。とてもよかった。2023/2/2720代・中学校教員