- 監修のことば 「鍛える国語教室」研究会主宰 /野口 芳宏
- 編集趣旨 「鍛える国語教室」研究会空知ゼミ代表 /柳谷 直明
- 作文力マスターカードを使った授業モデル
- T 文学的文章の系統6教材
- ――主に国語科で扱う文種の作文教材――
- No.1 表記マスターカード
- No.2 紹介作文マスターカード
- No.3 思い出作文マスターカード
- No.4 詩歌作文マスターカード
- No.5 物語作文マスターカード
- No.6 読者感想文マスターカード
- U 論理的文章1の系統7教材
- ――主に学校生活全体で扱う文種の作文教材――
- No.7 計画メモ・マスターカード
- No.8 手紙(礼状,招待状)マスターカード
- No.9 観察作文マスターカード
- No.10 問い作文マスターカード
- No.11 レポート・マスターカード
- No.12 課題解決作文マスターカード
- No.13 新聞記事マスターカード
- V 論理的文章2の系統6教材
- ――主に作文技術を鍛える作文教材――
- No.14 引用作文マスターカード
- No.15 なりきり作文マスターカード
- No.16 たいなあ作文マスターカード
- No.17 論破作文マスターカード
- No.18 評価作文マスターカード
- No.19 読書日記マスターカード
- 授業実践例――『表記マスターカード』―― /齋藤 浩子
- 資料『プランくん』
- あとがき(小学1〜2年生) 「鍛える国語教室」研究会空知ゼミ代表 /柳谷 直明
監修のことば
日本教育技術学会名誉会長
「鍛える国語教室」研究会主宰 /野口 芳宏
文章を綴る力,つまり「作文力」は,国語学力の頂点に立つものだ。私は長くこの事実を「国語学力の総決算」という言い方で表現して今日に至っている。達者に喋れる人,あるいは普通に話せて伝達行動に支障をきたさない人はいくらでもいるのだが,さて,その人達がみんな達意の文章が書けたり,支障なく文章が書けたりするかということになると,全くそうはならない。だから,「話すように書けばいいんだよ」というのは,ほとんど意味をなさない言葉である。残念ながらこのレベルの言葉で指導したつもりになっている例が多い。
では,作文力を高めるにはどうすればよいのだろうか。このことについて,私は3つの原理・原則を提言してきた。
第1が「多作」,第2が「楽作」,第3が「基礎・基本」である。「多作,楽作,基礎・基本」と私は言ってきた。
「多作」は,要するにたくさん書く,いつでも書く,やたらに書きまくる,ということである。マラソンでも水泳でもたくさん走りこみ,泳ぎこんだ者がそれぞれの力をつける。作文もまた例外ではない。書きこみ,書きなれることが第1の要件である。だから,作文をたくさん書かせている,というだけで,その教師はすぐれていると言ってよいだろう。
「楽作」は,私の造語で「楽しんで書く」という意味である。辞書を引いてもこの言葉はない。多作をするには,そのことが苦行であっては成り立たない。楽しいから繰り返せるのである。楽しくもない作文の題材を与えられたのでは書く気も失せる。「楽作」の実現には,子どもの潜在的関心を探り,それに適う教材開発をする教師の技量が欠かせない。
子どもは,もともと「表現好き」である。「じっとしていない」「いつでも喋っている」「落ち着きがない」などと言って,よく子どもを責めるが,つまりはそれほどに子どもはいつでも,どこでも「表現したがっている」ということなのである。この本能的ともいえる欲求に応えるのが「楽作」であり「多作」なのである。
ところで,では本当に,好きなことをただやみくもにいっぱい書かせてさえいれば作文力が形成され,高まるか,と言えばそうではない。マラソンも,水泳も,原理・原則に合った合理的で効率的な練習をしなければ,数だけこなし,量だけ増やしてもその力はつかない。つまり,常に「基礎・基本」に支えられた積み重ねが必要だ,ということなのだ。作文とてその例外ではない。
「基礎・基本」というのは,文章を書き表し,綴っていく場合の原理・原則,きまり,約束,技術,方法の意味である。何をどのように教えれば作文の「基礎・基本」が身につくのか,という問題に答える新構想になる教材が,本書『作文力マスターカード』である。
作文力とは,文章を綴る技術を習得しているということである。文章を綴る行動は一つの技術である。その技術が高ければ良い文章が書けるし,低ければ良い文章は書けない。作文力を高めるには作文の技術を高めればよいことになる。
ところで,改めて「技術」とは何であろうか。私は,これを次のように定義している。
「技術」とは,「知識」を安定的に行為化することである。
技術を高めるためには,そのもとになる「知識」をまず学び,その知識に基づいて文章を書くという行為を系統的,発展的に繰り返していけばよいのである。だが,わが国の作文指導の歴史を見ると,「文章を書くのに必要な知識」を,段階的,系統的に明らかにするという作業が実はほとんどなされていないのだ。作文力を高める必要がいくら叫ばれても,結果的にそれが叶えられずに現在に至っている大きな要因の一つは,作文力を高めるために必要な「知識」が不確かであったから,という点にある。
この度,柳谷直明氏を中心に,その「知識」を「学習用語」として解明し,発達段階に合わせて系統的に配列するという画期的な仕事がまとまった。さらに,その学習用語をもとにして作文力を確かに形成するマスターカードの開発,公刊が叶ったということは,わが国作文教育史上の快挙と言っても決して過言ではあるまい。
本書が広く活用され,多くの子ども達の作文力の形成に役立ってくれることを私は心から期待している。また,本教材のさらなる進展,充実のために,活用後のご批判などを戴ければ幸いである。
平成18年5月1日
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- 明治図書